渋谷駅周辺で大規模な再開発が進んでいる。再開発は駅周辺の4つの街区で行われ、2020年までには複数棟の新たな高層ビルも完成予定。渋谷のイメージを一新させるインパクトを持っているため、人の流れも大きく変わるだろうと言われている。こうした変化を控える渋谷に、6月6日オープンしたのが「鉄板餃子酒場 大虎」だ。宮益坂を上って徒歩1分の場所にある。同店を運営するのは、おおきに(東京都渋谷区、代表取締役 久保聡氏)で、同店が2店舗目の展開となる。
代表の久保氏は、ブランドの誕生の経緯について「当店は元々、牛タンをメインにした鉄板焼き屋でした」と言うと、次のように話してくれた。「多くのファンに恵まれて、売上も好調でしたが、業態自体に限界も感じていました。例えば、顧客満足度を上げるために、牛タンの品質を上げて国産の牛だけを使用すると、展開するお店のスタイルに限りが出てきます。また、牛の値段の高騰など、店舗側でコントロールが難しい事象も、いつ起きるかは予測できません。そこで、こうした問題をクリアできる新たな業態の構想を練ねることにしました」。もともと久保氏自身が大好物だったこともあり、餃子という業態には目を付けていた。マーケットにも、本格的な餃子を味わいながら、ゆっくりと飲める居酒屋がないことを把握しており、可能性を感じたという。そして3年ほどかけて、店舗のコンセプトや餃子の味を決めていき、「鉄板餃子酒場 大虎」を誕生させた。一号店は、2015年12月にオープンした渋谷駅の新南口店である。再開発が進み、周囲でビルの取り壊しが行われる環境の中、同店は爆発的な人気を獲得した。この成功で確信を得た久保氏は、牛タンの鉄板焼き屋であった同店のリニューアルも決意。好調な売上を誇っていた店を閉めて、「鉄板餃子酒場 大虎」をオープンさせた。
そもそも久保氏が、飲食業界でのキャリアをスタートさせたのは、26歳の頃、レインズインターナショナル(神奈川県横浜市、代表取締役 根本寿一氏)に入社してからである。店長を2年間務めた後、店舗開発の部署へ異動となるが、当時、マーケットでは総合居酒屋の出店ラッシュが起きていた。同社でも新規店舗のオープンが続いていたため、久保氏は物件の確保に奔走。好条件の物件を数多く取得して、会社の成長に貢献するとともに、不動産関係者やビルオーナーとのネットワークも築く。そして2年間、店舗開発の部署で活躍してから独立した後は、恵比寿横丁の人気店「だるまてんぐ」などを生み出している。その独創性あふれる発想で根強いファンを生み出す手法から、現在、多くの業界関係者が久保氏に熱い視線を注ぐ。
同店のキラーコンテンツは、もちろん餃子だ。「名物 大虎焼き餃子」(480円)は、国産の豚うで肉を使用しており、粗めにカットされた白菜・シイタケ・レンコン・ニラの食感も楽しめる逸品である。この他にも餃子は、「博多ひとくち餃子」(480円)や「マーラー水餃子」(480円)、「パクチーマーラー水餃子」(580円)、「島唐辛子餃子」(480円)などが揃う。ドリンクの看板メニューは、大虎名物のスーパーサワーである。山田や田中、佐藤など、苗字を使用して名付けられたサワーは、それぞれレモン・グレープフルーツ・リンゴのフレーバーで、全5種類のラインアップ。中ジョッキサイズの「子ども」は480円、大ジョッキサイズの「大人」は780円で提供しており、ユニークな提案が好評で一杯目からオーダーする人も多い。また、季節限定のフレーバーを用意したり、貸し切りの宴会ではサワーの名前を変えたりもしている。
今後のビジョンについて、久保氏は「『鉄板餃子酒場 大虎』は渋谷でのドミナント展開を考えています。ただ収益性などを考慮して、4店舗までしか広げるつもりはありません。渋谷の再開発で、人の流れが大きく変わっていくでしょう。それを見越して、残りの2店舗をオープンさせたいと考えています」と語る。そして、4店舗体制を実現した後には、さらなるビジョンがあるという。「ゆくゆくは、『鉄板餃子酒場 大虎』をFC展開していくつもりです。この業態が受け入れられるエリアは、まだまだ残されています。そうした土地へFCで出店して、ブランドのさらなる展開を行っていきたいですね」と話す。現在、駅周辺の再開発の煽りを受けて、渋谷周辺の賃料は上がっているにも関わらず、物件の取得がかなり難しい。しかし久保氏は、これまでのキャリアで築いてきた経験を活かして、効果的な物件取得を目指す。新しい切り口で餃子を提案する「鉄板餃子酒場 大虎」が、数年後、渋谷を代表する店になっている姿が目に浮かぶ。