演劇、古着の街として知られる下北沢。感性豊かな人が集う個性的なこの街は、飲食激戦エリアでもある。小田急線の連続立体交差事業がひと段落する来春以降は、さらなる活気に包まれることが予想される。そんな下北沢の地にニューコンセプトのフレンチビストロが4月6日にオープンした。「胃袋にズキュン」というインパクト抜群の店名の通り、食通のハートをズキュンと射抜いている。
同店は、下北沢の地で10年に渡り愛される熟成料理と自然派ワインの「下北沢熟成室」、カレーの店「カレーの惑星」の姉妹店となる3店舗目。運営は、ヒネル(東京都世田谷区、代表取締役:福家征起[ふけ・まさき]氏)。福家氏は大阪の出身で、幼少期より飲食に興味を抱き、調理師専門学校で和洋中の基礎を総合的に学びながらフレンチと和食の店で修業。のちに上京しレストランなどで腕を磨きながら、さらに「食を幅広く追及していきたい」とフードコーディネーターの専門学校へも通った。下北沢を独立の地に選んだのは縁があったわけではなく、「土地勘もなく、23区内で広く物件を探している中でたまたま出てきたもの」という。10年前の「下北沢熟成室」のオープンを思い返すと、「自然派ワインも認知されていなかったころで、自分の信念としてナチュラル志向のものや大切に育てられた素材やを使いたい」という思いはずっと変わらない。
同店の料理は、「ゴテゴテしたソースなどを排除したフレンチ」、「シンプルに素材の味が胃袋にグッとくる感じ」がコンセプト。「例えば野菜なら、塩につけて食べるぐらいのシンプルさ。手を抜いているんじゃないの? と思われるぐらいがちょうどいい」と言うからおもしろい。無添加であることはかねてより一貫しており、食材ごとに最適な塩分濃度を見極め厳密に計量して使うなど、ロジカルな調理でおいしさを追求する。
メニューは日替わりとしている。ある日の例として、「桃とサワークリームの冷製スープ アンチョビのせ」、「フルーツトマト パクチーと青唐辛子のマリネ」、神楽坂「アルパージュ」から取り寄せたチーズなど。肉前菜は「豚肩ロースのボイルハム」、「豚肉とレバーの濃厚パテ」など。ここまですべての価格は各500円とリーズナブルな価格設定。また、「ズキュンな3種盛り」(1480円)は好みの3種を選べる。メインは2種で、「豚すね肉のブイヨン煮込み 塊ロースト マスタード添え・めっちゃ柔らかく煮込んだ塩漬け豚タン 1本丸ごと香草パン粉焼き」(1500円)、「米沢市国産黒毛和牛 ハラミ肉のステーキ・1ヶ月吊るし熟成の短角牛の煮込み クスクス添え・1カ月熟成バントレッシュのオーブン焼き ピペラード添え」(2000円)。ランチはワンプレートディッシュにスープがついて5~6種、900円~1800円。休日はランチの方が盛況だ。
ドリンクは「下北沢熟成室」と同様に、自然派ワインがメイン。各国の銘柄を常時50種ほど用意し月ごとにチェンジしていく。ボトルの価格は明快に3500円、4500円、5500円と3段階に設定した。グラスワインは650円~800円で、赤・白・泡を常時10種。スパイスや野菜など、珍しい素材を用いた「自家製プレミアムサワー」もあり、6種各550円。
偶然が重なった結果とはいえ、3号店となる今回の出店は1号店「下北沢熟成室」の建物の真裏。それも、下北沢一番街というほのぼのとした商店街沿いのスタイリッシュな新築ビル1階という好立地である。ちなみに、商店街を数分歩いたところに2号店の「カレーの惑星」がある。このほどよい距離感のため、3店の間で食材のやり取りやスタッフの行き来、ノウハウ共有を行いやすい。この大きなメリットを得て、「しばらくはコスパを上げることに注力しつつ、食材の仕入れや仕込みの合理化によって少ない人数で量と質を保つことが目下の課題ですと語る福家氏。毎週金曜日には3店のスタッフが集まり、まかないを一緒に食べながら情報の共有や意見の交換を行うなど、風通しのいい組織づくりも意識している。ちなみに、福家氏自らが唐揚げやハンバーグなどを振る舞うこともあるとか。気取らないのに食への熱い思いが止まらない。
店舗データ
店名 | 胃袋にズキュン |
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住所 | 東京都世田谷区北沢2-33-11 SY-I 1階 |
アクセス | 小田急線・京王線下北沢駅北口から徒歩5分 |
電話 | 03-6804-9885 |
営業時間 | 【月~金】12:00~15:00、18:00~24:30(L.O.24:00) |
定休日 | 火曜 |
坪数客数 | 12坪 15席 |
客単価 | 4500円 |
運営会社 | 株式会社ヒネル |
オープン日 | 2018年4月6日 |