老舗和食店や洋食店が並び、粋な店や美味しい銘店が多いことで知られる銀座一丁目。昭和通りの1本東側、木挽町仲通りに“洋風手打ち蕎麦と日本酒の店”をコンセプトに、オーナーで蕎麦職人の山崎祥平氏が新しいソバ食文化の店「Soba Ristorante na-ru(ソバ リストランテ ナール)」を1月12日オープンした。粋な風情を今だ色濃く残す街並みに面したファサードは、全面がオープンとなるウィンドウスタイル。明るくモダンな環境は、イタリアンかフレンチのレストランそのもの。カウンターの上にはオリーブオイルのボトルが並び、ワインラックにワイングラスが釣り下がっている。一瞬、ここが蕎麦屋とは誰もが思わないだろう。既存の蕎麦屋のイメージを覆す、今までにない蕎麦屋が「na-ru」だ。
山崎氏は、神楽坂の姉妹店 蕎麦「和み」で蕎麦を研鑽するなか、「美容と健康に優れた蕎麦を女性や若い世代にもっと気軽に食べて欲しい」と考えたという。その結果、蕎麦打ちスペースが間違いなく本物の手打ち蕎麦屋であることを裏付けながらも、蕎麦とオリーブオイルがコラボレーションする新しいスタイルの蕎麦店を作った。同氏が打つ蕎麦は、会津産の蕎麦粉10に小麦2を加えた2増しの蕎麦。店の宝となるかえしは「和み」と同様。東北カツオの厚けずりの出汁と醤油で作り、寝かすことで蕎麦湯を入れなくても飲めるほどまろやかな旨味が広がる。同店ではそのかえしに入れる山葵の替わりに、山椒が柔らかく薫るオリーブオイルを入れるという斬新さ。どこまでも深い探究心を実感する。
利酒師でもある山崎氏の「na-ru」流のおすすめは、先ずは、洋風惣菜をアテに、こだわりの日本酒でほっこりと楽しむ蕎麦屋酒、蕎麦前。楽しみ方も古典スタイルとNEWテイストがコラボレーションする今までにない、ネオ蕎麦スタイルなのだ。料理も、もりそば以外はイタリアンパスタスタイルに仕上げた、かわり蕎麦と洋風惣菜を提供する。前菜には「蕎麦の実入りカポナータ」(500円)や「だし入りオムレツ(伊達たまご)」(700円)、「海老とマッシュルームのアヒージョ」(750円)など。オーブン料理は「(麦キッシュ)」(500円)や「蕎麦グラタン」(800円)。「蕎麦屋の天婦羅盛り合わせ」(1500円)ももちろんある。手打ち蕎麦は、基本の「もりそば」(800円)。かわり蕎麦には、バジルを練り込んだ「バジル蕎麦」(900円)やトマトベースの「アマトリチャーナ蕎麦」(900円)、「蕎麦カルボナーラ」(1100円)と、イタリアンベースの蕎麦が並ぶ。
蕎麦前となるドリンクは、山崎氏厳選の蕎麦に合う日本酒。「日本酒はどんな料理にも合わせることが出来るからです」とは、山崎氏のおすすめポイントだ。全国から揃えた日本酒は冷や向け、ぬる燗向け、燗酒向けと表記され、判りやすい。価格は110mlで500円から、一合は750円から。「獺祭にごり酒50」(360ml 2200円)のスパークリングがあり、日本酒初心者にも嬉しい。ワインは自然派のみでボトルは3800円から。
ランチ営業もあり、夜は12時までと営業時間が長く、蕎麦業態としては珍しく、2軒目使いも可能だ。蕎麦前ではじめ、ゆっくりと手繰るのもいいが、さっくりと、日本酒を一杯に〆の蕎麦だけを楽しむことも出来る。日本の伝統食である蕎麦を大切にしながらも、いろいろなスタイルで楽しめる蕎麦の新しい世界感を見せてくれる店だ。