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鹿児島直送の鮮魚居酒屋「朝とった魚 薩摩 じんべえ」
究極の産直業態を目指す

「生で食べられるアスパラ」など、食材の特徴や生産者のストーリーを伝えるパネルが随所に見られる
女性が心地よく楽しめるよう配慮された店内。白木の柔らかく明るい内装に、ステンレスを貼ったテーブルがオシャレな印象を与えている
鹿児島の近海で朝穫れた魚を、その日のうちに刺身に。“首折れ鯖”をはじめとした新鮮な鹿児島地場の魚を食べられるのが、最大の魅力だ
「東洋美人」で知られる澄川酒造場に、特注した同店オリジナルの純米吟醸酒「福冨」。裕人礫翔氏による金箔のラベルは、ひとつひとつ違った表情を見せる
魚人島 じんべえ 取締役 福冨哲也氏

(取材=望月 みかこ)


8月1日、恵比寿駅西口から徒歩3分ほどの飲食ビルの4階に、究極の産直鮮魚居酒屋を目指す「朝とった魚 薩摩 じんべえ」がオープンした。鹿児島で鮮魚居酒屋を2店舗展開する魚人島じんべえ(鹿児島県鹿児島市、取締役 福冨哲也氏)の東京1号店だ。鹿児島で朝のうちに穫れた魚を、市場でせり落とした30分後には飛行機にのせて店に届ける。県外市場にはなかなか出回ることのない“首折れ鯖”や“タカエビ”をはじめとした鹿児島ならではの鮮魚を提供する。魚に限らず、米、野菜、卵、お酒にいたるまですべて生産者から直接仕入れる。「食材のストーリーを語れるものだけを提供したい」と、取締役の福冨哲也氏の“産直”にかける想いは並々ならぬものだ。

福冨氏が、飲食の世界に足を踏み入れたのは15歳の時だった。「哲也の料理はおいしい」と母からの唯一の褒め言葉がきっかけだった。地元鹿児島の寿司屋で厳しい下積みを経験。2年経った頃、あまりの過酷さに思わず逃げ出した。違う仕事に就いたものの“飲食”がどうしても頭を離れなかったという。店を成功させて、母の喜ぶ顔が見たかった。必ず独立すると覚悟を決めて、再び飲食の道を歩み始めた。地元の大手飲食企業で5年間、和食、居酒屋、中華と料理人として腕を磨いた。その後、「日本一のサービスを学びたい」と鹿児島のカシータ姉妹店に転職し、7年間店長を務める。東京で先輩の店の立ち上げを手伝うなど、大都会東京でも飲食を学び、飲食店の経営やサービスのエッセンスをどんどん吸収していった。「そろそろ鹿児島に帰って自分の店を出そう」。独立を心に誓った22歳から10年が経っていた。帰郷して1号店「魚人島 じんべえ」を市内に出店。鹿児島のマーケットで10年以上生き残ることができる店とは、と考えに考えたそうだ。「もともと魚が好きで、釣りが好き。要は海が大好きだったんです。それと当時、おいしくて鮮度抜群のいい魚を、3000円台で食べられる大衆的な居酒屋がなかった。だから、地場の魚をメインにした“鮮魚居酒屋”という業態に決めました」と独立の経緯を話してくれた。地元の人は、彼の起業を歓迎した。瞬く間に繁盛店になり、2年目には同業態で2号店をオープンさせた。

「朝とった魚 薩摩 じんべえ」の料理はもちろん“鮮魚”がメインだ。鹿児島近海で朝穫れた魚を、仲卸歴35年以上の目利きである田中水産の田中積氏が、せり落とす。すぐに飛行機に積み込み、東京・恵比寿へ。17時のオープンに間に合うように店に届く。抜群の鮮度も同店の強力なウリだが、旬を大切にした調理方法もメニューにしっかりいきている。切り方や厚さ、刺身なのか焼なのか、その魚を最もおいしく食べられるように、毎日料理長が頭をひねる。鮮魚の中でも「都内ではうちだけ」と、彼が胸を張るのが“首折れ鯖”だ。鹿児島の近海で水揚げされた一本釣りのゴマ鯖のことで、釣ってすぐに鯖の首を折って血抜きをするため、鮮度が保たれ味を落ちないのだ。そんな“首折れ鯖”や“タカエビ”など鹿児島の鮮魚が詰まった「刺身5点盛(海)」(2人前 2000円)や、「屋久島産飛魚でふわふわ揚げたて薩摩揚げ」(780円)、「炙られるしめ鯖」(850円)など、多彩なメニューはすべて日替わりだ。野菜も“朝とった野菜”にこだわる。「米は小北農場の“伊佐黄金米”で、トマトやピーマンなどの野菜はゆたか農園から。この塩は“笠沙の塩”といって鹿児島の加世田の松山さんが窯で炊いて手作りしていて……」と、こと食材に話が及ぶと止まらなくなる。それほど生産者と会い、食をともにし、心を通わせているのだろう。

合わせる酒は、日本酒をメインに据える。扱う銘柄は7つの蔵に絞り、それぞれの季節ものを魚と合わせて提案する。高木酒造の「十四代」(90cc 1500円)以外は、すべて均一価格、グラス提供。60cc 480円、90cc 680円、150cc 980円だ。山口の澄川酒造場に特注した同店オリジナルの純米吟醸酒「福冨」は、自身の名を冠した自慢の逸品だ。世界的な金箔アーティスト・裕人礫翔(ひろとらくしょう)氏がラベルデザインを手がけた。「唯一無二で日本一の居酒屋にしたい」という同氏の強い想いが伝わってくる。

「20代後半から30代後半までの、食に関心の高い女性がターゲット」という同店。白木のカウンターや、ステンレスを貼ったテーブル、少し低めの椅子など、全体的に明るく柔らかみのある空間に仕上げられている。世界で活躍するクリエイターの集団waza japanがデザインを担当した。カウンター、テーブル、個室と分けられており、幅広い利用シーンに対応する。

「将来的にはレストラン事業もやりたいですね。いずれにしても“じんべえ”ブランドで店舗展開を考えています。肉でも野菜でもレストランでも、業態が違っても生産者と食材ありきという軸は変わりません」。彼の熱くまっすぐな想いが、生産者と飲食店の関係を少しずつ変えていくことに期待したい。

店舗データ

店名 朝とった魚 薩摩 じんべえ
住所 東京都渋谷区恵比寿西1-9-7 グランベル恵比寿西 4F

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アクセス 恵比寿駅から徒歩3分
電話 03-6886-3340
営業時間 17:00~23:30
定休日 不定休
坪数客数 25坪・40席
客単価 5000円
運営会社 魚人島じんべえ
関連リンク 朝とった魚 薩摩 じんべえ(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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