そうした混沌とした市場の中で、あたかも“デファクト・スタンダード”といわんばかりの新興外食企業が暴れまわっている。外食業界における“ディファクト”とは日本マクドナルドの創業者・藤田田氏が残した名言「勝てば官軍」である。ロードサイドの撤退物件を格安で手に入れて、ステーキチェーンを展開するエムグラントフードサービスや既存店を一気に“均一低価格”の居酒屋に切り替えた三光フーズマーケティングは、不況を逆手にとった奇襲攻撃で「勝ち組」の名乗りを上げている。もちろん、彼らが勝っているうちは「官軍」としてリスぺクトもされよう。しかし、この外食市場で、「勝ち続けること」は容易なことではない。また、大きく勝てば勝つほど、負ける確率が高くなる。
なぜならば、外食チェーンとして店舗数が増えても、店と顧客、企業と地域とのロイヤリティが担保され、ブランドとして根付くまでは、「勝利」と呼べないからだ。古き良きチェーンストア理論が有効だった時代はともかく、顧客の外食ニーズの多様化、高度化、細分化が進んできた現在のマーケットにおいて、“ローコストオペレーション・プロダクトアウト型”システムは成長スピードは速いだろうが、すぐに成熟期を迎えるリスクが高いのではないか。いま“ニューチェーンの時代”といわれる。これまで外食産業をリードしてきた大手チェーンは、日本マクドナルドは別格として、年商1,000億円以上の新興企業はゼンショーにしろ、コロワイドにしろ、M&Aで事業を拡大してきている。私に言わせれば“仮需型成長”であり、デフレ競争、サドンデスゲーム時代の彼らの姿は“砂上の楼閣”と思えてしかたがない.。マネーゲームの時代は終わったのだ。
では、これから求められる“ニューチェーン”とは何か?それは、店と顧客、企業と地域とのロイヤリティが担保された“実需型”成長を遂げているところである。そして、“ローコストオペレーション・マーケットイン型”の出店戦略を描いているところだろう。「なんとなく伸びてきた」「場当たり的に出店を増やしてきた」ような企業は市場から早晩退却させられるに違いない。「一業態一店舗ずつ地域、顧客の支持を得て、したたかに伸ばしてきた」企業が最後には勝ち残るのではないか。そういう視点から、新興組VS老舗・大手組の構図が今後どのように展開していくのか、あるいは業界再編がどにように進んでいくのかを冷静に見分けていくことが重要だろう。先が見えにくい時代だからこそ、真贋を見誤ってはならないだろう。