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コラム

「肉業態」進化、第二ステージへ!

肉業態の進化が続いている。最近の飲食マーケットにおいて、熟成肉を含めた新しい業態が熱くなってきた。なかでも、注目はグラム売リのカジュアルステーキ業態の台頭だ。独自の入手経路により、単価を低くした肉をグラム売りする、オーダーカットシステムのガッツリ系のステーキバル業態が増えている。そのほかの肉業態の多様化も追ってみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


このコラムで肉業態について書いたのは、2013年6月以来。前回のコラムのタイトルは、「2013年は『肉業態進化元年』!」。冒頭で、こう流れを整理した。

「今回の肉業態ブームは大きく分けて、6つの流れがある。
1、“ガッツリ系”の肉バルスタイル(ガッツリ肉とがぶ飲みワイン)
2、熟成肉とワインスタイル
3、新・創作肉料理スタイル(赤肉、ホルモンの新しい提供法)
4、高級素材のカジュアル提供タイル
5、肉×日本酒業態のスタイル
6、馬肉、ジビエの新・創作スタイル」

おおよそ、この流れ通りに来た。1の「肉バル」業態もあちこちに増え、いまは少しアッパーでしっかりした料理を出す「肉ビストロ」業態にシフトしてきている。マーケット全体が“プチリッチ”“職人(クラフト)志向”に変わってきた流れに沿うものだ。2の「熟成肉」については、まさにブームの勢い。2014年の肉業態トレンドのメインストリームに踊り出してきたと言ってよい。4の「高級素材のカジュアル提供」。これは「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」が火をつけたわけだが、私が唱えてきた「ハイカジ(ハイクオリティカジュアル)」の流れにも合致するトレンドである。このスタイルから一気に展開を始めたのが、ペッパーフードサービスの新業態、立ち喰いステーキ「いきなりステーキ」。昨年の12月に銀座四丁目に1号店をオープンしてからというもの急展開し、9月現在で12店舗に拡大した。塊の肉をその場でカットし、焼き上げるリブロースステーキを1g5円、ミニマム300g1500円から破格値でグラム売り。しかも立ち喰いというファストフード業態。さらにワインも飲める立ち飲みワインバルとしても使える。肉はオーストラリアで日本人向けに育てた牛で、同社のステーキ業態「赤坂くに」では1g10円で出しているものと同じ。

こうしたカジュアルステーキの店が増えている。中野にオープしたかたまり肉とガブ飲みワイン「meet meat5BAL」。国産牛のシンタマと呼ばれる部位を、かめのこ、しんしん、かぶり、ともさんかくの4つの部位に別けたステーキ、ブロックグリル150gからを1280〜1680円で提供。熟成肉ステーキ業態も登場してきた。ダイゴインターナショナルが、銀座ファイブの地下に「ステーキバルDAIGO」をオープン。40日間熟成のいろいろな部位の塊肉のステーキが味わえる。六本木アークヒルズサウスタワーに門崎が運営する黒毛和牛の熟成肉「肉屋 格之進F」がオープン。2月には、NYの銘店「WOLFGANG’S STEAK HOUSE」が初上陸。最高級品質の28日間熟成したプライムリブステーキが話題となった。急展開しているのは「うしごろバンビーナ」グループ。最高級クラスの肉国産A5黒毛和牛の処女牛の極上希少部位を少しずつ盛った人気の特選盛りが2500円が売り。5号店の渋谷桜丘店は1階にスタンディングバルスタイルを導入、「バンビーナハンバーグ」や「バンビーナ・ビーフ・バーガー」も提供しる。

日本橋「コレド室町2」の地下フロアに、熟成肉のトップであるナカセイの「サカナの中勢以」が出店。高質熟成肉を自家熟成する高級精肉店としても知られ、熟成肉業態を手がける飲食店主の多くが足を運ぶ。そんなナカセイが今回出店したのはお酒の肴として手軽に買える熟成肉や加工品のショップと味わえるイートイン形態。通路に面した熟成庫に熟成肉が下がり、その存在をアピールする。ランチには、具材、焼き方、ソースまでが選べる40日熟成豚肉のオーダーハンバーグを提供し、夜は熟成生ハム、ローストビーフ、尾崎牛の焼き肉などと厳選日本酒を揃えたチョイ飲み処となる。わずか7席のハイカウンターの店であるが、気軽に熟成肉を味わえるのだ。神楽坂ポルタにオープンした「薪焼きKICCOLY」は、4週間熟成の国産和牛の熟成肉と朝採れ野菜がコンセプト。「串揚げバルBAKUBAKU」など8店舗を展開するSERVERSの新業態。トータルウェルは、同社にとっての新業態への挑戦となる「ビストロ熟成(なれにく)」を新宿南口にオープンさせた。店内に自家製熟成庫を持つ新宿で始めての熟成肉専門店だ。

「熟成和牛焼肉エイジング•ビーフ」や「グリルドエイジング•ビーフ」業態などを展開する新和の新店「グリルドエイジング•ビーフデリカテッセン淡路町」にも注目。全面ガラス張りの店は通りに向かいいろいろな部位の熟成肉が並ぶショーケースはまさにデリカテッセン風。肉を焼くグリルスペースも見え、カジュアルな肉バルといったイメージで入りやすさがある。熟成肉は当然として熟成肉の生ハムやシャルキトリーなどタパスメニューも充実させた。独創的な店作りで注目の宮下企画が新宿3丁目にオープンした「パンとサーカス」。35日熟成の和牛とジビエ肉が味わえるネオキャバレーという個性的なコンセプト。熟成肉は豚、鹿もあり、ラクダ、熊といった珍しいジビエも揃う。熟成肉とジビエの肉盛り、名物1ポンドの熟成肉ステーキと専門店とは違うバラエティさ。

京都に本店を構え、京都4店舗・大阪1店舗・名古屋1店舗と展開して話題の超・熟成牛専門店「听(ポンド)」が東京初進出となる1号店「炭火ステーキ 听(ポンド)銀座店」をチアーズ銀座8階にオープンした。同店のためだけに特別に飼育された鹿児島県・平松牧場の和牛「グランド・マザー・ビーフ」を、“熟成マイスター”の澤真人氏監修のもと、温度・湿度・微風を徹底管理した究極の熟成方法「ドライ・エイジング」で45日以上熟成させることで、旨味を引き出したものを「超・熟成牛」と呼ぶ。人気は「骨付きリブロース」(1枚 1ポンド 7800円)。「サーロイン」はじめ、希少部位などは、「1ポンド(450g)」、「1/2ポンド(225g)」、「1/4ポンド(120g)」で注文可能。焼く前に客の前で肉の解説と確認を行なった後、肉の中心温度を常温に戻してから、“焼いて、休ませて”を何度か繰り返して焼き上げるため、提供まで30~40分かかる。いろいろな部位も1/4ポンド単位(1600円~)で選べる。6月に開業した虎ノ門ヒルズには大阪に本拠を置く牛心が「熟成肉専門 但馬屋」がオープン。こちらも高級店だが人気を呼んでいる。神戸からはローストビーフ丼とステーキで有名な「レッドロック」が高田馬場に東京1号店をオープン。地方の肉業態の名店が続々と東京進出を果たしているのも注目だ。

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