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2坪の区画で月商594万円超を誇るクラウドキッチン「KitchenBASE」。2019年の開業以来、快進撃を続けるビジネスモデルの秘密を、運営会社SENTOEN山口大介氏に聞く!

コロナ禍で中食業態の需要が増加する中、デリバリーやテイクアウト特化のクラウドキッチンに注目が集まっている。その中でも、SENTOEN(東京都千代田区)が運営する「KitchenBASE 中目黒」は、2坪の厨房区画で月商594万円を出す好調ぶりを見せている。今年10月には「KitchenBASE 神楽坂」も出店。今、勢いに乗っているクラウドキッチンだ。今回は、同社代表の山口大介氏から、創業の経緯やクラウドキッチンの魅力と可能性、今後の展望をインタビューした。



(SENTOEN CEO 山口大介氏)

KitchenBASE
SENTOEN(東京都千代田区)が運営するクラウドキッチン(ネット注文に特化した、客席を備えないキッチンのみの店舗)。現在は中目黒と神楽坂の2店舗を構え、フードデリバリーを中心に料理を提供。自社開発の業態に加え、公募によって選ばれた事業者の業態が営業する。

―現在28歳の山口さんですが、創業に至るまでの経緯を教えてください。

山口氏:大学時代、アプリ制作の会社にインターンをした際、「自分の作ったものを発信する喜び」を知り、起業をしたいと思うようになりました。その後、留学をしたり、海外を旅したりしながら、「なんのために起業するのか」を考えていましたが、イタリアを訪れた際に見た、公衆浴場「テルマエ」が決め手となりました。人々のコミュニティとして親しまれるテルマエに魅力を感じるとともに、テルマエは古くから国の繁栄にも貢献してきたという歴史的背景を知り、自分も「コミュニティの場を作りたい」と思ったんです。そこで、日本で、同じように古来より人々のコミュニティとして利用されてきた銭湯の運営をしようと、2018年4月、26歳のときに起業しました。

―そこから飲食に舵を切った経緯も教えてください。

山口氏:実際に銭湯の運営を始めてから、法令によって銭湯は入浴料が一律で決められており、広告を打つにも制約が多いといったことを知りました。先に調べておけばよかったんですけどね。本当は、銭湯のサブスクリプションのサービスにしたかったんですが、そのハードルが高そうだと、別の事業に転換しようと考え始めました。そこで、私たちが目指す「コミュニティの場」を作りやすい業種として飲食業界に目を付けました。

調べてみると、世の中にある飲食店の大半が個人店であり、その多くが開業後、資本力や販促の弱さによって廃業に追い込まれている現状がありました。もっと言えば、マーケットの情報を得る方法も乏しく、データに基づいた目標数値も立てられないまま、闇雲に経営をしている方も多いという状況を知りました。でも、そこで他の経営者と情報交換をしたり、刺激を与え合ったりするコミュニティがあれば、うまくいく人が増えるんじゃないかと思って、あくまで「料理を作るための場づくり」のため、複数の飲食事業者が同居するクラウドキッチンの運営という形で参入することに決めました。

とはいえ、私含め3人いた創業メンバーは全員が飲食未経験者。いきなり未開拓の地に足を踏み入れるのもリスクが高いと感じたため、実証実験が必要でした。ちょうど、メンバーの知り合いで、浅草にあるサンドイッチ店が数ヶ月前に店を閉めたということだったので、店舗とレシピを引き継いで、それをデリバリーで販売する実証を開始。当時は2018年。ちょうど、Uber Eatsが出始めていた頃でした。

―結果はどうでしたか?

山口氏:最初の1ヶ月はほとんど売れなかったのでしんどかったです。1日の売上は平均して3000円程度で。けれども、私たちはIT・データに強いメンバーが多かったので、数字に対する課題抽出が得意だったんですね。オーダー数に対してのアクションを、数値に落とし込み、分析。出てきた課題に対して新たな施策を打ち、アクション。また分析……というフローで試行錯誤を重ね、徐々に売り上げを伸ばしていきました。

―具体的にはどんな施策を?

山口氏:例えば、商品の内容はもちろんUber Eats上の画像や文章を変えたり、店頭にノボリを立てたり、チラシを配ったりといったアクションがありましたが、当時、最も結果に結びついたのは注文を受けてからお客様のもとに届けるまでのスピードでした。オペレーションを改善し、それまで10分で作っていたものを5分で作り、配達のための時間を多く確保したことが効いたように思います。最終的に1日平均8万円の売上を出せるようになったときに、「これは行ける」と手ごたえを感じ、本格的に自分たちのクラウドキッチンを作ることにしました。この、1日8万円という売上は、今でも私たちの数値的な指針になっていますね。

―そうして2019年6月に開業したのが「KitchenBASE 中目黒」ですが、どのような戦略で準備を進めていたんですか?

山口氏:まず立地ですね。twitterでUber Eatsの配達をやっている人のアカウントを探してアンケートをお願いし、デリバリーで注文の多い場所を調査しました。平日は六本木や渋谷といった繁華街が多いようでしたが、休日は学芸大学などの住宅街が多かったんです。そこで、商圏がどちらとも被る中目黒を選びました。

(「KitchenBASE 中目黒」)

また、「KitchenBASE 中目黒」のキッチンは20坪の中に4区画のキッチンがあるのですが、うち3区画を自社開発の業態を運営する一方、残りの1区画を、ゴーストレストランをやりたい人を公募してオーディションで選ばれた人が入って運営しています。応募は約80事業者からありましたが、「提供の早さ」、「味」、「コミュニケーション」の3点に着目し、最終的に3事業者に決め、1区画のキッチンをシェアしてもらっています。「提供の早さ」、「味」は当然ながら、やはり、コミュニティという面を重要視したいので、同居する他の事業者と仲良くできるかどうか「コミュニケーション」の項目も私たちの中で必須なんです。

さらに、外部からコンサルタントを招き、商品開発やオペレーション、販促の改善などに努め、売上の向上とノウハウの形成を図りました。自社開発の業態はスムージーやサラダ、丼物、時にはわかめ麺といった変わり種なども試しながら、10つ目に出した、「NY屋台メシ!!チキンオーバーライス」が大ヒット。「Mr.CHEESECAKE」などで知られる田村浩二シェフに監修してもらい、オペレーションは最短1分で商品が作れる仕組みに。この業態単体で月商450万円を出したこともありました。こうした努力の甲斐あり、開業当初は108万円だった自社業態の2坪の区画の月商は、最高594万円にすることができました。販促に関しても、注文履歴から顧客データや各メニューの出数傾向などを数値化し、施策を打っては分析の繰り返し。さらに、それらのノウハウやデータを、出店している店舗の皆さんに共有することで、今では店舗も売上を伸ばしています。

(特に人気の自社業態「NY屋台メシ!!チキンオーバーライス」)

―地下1階4階建てビル1棟で全21区画のキッチンを備え、総面積は110坪と中目黒より大規模な「KitchenBASE 神楽坂」も開業しましたが、今後はどのような展開を考えているのですか?

山口氏:まず、私たちはこの「KitchenBASE」を、これから飲食で起業を考えている人たちだけでなく、個人店をやっていて拡大する、またはフランチャイズ展開を考えている様々な方々に利用してほしいと考えています。そのため、「KitchenBASE 神楽坂」を全国的に展開するモデルにできればと思っています。

(「KitchenBASE 神楽坂」)

「KitchenBASE」では、調理設備が整っているので、初期投資を抑えて開業できることに加えて、弊社からのデータに基づくマーケティングノウハウ、業態のシェアも行っています。施設に同居する店舗同士の情報交換とも合わせて、自店舗のブラッシュアップがしやすい環境だと思います。また、最低半年からの入居も可能なので、通常は年単位での契約が必要な店舗のテナント契約と比較してリスクも低め。中食は外食と比較して商圏が広いため、同じベース内で業態が被っても影響がほとんどないことも、参入のハードルの低さにつながっているかと考えています。低投資、低ランニングコストに加えて戦略面での後押しも行うことで、初めて飲食店を経営する人にとって、学校のような存在になりたいですね。

さらに、ゆくゆくは全国に拠点を広げて「今日は中目黒だけど、来週は北海道に出店」というような「旅する料理人」を作ったり、クオリティの高いブランドを誕生させて「デリバリーのミシュラン」といった新しい概念を作ったり、といったことも考えています。すでに2021年3月には浅草にも「KitchenBASE」が開業予定。飲食業に携わる人たちがワクワクするような目標を作って発信し、業界をもっと元気にしていければと思っています。

―ありがとうございました!

(2021年3月開業予定の「KitchenBASE 浅草」)

(取材=高橋 健太)

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