TBSのお昼の番組「ひるおび」。ここの目玉企画「ハテナコーナー」は元気のいい企業に焦点を当てて特集を組む。これまで、エムグランドフードサービスの井戸実社長、ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長、居酒屋革命の天野雅博オーナーなどが取り上げられた。主婦ターゲットの番組だから、飲食店ものは料理かシェフがこれまで主役だったが、最近はこうした経営者たちが取り上げられるケースが多いという。視聴率もそれなりにいいのだろう。再放送される例も多い。「餃子の王将」がブレークしたのは、2008年7月のTV朝日「アメトーーク」。“餃子の王将芸人”が同店をいろんなマニアックネタで取り上げたことから、ブログや口コミで大きな話題になった。それをきっかけに、王将フードサービスの大東隆行社長が「カンブリア宮殿」はじめ、いくつかのビジネス番組に登場し、その庶民性が人気を呼んだ。その結果、2006年には倒産寸前といわれた「餃子の王将」の業績がV字回復し、店頭には行列が絶えない状況にまでなった。裏では大手PR会社が動いたという話もあるが、いずれにしても、こうした“スター経営者”のいる飲食企業がにわかに注目を集めるようになったのは確かだ。ほかのTV番組では、日テレの「サンデーNEXT」、TBS「サンデージャポン」などの情報バラエティ番組、「カンブリア宮殿」のテレビ東京系では「ソロモン流」、「ガイヤの夜明け」「ルビコンの決断」などで飲食店オーナーや外食経営者が続々と登場している。また、「スーパーJチャンネル」などのニュース番組にも彼らが取り上げられるケースが増えている。一方、昔流行った「料理の鉄人」のような“スターシェフ”を取り上げた番組は少なくなった。「ミシュランガイド」進出の頃、一時的にブームになったものの、いまやシェフ番組といえば、長寿番組の「チューボーですよ!」ぐらいしか浮かばない。視聴者も料理やシェフだけが出てくる番組に飽き、繁盛店や急成長外食企業を動かしている経営者の人物像や仕掛けの裏側などを知りたがっているのかも知れない。先日行われたエーピー・カンパニーの溜池山王店のレセプションには、ゼットンの稲本健一社長、松村厚久社長、井戸実社長などTV番組でよく取り上げられる“スター経営者”たちが大集合した。当日はTV取材が入っていたが、米山久社長もその仲間入りをするのだろうか。“スターシェフ”から“スター経営者”の時代へ―。TVメディアのトレンドも確実に流れが変わってきた。
コラム
2010.06.03
“スター経営者”の時代!
「昔はスターシェフ"がテレビに派手に取り上げられていたのですが、いまは"スター経営者"が引っ張りだこですね!」と、あるライターに言われた。確かに、TV番組で飲食店オーナーや外食経営者が登場する機会が増えた。"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。