日本屈指のビジネス街である大手町駅に直結した商業施設「OOTEMORI(おおてもり)」。「大手町の森」などが注目を集めて人気施設となった同施設に「とろさば食堂」が5月18日オープンした。運営する鯖や(大阪府豊中市、代表取締役 右田孝宣氏)は、とろさば料理専門店「SABAR(サバー)」を大阪に4店舗、京都に1店舗、そして東京・恵比寿に1店舗展開しており、大阪市北区の南森町店には5月29日に新規出店したばかりである。
「SABAR」で快進撃を続ける同社にとって「とろさば食堂」は、新しい業態への挑戦となる。代表の右田氏は「私たちが掲げているテーマは、まだ出会ったことのない“とろさば”との出会いの場です。『SABAR』は居酒屋業態のため、目的来店の傾向が強くなります。しかし『とろさば食堂』は定食屋であるので、ランチなどでふらっと1人でも立ち寄れるお店です。当店では、よりカジュアルに鯖料理を楽しんでもらいたいと考えています」と出店の背景について話す。また、同店はテイクアウトでも利用できるのが特徴だ。そのため店内でカジュアルに鯖料理を楽しめるだけでなく、自宅やオフィスでも手軽に鯖料理を楽しむことができる。右田氏も「多忙なビジネスパーソンのニーズを取り込むため、来店型とテイクアウト型の2つのアプローチができる店舗にしました」と説明する。
ランチには10種類の定食が用意されており、身が詰まったとろさばを贅沢に使った「とろさば塩焼き定食」(1000円)や、丼ぶりとしても出汁をかけて鯖茶漬けとしても食べられる「とろさば漬け丼定食」(1000円)が人気だ。また、テイクアウトでは「日替りとろさば弁当」(880円)や「とろさば造り3種盛定食」(1280円)、「とろさば丼」(780円)などの弁当はもちろん、「とろさば棒寿司ハーフ」(1132円)や「松前風とろさば寿司」(2058円)など鯖寿司も豊富に取り揃えている。
同店はオープン以来、来店数・回転数ともに好調で、当初の予想を上回る高収益の店舗になっている。「『とろさば食堂』では、これまでリーチできなかった層に鯖料理の魅力を届けることができました。私たちが提案する鯖料理のニーズの高さを感じています。焼肉やラーメンなどのように、鯖を一つの食のジャンルとして確立させたいですね」と右田氏は話す。「とろさば食堂」、「SABAR」がともに好調な同社であるが、次なる展開を見据えた動きも開始している。「今夏には女性客をターゲットにしたテイクアウト専門の新業態を、百貨店を中心に展開させます。私たちの鯖ブランドを中食マーケットでも確立させることで、より深く消費者の生活に入り込んでいくつもりです。『SABAR』、『とろさば食堂』、そして新業態の3つでドミナント展開を行えば、鯖の魅力をよりトータルに伝えることができるでしょう」と同氏。また現在、同社では海外進出の計画も進行中である。経済産業省やクールジャパン機構が提携して行うプロジェクトに、鯖やの参画も決定しているのだ。右田氏は海外展開に関して「まずはシンガポールに進出して、その後インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイなどASEAN諸国での出店を考えています。国内では直営店の展開ですが、海外では現地法人と提携をしてFC展開を進めていく予定です」と語る。
同社の今後のビジョンについて右田氏は「当社は鯖を一つのコンテンツとして展開させています。2022年までに『SABAR(サバー)』を38店舗出店するとともに、『とろさば食堂』の出店も推し進めていくつもりです。とろさば食堂は小さな坪数で小回りの利いた展開ができるため、ビジネス街だけでなく路面店など多くの展開を考えることができるでしょう。この夏、新たに始動する業態と併せて、1つのジャンルとして鯖が確立されるように国内外を問わず活動していきます」と話す。なお、同社は現在、鳥取県とJR西日本とリレーションを組んで、「お嬢サバ」という養殖鯖のブランドの確立も行っている。加工から流通を手掛ける6次産業にプラスアルファを追加した7次産業に向け、同社の動きは加速していく。