コラム

2012年、春の商業施設オープンラッシュ!

三菱地所の「丸の内iiyo!!(イーヨ)」を皮切りに、2012年春の商業施設オープンラッシュが始まった。今年の目玉はなんといっても5月22日オープンの「東京スカイツリー」だが、商業施設ラッシュで街と人の動きがどう変わるのだろうか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


春のオープンラッシュをざっとあげてみると、3月2日にオープンした「丸の内イーヨ」、3月16日には「ユニクロ」世界旗艦店が入る「ギンザコマツ」、4月18日には屋上テラスに「bills」が入る「東急プラザ表参道原宿」、翌19日にはお台場フジテレビ裏に三井不動産の「ダイバーシティ東京」がオープン。巨大なガンダムがカフェとともにお台場に帰ってくる。4月26日には飲食業界注目の「渋谷ヒカリエ」がオープン、そして5月22日にはついに「東京スカイツリー」開業と同時に東京スカイツリータウン「東京ソラマチ」がオープンする。5月には、まだ詳細が発表されていないが、東京駅丸の内口側に建設中の旧東京郵便局「JPビル」もオープンする。オープンした「丸の内イーヨ」には二度訪ねたが、大手町側から地下に入り、イーヨのある永楽ビルの地下を抜けてそのまま新丸ビル地下を通り、東京駅地下街に出られる。その回遊性、最寄性がいい。新丸ビル地下には立ち寄り型の飲み食いできる店は少ないが、イーヨはその需要を満たす機能を備えている。ほとんどの店がオープンエアで、まるで横丁のような雰囲気を放っている。ランチタイムには他の店のメニューも持ち込んで食べることができるフードコートスタイルを導入。この点も新しい。夜は若いオーナーたちの店に活気がみなぎる。三菱地所のリーシングチームが発掘し、育ててきた「AWキッチン」「アキナイ」「炉端かば」「BOSSO」「ビーフキッチン」「ウェイブス」のほか、「なかめのてっぺん」も初デビュー。私はこの点に注目している。一方、三井不動産は「ギンザコマツ」と「ダイバーシティ」を手がける。「ギンザコマツ」は当初、新規飲食テナント誘致を考えていたが、既存施設とのバッティングや銀座エリアの飲食がオーバーストア状態にあることから断念したものとみられる。結局、東館をユニクロに一棟貸し、西館には「コムデ・ギャルソン」が入り、飲食フロアーは「ローズベーカリー」と小松ストア運営のバーが入るのみ。お台場の「ダイバーシティ」もこれといった飲食テナントは少なく、巨大なガンダムの模型とともに「ガンダムカフェ」がオープンするほか、そのガンダムを眺めながら飲食できるフードコートが目を惹くぐらいか。台場エリアの商業施設飲食はどこも厳しいが、三井不動産が今回狙ったエンタメ路線は究極の選択なのだろう。観光的魅力を打ち出し、東京スカイツリーエリアとのバス定期便運行など街どうしの回遊性を仕掛けていることも注目点だ。「渋谷ヒカリエ」と「東京スカイツリー」のテナント詳細はまだ発表されていないが、ヒカリエの飲食は地所系商業施設に出ているテナントとフロアーコンセプトをプロデュースした柴田陽子氏のつながりのルミネ系のテナントが多い。その点、他の都心型商業施設内飲食フロアーとの同質化は避けられず、私には新鮮味が感じられない。その点、東京スカイツリーは東武鉄道という、いわば都心型飲食施設では初心者が選んだテナント。それだけに何が飛び出すか、興味深いところだ。展望レストランの運営を任されたのは新興飲食ベンチャーのセリュックス。「暗闇坂宮下」の宮下氏が指揮をとっている。「東京ソラマチ」には、オザミグループや山形アル・ケッチャーノなども出店する。東京の街場で話題を提供しているニューフェイスの出店も取りざたされており、いまから目が離せないことは確かだ。丸の内、お台場、渋谷・原宿、浅草・押上…、今年の春は都内広域で街と人が動く。 

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