コラム

いま「日本酒」はどう変わっているのか?

日本酒の世界が大きく変わろうとしている。酒造りの先端を行く蔵元たちは、日本酒をどう捉え、飲食店にどう売ってもらいたいのか。その熱いメッセージは、日本酒の新しい扉を開く鍵である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


4月17日、「日本酒新時代の到来!」をテーマとする第9回フードスタジアムセミナーを主催した。そこに登場した「醸し人九平次」の久野九平治氏(愛知県萬乗醸造)、「新政」の佐藤祐輔氏(秋田県新政酒造)、「貴」の永山貴博氏(山口県永山本家酒造場)の三人の蔵元が酒造りのポリシーを語り、飲食店に向けて熱いメッセージを投げかけた。この三人は日本酒業界では“新世代派”といわれる先端的な日本酒の造り手たち。まず久野氏は「お客様に、もっと日本酒を楽しんで欲しい。皆様のお店が日本酒を通して、もっと盛り上がって欲しい」と飲食店関係者に呼びかけた。そして、日本酒の「味」「香り」を決めるのは、「お客様目線で考えたら、料理のメインの食材と同じで、米である」と“酒米軸”で顧客に提案すべきだと主張。鑑評会などで重要視される“酵母軸”の考え方を否定した。一方、現役酵母中最古の「6号酵母」を生み出した新政酒造の8代目佐藤氏は、あくまで酵母にこだわったうえ、新しい酒を造ろうとしている。米は、秋田県産米のみを使用し、手間のかかる山廃を敢えてメインに。味のインパクトを捨てて、アルコール度数を下げることが目下のテーマ。「不利な縛りを自らにかけることで、技術上達を促しながら、蔵の個性をよりはっきりと打ち出す。伝統にこだわることで独特な存在感を醸し出したい」と佐藤氏。「貴」の永山氏は、「ガラパゴス清酒」から「スマートSAKE」へのシフトを提言。「醸造アルコールの添加」→「米・米麹・水で造られた世界共通の意味での『醸造酒』」、「米作りと酒造りは別のもの」→「米作りと酒造りを一つのサイクルと考える酒造り」、そして「過剰な濾過で、味を取り綺麗さを競う」→「原料由来の特徴を個性として認める」ことが日本酒新時代の条件と語った。では、彼らが提案する新しい日本酒の提供法とは何か。久野氏は、そのキーワードとしてずばり「脱・昭和」を上げる。つまり、「日式酒器のみで提供」から「純米吟醸以上の品をワイングラスで提供」。「一合売り」についても、もう明らかに今のお客様には、この量は多いです。お客様は言わないだけです。自分に合わなければ、この量は苦痛です」と言い切り、「ワイングラスなら、90mlで絵になり、一杯辺りも手が伸ばし易い単価になります」という。また、「銘柄の知名度だけで、ラインナップを選ぶ」「日本酒度・酸度など、メニューに数字を表記」するのも昭和の遺物。そういう発想は捨て去るべきだと提案した。永山氏も、「スマートSAKE」時代の日本酒の出し方は、「単一価格で提供(できれば500円以内で)」、「銘柄と価格を羅列したり、日本酒度、酸度を解説したりせず、店主が感じたお酒の特徴が店主の視点で書いてある」、「きちんと、お酒をお客様の目の前で注いでくれる」「日本酒を注文したら何も言わず和らぎ水を持ってくる」「こぼし酒でお得感を競うのではなく、お酒に合った酒器で品良く」と具体的に提言した。飲食店はこの新時代の日本酒提供法をすぐにでも取り入れて欲しい。 

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