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コラム

「物件ありき…」の時代に重要なこと

飲食業界関係者と話していると、最近の専らの関心事は「とにかく物件ありき...」ということ。昨年のリーマンショックによる金融悪化によって不動産市況は壊滅的打撃を受けており、それが店舗物件流通の環境をも大きく変えようとしている。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


大きな変化の一つは、不動産ファンド系企業の相次ぐ破綻によって、新築商業物件の流通がピタリと止まってしまったこと。都心で開発されたファンド系 の新築ビルは竣工はしたものの、テナントが埋まらないというケースが続出している。飲食店テナントミックスビルとして、利回りを弾き、テナントを募集した ものの、思惑通りの家賃ではどこも相手にしない。時間だけが虚しく過ぎ、ビルの売り先が見つからないどころか、本体の資金繰りがキツくなるという始末。家 賃を下げて投売りしても、テナントのニーズを無視して設計した物件が目立ち、なかなか決まらない。困り果てて、「なんとかなりませんか…」というような話 が筆者にまで入ってきたりする。こういう例がゴロゴロしているのだ。 彼らは、飲食というものを甘く見ていた。いま飲食マーケットがどうなっていて、テナントオーナーがどんなニーズかを知ろうともしない。家主とビル転 売先の利害しか考えず、見た目はカッコいいのだが使い勝手の悪い物件を野ざらしにしてしまっているのだ。3月10日、不動産ファンド系の大手、パシフィッ クHDが会社更生法を申請して破綻したが、この3月期を乗り切れない企業も少なくないと見られている。「不動産ファンド時代の終焉」という声も出始めた。 それは、やはりマーケット、エンドユーザーの声を聞かず、マネーゲームに走ったツケがいま出てきていると言ってもいいだろう。 不動産ファンドとは真逆に、徹底してマーケットを掘り起こし、テナントの財布の中身まで知り尽くして、物件開発、開業支援を続けてきたサブリース業 者たちも再編の渦にあるようだ。必ず話題に上る「T社」を筆頭とした“業務委託型”のビジネスモデルは、経営センスのあるスタートアップ企業には歓迎すべ きものだったが、職人型や独立開業系の個人オーナーには向いていないという一面が、この不況が進む中で顕在化してきた。業者側もそれを承知で、いまはリス クへッヂとして、かなりオーナーを選別する動きを強めているようだ。かつて関西系の「W社」が結局、この矛盾に直面し、飲食開業サポート事業から撤退した 例があるが、その歴史を繰り返さないためには、新たな取り組みが必要だろう。 そうした中で、「ABC店舗」や「ぶけなび」 のような「居抜き物件情報サイト」によるマッチングビジネスが注目されてきている。開業出店希望者にとっては、サイト検索やメルマガ購読によって自分で判 断できる。店舗物件が供給過剰、買い手市場になってくれば、「自分で好きに選べる」ことが重要になってくる。「まずは物件ありき…」の時代である。本当に 有利に開業出店するためには、確かに物件選びが最大のポイントになる。そのためには、物件提供に関わる“業者選び”の目をもつことが大事になってきたとい えよう。

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