新・編集長コラム

東京にも「パン飲み」が来た!キーワードは「食べ放題」と「もちもち食感」?

都内でも「パン飲み推し」の店が目立つようになりました。ワインとパンのペアリングを打ち出すバルやビストロが人気です。事例を交えつつ考察したいと思います。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


「パン飲み」で予約困難店になったビストロ

いま「パン飲み」でInstagramを騒がせているのが、神楽坂の「神楽坂ワイン食堂 ビストロ Entraide(アントレイド)」。オープンは2013年なので最近のお店というわけではなく、以前はそこまでパン飲みの店というイメージは付いてなかったような気がします。ところが、ここ最近、急に「パン飲み」の店としてInstagramでユーザーに紹介されるようになりました。口コミが広がり、今や数か月先まで予約が埋まる繁盛ぶり。コースにパン食べ放題が付いており、高加水でもちもち食感のパンが食べられると評判です。ホイップバターやチーズ、明太バターをトッピングしても楽しめます。これにナチュラルワインを合わせるのが若い女性を中心にウケているようです。

「パン食べ放題」は口コミの強いフック

ちなみにパン”飲み“ではありませんが、サンマルクホールディングスが手掛けるベーカリーカフェの新業態「BAKERY RESTAURANT C 渋谷マークシティ店」では、最近、期間限定で17時以降にパンの食べ放題企画を打ち出したところ、瞬く間に行列ができていました。カフェはどこも激混みな渋谷で同店はゆったり空いている「穴場」だったのですが、この食べ放題でかなりの集客力を発揮しています。サンマルクはパン食べ放題付きランチがウリの「バケット」という業態も展開しており、「パン食べ放題」の強さをよく知っているはずです。

お得さを訴求する「パン食べ放題」は強いフックになるようです。

「BAKERY RESTAURANT C 渋谷マークシティ店」。17時過ぎに店前を通ってみたら、超並んでいた

メニュー表に「トースト」カテゴリが登場

2月末、新宿にオープンしたばかりの「ビストロ リタ」でおもしろいメニューの見せ方を発見しました。新宿の「つむぎ堂」「ヒロキ倶楽部」や恵比寿「ひまり堂」など、20代から絶大な支持を得る居酒屋を展開するLINK STYLEの新店舗。このグループ店を見ればいま若者の心をつかむ店づくりがわかると言っても過言ではありません。同店はパン飲みを強く打ち出しているわけではありませんが、フードのメニュー表には「トースト」なるカテゴリがありました。「タパス」「サラダ」「ライス&パスタ」といった定番カテゴリの中に、パンを使ったメニューが「トースト」として独立してカテゴライズされるというのは新しい流れだと感じました。この「トースト」カテゴリには、「林檎バター」「生ハムのムースと焼き立てパン」「とうもろこしのブルスケッタ」の3品。「とうもろこしのブルスケッタ」を実際に食べてみましたが、ワインを誘うトリュフの香りを利かせたとうもろこしムースの美味しさもさることながら、もちもちの食感のパンも印象的でした。こうして部分的にパン飲みを打ち出すのも大いにアリだと思います。

「ビストロ リタ」の「とうもろこしのブルスケッタ」。フォカッチャ自体がもちもちでおいしい

「パン食べ放題」に加えて、日本人が大好きな「もちもち食感」というのも人気のポイントと言えるでしょう。

大阪では既にトレンドのパン飲み、東京にも

「パン飲み」と聞いて、日本人の感覚として炭水化物をつまみにするのはあまりピンと来ない人もいるかもしれません。ごはんや麺はどちらかというと飲んだ後の「シメ」に食べるイメージです。ただ、パンとワインの相性は抜群。はるか昔の紀元前にキリスト教の聖書でイエスの身体はパン、血はワインであると言及されるくらいですから…。

もともと大阪の「立ち飲みベーカリー うらパネ」など、他エリアでは既にパン飲みの人気店が登場していましたが、今年くらいから東京でもいよいよパン飲みの流れがやってきたように感じます。近年の飲食業界の傾向としてイタリアンやフレンチのような洋業態よりも和の居酒屋業態の方が強い、と話す飲食店経営者は多かったですが、今のこのパン飲みの勢いを見ているとパンをフックに洋業態も負けじと盛り上がっています。ワインを出しているお店は、ぜひパンにこだわってひとつのフックにしてみるのはいかがでしょうか。

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