「僕、繁華街よりも路地裏の雰囲気の方が好きなんです」。7月7日、日本酒と浜焼き料理の店「uraonsakaba(ウラオンサカバ)」が東京有数のビジネス街・西新橋の裏通りにオープンした。運営は、大阪で炉端焼き「urarobata」やスペイン料理「uralobby」など5店舗を展開するuralogicproject(大阪府大阪市、代表取締役 杉村裕紀氏)。設立から5年目の夏、同社にとって大きな局面となる東京進出を果たした。
全店に「ura」を冠する理由について同社代表・杉村氏はこう話す。「僕らの理想は『全店個人店』という形。会社としては各店主の個性を大切に、彼らの挑戦をサポートする程度です。だから『ura』には、僕が好きな〈路地裏〉と『今は裏からのスタート。いずれは表に』というメッセージも込めています」。
さらに今回の「uraonsakaba」という店名の由来も興味深い。氏によると、大阪には古くから「温酒場(おんさかば)」と呼ばれる大衆酒場があったそうだ。現在営業しているのは数軒程度と希少だが、これを冠するあたり、故郷の大衆文化への並々ならぬ思いや気概がうかがえる。
浜焼きを主役とする同店では、築地市場や足立市場から仕入れる魚介類や「のどぐろのみりん干し」(3尾580円)「フグ一夜干し」(1尾580円)などの干物類、さらに380円~とリーズナブルかつ工夫を凝らした酒肴や料理50種類以上が品書きに並ぶ。これらを「千代むすび 特別純米 なかどり」(580円)や「刈穂 山廃純米 火入原酒 番外品」(680円)など、およそ20銘柄の日本酒が盛り立てる。
杉村氏が飲食業界に足を踏み入れたのは20歳のとき、友人の紹介でジャズバーに飛び込んだことがきっかけだ。酒の名前も道具の使い方も分からないままカクテル本と格闘する日々が続いたが、このときすでに20代半ばでの独立を目指していたという。その後、大阪・北新地でソムリエとして腕を磨きつつ、仕入れや経営を学び、完全自己資金での独立を目指して不動産営業を3年ほど経験。2011年、31歳でわずか7坪と小体ながら現在も人気の1号店を開店させる。
それから5年、路地裏への出店を続ける同社にはどんな勝ちのセオリーがあるのか。「作り込みすぎないこと、ですかね」と氏が振り返る。「昔からそこにあったような店にしたいんです。こういう10数坪の小さくて懐かしい感じの店が好きな方って必ずいますから。もうひとつ、大手に勝てるとしたらスタッフの個性。人や店に惚れ込んでくださるお客さまが多くて、そういう方がご友人を連れてきてくださる。この繰り返しです」
現在、社員数15名。いずれもアルバイトからの登用やもともと店の常連だった者ばかりだ。「飲食業界は人がいないと言われますけど、うちの場合、ありがたいことに向こうから来てくれることが多い」。杉村氏含め30~37歳と若い力に溢れる一方で、次のような課題も感じているという。「会社としてそろそろ次の世代を築いていかないと。僕自身そうでしたが、30歳手前くらいが一番腕試しをしてみたくなる時期でエネルギーもある。そういう人材を育てていきたいです」
お客は店やスタッフに惚れ、スタッフは代表に惚れる――組織としてこの上なく健全な成長を続ける同社。では、そのトップが惚れるものとは。展望含め今後について尋ねると「僕はお酒からスタートしたので、原点に戻ってシンプルなバーもやってみたいですし、中華料理なんかも気になるところ。当面は物件や人との出合いで業態を変えながらuraシリーズを展開していくつもりです。将来的には店舗収益だけでなく物販や不動産などライフスタイルの分野も攻めてみたい」と返ってきた。終始屈託のない笑顔で語る氏だが、そのuraに穏やかな野心と5年目の自信を垣間見た。
店舗データ
店名 | uraonsakaba(ウラオンサカバ) |
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住所 | 東京都港区西新橋2-6-1 第2菊家ビル2F |
アクセス | 地下鉄 内幸町駅出口より徒歩3分 |
電話 | 03-6883-8768 |
営業時間 | ランチ 月〜金11:30〜14:00 ディナー 月〜土 17:00~23:00(L.Oフード22:00/ドリンク22:30) |
定休日 | 日祝 |
坪数客数 | 11坪・20席 |
客単価 | 3500円 |
運営会社 | 株式会社uralogicproject |
関連リンク | uraonsakaba(FB) |
関連リンク | uralogicproject(HP) |