リーマンショック以降のデフレ不況が続き、消費者は節約行動に飽きてきたのだろうか。あるいは、ベタコテ系や食材追求型の業態に対してそろそろ飽和感が出てきたのかもしれない。このところ、“楽しみ、遊ぶための空間”としての飲食店の役割に再び注目が集まってきた。「安くて旨い店」への志向は変わらないが、ただ旨いメシを食べるだけでなく、飲食空間にいる数時間をとにかく楽しく過ごしたいというニーズが高まってきたのだ。人との出会いやコミュニケーションを求めて立ち飲みや横丁へ行くというのも、その現象の一つかもしれない。最近、新しく登場し、人気を集めているのが“昭和歌謡曲バー”や“セクシー居酒屋”、そして“歴史テーマの店”、究極の郷土テーマの“阿波踊り居酒屋”などの“ニューエンタメ系”飲食店である。
“47都道府県47店舗”の展開を目指しているエイチワイシステムは、5月11日、徳島県テーマの店「阿波おどり」を銀座コリドー街にオープンした。“マネーの虎”として知られる社長の安田久さんは5年前に高円寺で焼肉店を経営しているときに、“高円寺阿波踊り”を初めて見て、「これは凄い。いつか店内で阿波踊りを実演できる店をやりたい」という夢を抱いた。それから5年、やっと阿波踊りの実演ショーができる規模ぼ170坪の物件を銀座コリドー街で見つけ、その夢を実現することになった。徳島県知事を口説き落とし、知事トップダウンで本場徳島の二つの公式な阿波踊り団体に協力を取り付け、そのルートから「東京高円寺阿波踊り振興協会」所属の27連から“日替わり”で踊り子の派遣を受けるという快挙。11日のオープン時には複数の連から44名の踊り子が一日2回のショータイムに30分ずつ店内で踊った。最後には客も一緒に踊り、店は“和製ディスコ”状態に。安田さんは「これまで監獄レストランや秋田なまはげなどのテーマレストランを手がけてきたが、今回の阿波踊りは最も手ごたえがあります」と自信満々。たしかに大ブレークの予感がする。
新橋で話題なのは、70年、80年代の歌謡曲バー「なつかしや」。お酒を片手に懐かしい歌謡曲をリクエスト、当時のライブシーンをモニターで眺めながら在りし日の青春を思い出すというコンセプト。客の中には涙を拭いながら見入っているオジサンたちも少なくない。新宿三丁目に「ヤングマン」、西新宿大ガード近くに「昭和ブギ」という同様な店もオープン。この業態は、著作権問題がありそうだが、“ポスト・カラオケ”として一気に広がりそうな勢いだ。そして“セクシー居酒屋”。その代表選手は「居酒屋はなこ」だが、弱冠26歳のセクションエイト横山社長が数年間で15店舗展開。今年に入ってからは毎月のように新店舗をオープンしている。セクシーなコスチュームの女性スタッフがホール接客にあたる居酒屋で、料理は北海道海鮮系、客単価は4000円程度と決して高くない。駅前飲食店ビルの空中店舗から撤退する居酒屋の“居抜き開業”で低投資急拡大を続けている。ダイヤモンドダイニングのコンセプトレストラン各店舗も“ニューエンタメ系”と言っていいだろう。最近の“龍馬”をテーマにした店はマスコミの寵児。連日、予約が取りにくいほどの盛況だという。こうした、“ニューエンタメ系”飲食店は、“ポスト・カラオケ”“ポスト・キャバクラ”“ポスト横丁”的なニーズに応える店ともえいえる。団体・グループ客の集客にも効果を上げているようだ。