1号店の立川店を2010年の8月にオープンし、2011年5月、中野に2号店、そして今年4月、3号店を吉祥寺にオープンした「千年葡萄家」(Mond、代表:阪本節雄氏)。現在立川店・中野店、両店とも、予約必須の繁盛店となっている。オーナーの阪本氏は元外食チェーン企業から独立した、脱サラである。飲食業界経験が長いとはいえ、事業を立ち上げ、3年目で、着実に会社を成長させている。この度の吉祥寺店はJRグループの商業施設アトレのテナントとなるほど、ブランドとしての信頼感を得ての出店となった。 阪本氏自身の理念であり、会社のモットーでもある「レストランのクオリティを居酒屋で。そして、来たお客様を楽しませる」から提供されるハイクオリティのサービスの結果と言える。まずは客とのコミュニケーションこそが、接客、サービスの基本と考える坂本氏。常に客席を見て、声を聞くことにあるという。何を求めているのか、どうのように対応する事で楽しんでもらえるのか。スタッフ、一人一人が頭で考え、行動することこそが真のサービスという。考える力、つまり想像することは創造であり、創造こそがサービス。それは、長年、チェーン系飲食企業に在籍していた阪本氏が行き着いた、飲食業におけるサービスの在り方への結論という。「マニュアルからは質の高い本物のサービスはつくれません。なぜなら、お客様は一人一人求めるもの、楽しみ方も違います」と阪本氏は話す。 そんな阪本氏の思いを具体的に表しているのが、ワインとそのワインリストにある。150種類、400本のワインがありながら同店には、ワインリストがないのだ。グラスでも、ボトルでも、ワインはオーダーの度にボトルを抱えスタッフが客席に向かう。基本3本のボトルをテーブルに並べ、それぞれの特徴を説明。客とコミュニケーションをしながら、好みのワインを探すという。初心者であれば分かりやすく接することで、ワイン好きになって貰えるきっかけになる。ワイン好きであれば話しが盛り上がる。手間も時間も必要とするが、単なる店と客の関わりではなく、個人と個人の信頼関係を築くことになるからだ。それは「長く通って欲しい店にしたいからです」と話す阪本氏。目指すは、“私の店づくり”にある。そして、なによりも、会社としても人間として優秀なスタッフを育てることにつながるのだ。 同店のボトルワインは1800~9000円で、ボリュームは2500~3000円台と、カジュアルなラインアップ。スパークリングも2500~8400円と気軽に楽しめる品揃えとなっている。グラスワインは500~700円で、赤・白10種類、スパークリングは500円、600円。それでもスタッフはボトルを抱え、テーブルまで来てくれる。価格は一目で分るよう、ワインのボトルに白のマジックで表示されている。 料理はメニューブック化されている。人気の高い「ツブ貝のブルゴーニュ風」(680円)。「アンチョビポテト」(380円)、「野菜のフォンデュ白ミソとゴルゴンゾーラ」(580円)、「ムール貝の白ワイン蒸し」(480円)、「タコのペペロンチーノ」(580円)、「鮭の塩付け豚のロースト豆煮込み添え」(880円)、「牛ランプのステーキ」(980円)、「雲丹クリームの海老ワンタン」(580円)、「イカ墨のリゾット」(680円)、「本日のパスタ」(780円)など、軽めの一品からしっかりとしたメイン、パスタまで用意されている。嬉しいことに、100円でパンが食べ放題となる。因みに時間勝負と言われるランチの料理メニューブックは用意しない。スタッフがその日のメニューを説明するのだ。そこには「ゆっくりと落ち着いてランチを楽しみたい」と願う客を大事にしたい阪本氏の思いと、「お客様にも料理説明から具体像を想像して楽しんでいただきたい」との心遣いがある。さらに、テーブルで楽しむのはワインや料理ばかりではない。プロのマジシャンによるテーブルマジックを週2回披露している。普段マジックショーを見る機会の少ない事もあり、人気となっている。両店とも、ワインバルとしては珍しい、ファミリーでの来店が多いというのが頷ける。「今後の出店も中央線沿線を考えている」と阪本氏、新しい業態への期待は高い。
店舗データ
店名 | 千年葡萄家 吉祥寺店 |
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住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺御殿山1-1-1 |
アクセス | JR吉祥寺駅、京王井の頭線吉祥寺駅より徒歩3分 |
電話 | 0422-21-1005 |
営業時間 | 月~金 ランチ11:30~15:00、ディナー17:00~翌4:00 土曜11:30~翌4:00、日・祝11:30~24:00 |
定休日 | 不定期 アトレ定休日に準じる |
坪数客数 | 17.5坪・34席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | 株式会社Mond |