“飲食店経営を通して、東日本大震災からの復興をバックアップしていく”というコンセプトを掲げる「かき小屋 飛梅」が2015年11月19日に新橋にオープンし、話題を集めている。運営する飛梅(宮城県仙台市、代表取締役 松野勝生氏)にとって同店は、2014年9月11日に神田西口商店街内に「かき小屋 飛梅 神田西口店」をオープンさせて以来、都内2号店目の展開となる。
新橋駅烏森口を出て新橋西口通りを抜けた先に、ガラス張りの扉から明るい灯の漏れる店舗に出会う。それが「かき小屋 飛梅 新橋店」である。今回の出店の狙いについて、取締役業務本部長の松野水緒氏は、「私たちは、一大消費マーケットである東京で、三陸の牡蠣をはじめとした海産物が文化として定着することを目指しています。一号店目の神田は、多くのビジネスパーソンにご来店いただき、大変好評を得ることができました。そのノウハウを新橋店でも生かし、三陸の海産物の安定した供給先を増やすことで、生産者の方の生活を陰ながら支えていきたいと考えています」と話す。
松野水緒氏は、代表取締役社長の松野勝生氏のご息女である。仙台育ちである同氏は、幼い頃から父親の働く姿を見て、飲食業界の大変さを身近で感じてきたという。そのため就職の際は、小売業界に飛び込んだ。その後、父の経営する店の手伝いをする機会があり、飲食の楽しさに気が付く。「飛梅のさらなる飛躍のために、貢献していきたい」と考えた松野氏は、それを実現させるノウハウを身につけることを決心する。まずは全国でチェーン展開している飲食店に勤めた後、仙台の老舗で修業して「チェーン展開の方法論」と「長く続く店作り」の双方を習得。そして飛梅に合流をして、松野氏が店舗マネジメントなどに携わるようになったころ、同社の躍進が始まった。飛梅の飛躍の裏には、松野水緒氏の存在があるといっても過言ではない。今回の新橋店のオープンに関しても、店舗全体のオペレーションなどの構築を同氏が担当している。
同店では、神田西口店同様、店内のメニュー表を瓦版にして、生産者一人ひとりの想いを伝えており、「焼き牡蠣盛り」(3個 1000円)や「生牡蠣」(1個380円)、「帆立の浜焼き」(1個580円)などがラインアップされている。松野氏は「私たちは、ブームを作りたくて、牡蠣業態の店をやっている訳ではありません」と言うと、ブームの弊害について、次のような話を聞かせてくれた。「牡蠣を生産するのに、およそ2~3年の月日がかかります。そこでブームが起きてしまうと、成長が不十分な牡蠣を出荷せざる得ない状況になります。それでもマーケットのニーズが高いうちは、牡蠣は高値で取引されるかもしれません。しかし、ブームが去った後は、価格が下落するだけでなく、牡蠣の出荷サイクルの乱れから、生産状況も壊滅的な状態となります。結局、生産者の方のメリットにはならないのです」。
こうした状況を踏まえて、同社は生産者の方と二人三脚で歩み、安定的な出荷先の確保を目指している。その理念は、店舗レベルで徹底されているほどだ。「東北の牡蠣をはじめとした海産物は、レベルの高いものが多くあります。それを支えているのが、多くの生産者の想いです。こうした生産者のバックグラウンドを少しでも伝えていけるように、当社では東京で展開している店舗でも、東北出身者のスタッフが必ずいます。一人ひとりのスタッフが、提供するメニューのストーリーを語ることができる。それが、お客様の心に通じることで、最終的な販路の確保にも繋がると考えています」と松野氏。
今後のビジョンについて、松野氏は「私たちが行っているのは、飲食店経営であるのと同時に、ソーシャルビジネスでもあります。これまで人と人との結び付きが、新しい可能性を生み出して、多くのビジネスが実現してきました。現在、都内で新たな店舗の開店を検討していますが、これからも生産者の方とのリレーションを大切にして、三陸の海産物が定着するように取り組んでいきたいと考えています」と話す。東日本大震災から、5年の月日が流れたが、まだ復興は終わっていない。三陸の生産者と二人三脚で歩む同店の飛躍が、その後押しとなることは間違いないだろう。
店舗データ
店名 | かき小屋 飛梅 新橋店 |
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住所 | 東京都港区新橋4‐14‐8‐1F |
アクセス | JR新橋駅 烏森口から徒歩2分 都営大江戸線 汐留駅西口から徒歩4分 |
電話 | 03‐6459‐0817 |
営業時間 | 月~土 11:30~14:00、17:00~23:30(LO 23:00) |
定休日 | 日 |
坪数客数 | 18坪・31席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | 株式会社飛梅 |
関連リンク | 飛梅(HP) |
関連ページ | かき小屋 飛梅 神田西口店(記事) |