コラム

「常識破壊革命」が始まった!

「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」のバリュークリエイトが進める価格破壊革命"が業界大きなインパクトを与えているが、"常識破り""業態崩し"とでもいうべき動きが広がってきている。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


「俺の~」系を展開するバリュークリエイトは高級食材を使い、原価率60~80%でも高回転率によって利益を確保するという小売業界的な発想で注目を集めている。同社とともに「外食アワード2012」を受賞した「ヴォーノイタリア」は、“時間無制限”食べ放題のイタリアンという業態で常識の壁を崩して話題になっている。これまでは、FL(原価率+人件費)のコントロールが外食の健全経営とされてきたが、その常識を破壊することで圧倒的な差別化を図り、マスコミでも話題となり、ヒット業態として認知される。京都を拠点に19店舗を展開する「ベジテジや」。2月に渋谷、池袋にほぼ同時出店し、華やかな東京進出を果たした。「包まぬ豚はただの豚!」というキャッチコピーを掲げ、コンセプトは“サムギョプサル革命”。20種類の豚肉、30種類のトッピング具材を用意、豚肉を包むサンチュとパチョレギ(ネギ)は食べ放題。早くも東京の2店舗は女性客中心に満席状態となっている。

神田ガード下の2.2坪の“立ち喰い焼肉”「六花界」。真ん中のテーブルを囲み、2台の七輪で知らない客同士がシェアしながら肉を焼く。ドリンクは店主が厳選した希少な日本酒。この狭小店舗で月に200万円以上を売り上げる。マスコミには一切出ない「竹ちゃん」グループ。元料亭やビル一棟を改装した200~300席の大箱居酒屋。エリアによって店名が違うが、メニューやオペレーションはほぼ同じ。現在、神楽坂2店舗、六本木2店舗、五反田、目黒、渋谷、原宿、表参道、池袋などで展開。生ビール、ハイボールが店によって違うものの80~290円。180円の店が多い。どの店も地元サラリーマンで賑わい、既存の大手居酒屋チェーンを脅かしている。渋谷にオープンしたばかりの「たんと」。こちらはなんと「生ビール96円」「角ハイボール48円」を売りにしている。お通し450円と一品料理を頼めば、何倍飲んでもOK。和洋折衷、メニューの数は多く、滞在時間を長くして料理で稼ぐ作戦だ。

渋谷桜丘に昨年11月にオープンした大箱の「テング酒場」。テンアライドの「天狗」の大衆酒場バージョンだが、ここは大胆にワインを導入、ワインに合う「生ハム」「パテドカンパーニュ」「海老のアヒージョ」などのメニューも取り入れている。テンアライドが発売元になて直接輸入しているワインを揃え、ボトルの最低価格は1280円。「生ハム」280円、「パテドカンパーニュ」340円など、他の和風メニューと価格帯も変わらない。驚かされたのは、イタリアの高級ワイン「バローロ」が4900円で“売り”となっていたこと。「テング酒場でバローロ!」というのはまさに、常識破壊の発想。下手にワイン酒場業態をつくるよりも、「テングでワイン」がオシャレでユニーク。客層もカップルや若者の姿が目についた。外食に業態の壁はない。客が楽しめば、常識にとらわれない自由な発想で壁を崩すべきた。しかし、継続し定着してこそ「革命」になる。それがビジネスとして成功してこそ「イノベーション」となる、ということを忘れてはならない。

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