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埼玉発。飲食で地元に活気を取り戻すPUBLIC DINERが「パンと、惣菜と、珈琲と。」を、11月27日オープン。国産小麦・無化学調味料・無保存料の心と体に優しいベーカリーカフェが誕生

赤いテントが目印。店内で焼き上げられるパンの香りが漂う。もともと民家だった物件を加賀崎氏がデザインし改装
中央に置かれたテーブルには、パン職人とフレンチシェフがつくりあげた〝作品〟が所狭しと並ぶ。工房はガラス張りになっており、パンをつくる様子がうかがえるのも楽しい
古民家の風合いをいかした2階のイートインスペース。トースターも設置されており、好みの焼き加減で食べることが出来る
熊谷ではハード系のパンにはなじみが薄いそう。そのため、もっちり食感を加えた「日本人の為のフランスパン」(390円)を開発した
有限会社PUBLIC DINER 代表取締役 加賀崎勝弘氏

(取材=望月 みかこ)


埼玉県熊谷市。ほかの地方と同様に人口減少に悩むこの街を、「飲食」で変えようとする人物がいる。PUBLIC DINER代表 加賀崎勝弘氏。彼の出店は、まさにこの街の風景を変えてきた。何もなかった通りに、出店後は次々とほかの店が集まりにぎわいができたり、地元百貨店のレストランフロアの前年割れが止まったりと、街や人に再びエネルギーを取り戻すきっかけを創り続けてきた人物だ。そのような彼が次の出店に選んだのは、ベーカリーカフェ「パンと、惣菜と、珈琲と。」。11月27日、駅から市役所へと続く目抜き通りにオープンした。これまで「PUBLIC DINER」や「CAFÉ PDC」などオールラウンドに利用できる飲食店を手がけてきた同社が、なぜベーカリーカフェなのか。「うちではデザートや惣菜、ドレッシングにいたるまで、すべて自家製のものをお出ししています。あとはパンだけだったんです。この市役所前の気持ちのいい並木道をランニングコースにして、人が行きかう道にしたい。また、今は、市民に活用されていない市役所横の公園で、このランチボックスやパンを食べる風景をつくりたいと考えています」。パンに合うように開発した惣菜、コーヒー、それらをセットにしたランチボックスを販売する。すでに人気商品は入手困難だ。

加賀崎氏はPUBLIC DINERの代表取締役として、出店する店すべてを「熊谷一」といわれるほどの繁盛店にしてきた。よほど筋金入りの飲食人と思いきや、30歳の時に食の世界に入ったそう。それまでは東京の大手広告代理店で仕事づけの毎日。「30歳を前に『このままじゃいけない』と、なぜかふと思ったんです。もともと両親が熊谷で食堂をやっていたので、手伝おうかなと思って退職しました」。とはいえ、飲食経験は学生時代のアルバイトのみ。本格的に勉強をするため、和食や中華、居酒屋、ファストフード、果てはコーヒーチェーンまで、同時にいくつも掛け持ちながら7社で経験を積んだ。1年後、そこで得たノウハウと知識をいかすべく、両親が35年前(当時)に創業した「加賀家食堂」に入った。当時は「ロードサイドによくある『男の飯場』でした。少しずつリニューアルしていくうちに、客層が変わってきたことに気づいたんです」。手作りで内装やメニューを変えていくと、徐々に女性や家族連れまでが来店するようになった。これに手応えを感じ、2003年全面リニューアル。見事、大繁盛店に成長させた。「大衆食堂のもつ懐の深さを残しつつ、もっと広く、多くの人が楽しめる店にしたかったんです」と話す。その後の13年間、着実に出店を重ねていく。加賀家食堂の洋食版となる「PUBLIC DINER」(2008年10月オープン)、駅前の商業施設に「CAFÉ PDC」(2010年10月オープン)、地元百貨店の飲食フロアに喫茶店「PUBLIC LOUNGE」(2012年10月オープン)、タルトとパイ専門店「PUBLIC SWEETS TART&PIE」(2014年10月オープン)。いずれも熊谷市民にとってなくてはならない存在になった。そして、今回のベーカリーカフェ「パンと、惣菜と、珈琲と。」にいたる。

「EAT GOOD 心と体に良いものを。」。店内の壁にはさりげなくこのような言葉が刻まれている。「化学調味料、保存料は一切使わず、すべて自家製にこだわっています。昔の日本はそれが当たり前でしたからね」。使用する小麦粉はパン作りに向く高品質の国産のみ。地元農家を応援したいという気持ちから、熊谷産小麦も積極的に使用する。パンと惣菜のメニューは、「アーティストであり、科学者でもある」と同氏が絶賛するパン職人と、都内の星付きレストランで研鑽を積んできたフレンチシェフが共同で開発。1年近く試行錯誤を繰り返した。ミネラルを豊富に含み健康効果に注目が集まる「活性水素水」を用いた「100%加水パン」(200円)や北海道産小麦粉キタノカオリ、よつ葉バターを100%贅沢に使用した「食パン『生きているパン』」(1斤、380円)が人気商品だ。小麦やバターなど素材の甘味を十分にいかした優しい味わい、柔らかくモチモチした食感が地元の人に受け入れられやすいという。ほかに「パン」は25種類以上、「惣菜」が15種類(150円〜)、「サラダ」が5種類(280円〜)、「ランチボックス」2種類(各880円)など、毎日飽きずに通えるメニューが豊富に揃う。「コーヒー」はもっとも食事に合うように研究を重ね、パンや惣菜の味を邪魔しないオリジナル焙煎・ブレンド。味わいはかなりさっぱりとしていながらも、深い香りと香ばしさが特徴だ。

東京などの商業施設からの出店依頼も多数あるが、断り続けている。同社の心身に配慮した食事は、大学病院や医療機関などの関心も高く、施設内に出店してほしいという声も多い。加賀崎氏は東京出店は基本的に考えていないという。地元・熊谷での飲食にこだわる同氏に今後について聞いた。「これからは食材をできるだけオーガニックに切り替えていきたいですね。そのために農場や八百屋を立ち上げようと計画中です。本来『イートグッド』はみんなのものであるべきです。だからうちはパブリックダイナーという社名の通り『大衆』というスタンスをこれからも変えません。地方でも、食に対する価値観が、どこかのタイミングで、一気に変わると思っています。そのきっかけが、『みんなの食堂』である、この会社であったなら、人生をかける価値はあると思っています。食で街をつくり、場をつくる。その為のデザイン力。そして、長生きがリスクになりえるこの時代に、健康寿命を延ばし、人々のココロとカラダをキレイにするお手伝いをしていきます」。加賀崎氏の店が、いつしか食べる側の意識を変え、「食」のあり方を、生産を、国を、やがては世界を少しずつ変えていくことを心から願う。

店舗データ

店名 パンと、惣菜と、珈琲と。
住所 埼玉県熊谷市宮町2-131

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アクセス JR高崎線「熊谷駅」から徒歩10分
電話 048-501-7330
営業時間 9:00〜17:00(2016春以降 9:00~18:00の予定)
定休日
坪数客数 45坪 36席
客単価 1000円
運営会社 有限会社PUBLIC DINER
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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