新・編集長コラム

突然SNSで発信を始める飲食店オーナーが急増…!?その「ワケ」とは?

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


採用のために社長自らが発信

近頃、突然SNSで発信を始める飲食店の経営者が増えた気がします。しかも「そういうの苦手なんだよね…」と言いそうなタイプの人が、突然に、です。発信の内容は、会社の経営理念や自身の飲食店に対する思いや考え方がメイン。ショート動画で本人が出演して語っていたり、Xでつぶやいたり、noteにて長文でまとめたりとツールや手段は様々です。

店の集客のためにやっているのなら、もっと料理や内装など店のウリをアピールするはずです。経営者が自身の考えを発信する投稿は、そこまで集客につながるとは思えません。彼らは一体何のために発信を始めたのでしょうか?それは、投稿内容を見ればわかります。採用です。経営者が自らの言葉で発信することで見ている人に「ここで働きたい」と思わせ、採用につなげようという狙いなのでしょう。決して、突然「オレの経営論を聞いてくれ!」と承認欲求が爆発したわけではなさそうです。コンテンツとしてしっかりと作り込まれたものを投稿していることも多く、裏方に発信のアドバイザー的な人が入っている気配がする場合も少なくありません。

集客から採用へ予算が流れている

飲食店のお悩み二大巨頭いえば「集客」と「採用」。集客がしっかりとできていれば、次なる展開に向けて人が必要になり、採用に目が向くのは当然の流れです。昨今の人手不足により、最近はプロモーション予算が集客から採用へとシフトしてきていると感じています。しっかり集客ができている店では、それまで集客に使っていた予算や労力を、採用のための発信にシフトさせ始めています。

人手不足が深刻な今、もはや単に求人を出しても効果は出にくくなっています。待遇の改善にも限界があります。そこで、経営者発信という手段が注目されているのです。「社長の言葉はなぜ届かないのか? 経営者のための情報発信入門」(著:竹村俊助、総合法令出版)という本では、経営者自らが発信することの重要性が説かれていました。対企業ではなく対経営者の方が、ファンが付きやすい。特に「人」が大事な飲食業であればなおさら、求職者は一緒に働くトップの顔を知りたいと思うはずではないでしょうか。事業を加速させたいなら、経営者は「苦手だから」「恥ずかしいから」と言っている場合ではないのです。「炎上したらどうしよう」と過度に心配することや、「インフルエンサーにならなくてはいけないのか?!」と思うことは誤解だという旨も同書で説明されていますので、採用のために発信を考えている飲食店オーナーは一読してみるといいと思います。

表に出て発信できるオーナーが強い時代になる

「発信が苦手」「やり方がわからない」というのは今の30代40代の飲食店オーナーに多いように思います。年代的にインターネットの黎明期を経験してきており、下手な発言は死活問題という意識がある。また、近年はコンプラ強化でパワハラなども問題も取り沙汰されるようになり、30代40代という上の立場にいることで下の立場の人へのハラスメント発言には気を付けている意識を感じます。また、それまで年を取ったり成功をしたりすると、人はどうしても自分の武勇伝を語りたがるものですが、令和の価値観として「目下に一方的に自分の話をするのはダサい」というのが抑止力としてあるような気がします。

一方で20代の若い経営者は息をするように発信をします。デジタルネイティブで早い段階からSNSに触れてきて、自分の考えを発信することに抵抗がありません。目上への配慮はありますが、自分達が最年少であるため下へのマウントを気にする段階にはなのでどんどん語る。

もちろん個人によるところが大きく、全員がそうというわけではありませんが、20代の若いオーナーには引き込まれるようなSNS発信をする人も少なくありません。インスタにピリピリと切り取れそうなくらいの細切れの表示になる頻度でストーリーズを上げており(いわゆる切り取り線)、見続けているとその人の考えが浸透してきます。それを見て「この人と働きたい」と求人が集まるのではないでしょうか。

発信のアドバイザーが入っている場合もありそうだ、と先述しましたが、若い経営者はそういったものは入れずに自分の感性のみで上手く発信をやってのけています。自分でやるからもちろん予算はかからない。発信ができるようになれば自然とファンが付き、採用にも効くし、それ以外のビジネスチャンスも転がり込んでくるかもしれません。中には「表に出ない」というオーナーもいますが(もちろんそれも考えの一つで否定していません)、これからは自らが会社の広告塔として表に出て、自分の考えを言語化し発信ができるオーナーが強い時代が来るのではないでしょうか。

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