JR代々木駅から徒歩3分、小田急線の南新宿駅へ抜ける商店街の一角、茶色のガラスと赤いひさしがレトロな感じで、以前はスナックだったという店舗にオープンしたのが、白ワインとカレーの店「TORI SAINT GERMAIN(トリサンジェルマン)」だ。この店は、中野新橋で「炭火焼きホルモンとんずら」、中目黒で路地裏酒場「ROJIURASAKABA 青 CORNER」を営むdate(ダテ)氏が経営する3店舗目の店。実はdate氏は1店舗目「とんずら」を開いた4年前から独学でカレーを作り、特別メニューとして常連客に提供していた。「いろんな想いで試行錯誤して作ったカレーをもっと多くの人に食べてもらいたい」と作った店はオープンして間もないが、ビジネスパーソンの男女、特に20~30代の女性が多く来店し、すでに常連客もいるそうで「ランチもこの店のカレーが食べたい」と大好評だそうだ。「美味しかった、また来るね、と言われるよりもうれしいですね」と顔がほころんだ。 カレーは1種類のみで、スパイスは4種類ととてもシンプル。この4スパイスのバランスが絶妙なのだ。食べた時には、それほど辛さを感じないが、後からジワリと効いてきて汗が噴き出す。「4年間、本当にさまざまなスパイスを試しましたが、シンプルな方が美味しいという結論に達しました」とdate氏は、シンプルイズザベストなカレーに自信をのぞかせた。「看板商品は飽きられず、普通すぎないというバランスが大切」だという。自慢の「TORI CURRY RICE(トリカレーライス)」(Mサイズ680円、LサイズとLLサイズ880円、テイクアウト780円)は、大山鶏のもも肉を「これでもか!」(date氏)というくらい使っており、良い肉ならではの味とたっぷり入った具がぜいたくな美味しさだ。店名の「トリサンジェルマン」は、「トリ」を使ったカレーにもかけている。女性には、18時から20時まで限定のドリンク付きレディースセット(1000円)が人気。ライスをバケットにした「TORI CURRY baquette(トリカレーバケット)」(680円)、トッピング各種(100円)もある。 自分でも「飲み屋が大好き」というdate氏の店だけに、サイドメニューも充実している。一番人気は「長芋のバターソイソースグリル」(580円)で、自家製のタルタルが付き、醤油とバターが香るシンプルな一品だ。シンプルといえば、茹でただけの「ゆでスナップえんどう」(380円)も人気メニューのひとつ。また、「ベーコンBIGオムレトゥ」(580円)は、卵を4個使ったボリュームあるキッシュのような料理で、2~3人でシェアして食べる客が多いそうだ。この他にも、イタリアン、中華、和食などジャンルを問わず創作されたオリジナル料理が並ぶ。ドリンクの一押しは、常時6種類用意している白ワイン(グラス500円、ボトル2800円)。カレーに合わせるドリンクといえば、ビールやハイボールなどの炭酸系を想像するが、それではカレーとドリンク1杯で満腹になってしまうので、「ライトにライトに」(date氏)と考えた結果、白ワインになった。この他、ビール(500円~)や自家製サングリア(グラス500円、デキャンタ980円)、ハイボールなどの「割もん」(450円~)がある。 date氏が食べ歩きをし、他店のメニューなどについて研究を始めたのは、1店舗目をオープンした後からだ。「とんずら」は駅からは近いものの、人通りが少ない場所だった。リピート率は高かったが、来店客の絶対数が少なく、売り上げは決して多くなかったため、スタッフは給料なしで働いてくれたという。それまで、他店のリサーチは全くしていなかったそうだが、ここで意識が変わった。「なぜ流行っているのか、なぜマスコミに取り上げられるのか、とにかく繁盛店に行って研究した」、その意識が全スタッフに浸透しており、行って良かった店や美味しかったメニューなどを全員で共有しているという。「これからも飲食店をやっていくなら、本当に好きで研究しながらやっていかないと、生き残っていけないと思う」と氏は語る。他の飲食店で修業をした経験がないからこそ、「お客さんに何を出したら喜んでもらえるか」、それを全スタッフが毎日考えているという。「飲食店はお客さんと共につくりあげるコミュニティスペース」と言う氏には、場づくりが飲食店を経営する楽しさだそうだ。 今後については、「カレー業態で出店していきたい」と言う。カレーは誰もが好きなメニューで、なおかつカレーを注文する客がひとりでもいれば「連鎖」が始まるということを実感したからだ。また、メニューが1種類でいいというところも魅力的だ。これまでは、ホルモン焼と居酒屋という自分たちがやりたい業態をやっていたので利益が出にくかったが、今後は業態をカレーに集約し、材料の仕入れなど効率化を図って利益を出し、スタッフに還元する予定だという。出店したい地域を聞くと「カッコいい店がないところ」だという。「人気のある地域は、飲食店同士の消耗戦になってしまう。大資本なわけではないので、利益の奪い合いにならないような場所に出店したい」と、希望の場所で良い物件と出会うタイミングを待っている。「この先、お酒を飲む若者がいなくなったら、飲食業界は先細っていく一方なので、とにかく気軽に飲みに来てほしい」と語るdate氏。飲食業界全体を見据えた店づくりの手腕がこれから発揮されそうだ。
店舗データ
店名 | TORI SAINT GERMAIN(トリサンジェルマン) |
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住所 | 東京都渋谷区代々木1-41-11 昭和ビル1F |
アクセス | JR、地下鉄代々木駅より徒歩2分 |
電話 | 03-5309-2616 |
営業時間 | 18:00~24:00 |
定休日 | 日 |
坪数客数 | 7坪・12席 |
客単価 | 2500円 |
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