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特集

現状の数値を明確化し、ダメージをV字回復するためのビジネスモデルを策定。新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する今、社労士&弁護士の目から見た、経営者がすべきこと

新型コロナウイルス感染症による外出自粛で売上が激減し、店舗や事業の展望が見えない今、経営者が取るべき行動について、社会保険労務士の岡村育代氏と、弁護士の喜多英博氏にインタビュー。多くの経営者と関わってきた2人に、今後、大きな変革が予想される飲食業界で経営者が取るべき行動を、士業の目線で語ってもらった。


社会保険労務士 岡村育代氏

社労士事務所Being 所長。大学卒業後、化粧品メーカーの研究職を経て2004年に開業。現在は神奈川県横浜市に事務所を構える。社会保険業務、給与計算、人事労務相談のほか「組織づくりは、人づくり」という考え方を土台に、トップダウンではなく、ボトムアップ型の就業規則、人事考課制度、給与制度などの社内制度作りに取り組んでいる。

弁護士 喜多英博氏

法律事務所Being代表。1999年弁護士登録。「法律は幸せをもたらすためにある」という信念のもと、双方勝利の観点から、事前対応による紛争予防と、起きてしまった紛争をできる限り小さくすることを得意とする。多くの中小企業の「経営者の伴奏者」「現場社員のメンター」として、人を大切にする志高い経営者を徹底的にサポートしている。

今を持ちこたえる対策と、将来を生き延びる準備を同時に進めよう

-多くの飲食店が打撃を受けている今ですが、経営者は、まず何を考えるべきでしょうか?

岡村:ポイントは2つで、「現状の数値を明確にする」ことと「V字回復するためのビジネスモデル」の模索を並行して考えることです。現状では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための自粛期間がいつまで続くか不透明な状態です。そのためにすべきは、資金繰りを計算し、自社の経営がどの程度の期間を持ちこたえられるか数値として落とし込むこと。

まず収入面では、激減している「売上」をどのように補填するかを考える必要があります。これに対しては、現在の自粛による外食への逆風があるため、テイクアウトやデリバリーなどの中食を導入するなど、新たなビジネスモデルを取り入れることが有効であると思います。

とはいえ、それで今まで以上の売上をカバーできるとは限らないため、取引銀行への「借入」なども利用し当面のキャッシュを手元に残しておくことも考えるべきかと思います。

喜多:特に、銀行などの融資は不景気になるほどハードルが上がるため、なるべく早めに相談をするとよいでしょう。その際、いきなり訪ねるのではなく税理士からの紹介を受けていくと、銀行側との取引がスムーズに運ぶ可能性が高まります。顧問税理士をつけている方は、一度相談すると良いですね。

また、支出の面で大きな固定経費となる「家賃」ですが、これはダメもとで一度大家やデベロッパーに値下げ交渉をすべきです。テナントが退去することのリスクを回避したいと考えるのがオーナー側の心情なので、この時期限定ではありますが、応じてくれるケースも増えています。

さらに、現在すでに国税の納付や地方税の徴収が1年間猶予されることも決定しています。このように支払いの先延ばしができるものまで整理して、現時点での支出を極力抑え、最終的に持続可能な期間を割り出しましょう。

-飲食店の大きな支出に「人件費」もありますが、有効な対策はありますか?

岡村:社会保険労務士としての立場から考えると、「上手な休ませ方」が重要だと思います。例えば、社員を休ませる場合、給料の最低6割を休業補償として支払わなければなりませんが、6割では社員の生活が成り立たなくなる可能性があります。雇用調整助成金を利用することで、より普段に近い給料を払ってあげられないか、検討してほしいと思います。助成金の受給額を試算し、受け取れる時期を予測しながら、会社や店舗の運営上、誰をいつ休ませるか、休まない社員にはどのような仕事をしてもらうかなども含めて、トータルで最も効果的なプランニングをする必要があります。

顧客の潜在的な心理を見極め、柔軟な発想で新たなビジネスモデルを模索する

-2つ目のポイントである「V字回復するためのビジネスモデル」は、具体的に何を考えれば良いでしょうか。

喜多:自粛によって外食の利用は減っていますが、根本的に需要自体は減ってはいないと考えています。すでにデリバリーやテイクアウトなどの中食事業を行っている経営者は多いかと思いますが、私が注目しているのは通販です。販売地域が限定される中食と違い、全国区で展開することが可能なので、自粛が緩和された際にも引き続き収入源として活躍させることもできます。

岡村:極論になりますが、社員の生活を守るためと割り切り、当面は飲食以外の事業に目を向けることもひとつの手だと思います。例えば、店を閉めてその間、社員に短期の副業を認め、食材を提供してもらっている農家等で仕事してもらうことで社員の収入を確保している会社もありました。農業は一年間の中で繁忙期と呼ばれる時期は数ヶ月程度です。契約農家の食材を使っている店舗などは、農家にとっては経営の助けになることに加え、その後の関係性の向上にもつながるでしょう。こうした情勢でも、人手を必要としている場所は必ずあるので、広い視野で考えると良いのではないでしょうか。

収束を待つのではなく、現状と寄り添いながら歩んでゆく

-今後の飲食業界を生き残るため、経営者はどのような心持でいるべきなのでしょうか?

喜多:今回の騒動で、飲食業界も大きな変革の時期を迎えていると思います。私としては、「コロナは収束しない」という最悪の事態も想定した上で、対策を立てるべきだと考えています。

岡村:私は、やはり社員の存在が重要だと考えます。今の状況では、これまでと同じ現場仕事がないわけですから、この機会に、時短勤務のオンライン会議で店舗の改善点や新規事業のアイデアを出してもらうなど、今後の経営戦略に役立つ仕事で社員の価値を引き出すことが効果的だと考えます。苦しい時だからこそ、自分一人で悩まず、社員の協力を得ながら共通のゴールに向かえる経営者が、今後は生き残っていけるのだと思います。

【備考】新型コロナウイルス感染症関連の各種救済制度
・持続化給付金
対象:新型コロナウイルスで1か月の売上が前年同月比50%以上減少した事業者
https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html

・雇用調整助成金
対象:新型コロナウイルスの影響で休業手当を支払った事業者
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
(問合せ)各都道府県労働局または最寄りのハローワーク

・IT導入補助金
対象:テレワーク導入のために利用する業務効率化ツールを導入した中小企業・小規模事業者
https://www.it-hojo.jp/
(問合せ)サービスデザイン推進協議会

・資金繰り支援の各種融資(無利子融資あり)
対象:新型コロナウイルスの影響で売上が減少し資金繰りが苦しい事業者
(問合せ)日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関

・その他(国税・地方税の1年納税猶予、固定資産税の軽減措置)

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