コラム

五反田戦争”と”秋葉原戦争”の行方”

五反田と秋葉原で新しい商業施設が同時期にオープンを迎えた。いずれも、地元のオフィスワーカーがターゲットだが、一気に飲食店がこんなに増えて大丈夫なのか?

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


五反田に4月23日オープンした東急電鉄初の女性ターゲット施設「remy」。 東京ミッドタウンも手掛けたCPC(コンテンポラリープランニングセンター)の杉浦幸さんがコンセプトメーキングとロゴ、SIなどを手掛けたようだが、 「Sign」を4階改札口前にもってきたり、テーマレストランに流れがちなDDにかなり作り込みながらも抑えた演出の「ドン・コナコネリー」(店名はDD らしいが)を出店させたり、「やさい家めい」も“大人な女性”を呼び込める空間にした。サムカワの「鉄板二百℃」は逆にカジュアルな鉄板居酒屋みたい。こ れも悪くない。「夢吟坊」はオジサン客誘導の逃げ道か。 DDによると、オープン初日は500名の来客、日商80万円を上げたとか。「大爆発ですよ!」と、松村厚久社長からはいつもの強気の口調で報告が 入ったが、他の店も概ね好調なスタートだったようだ。“五反田からOL流出を食い止める”という狙いはまずまず達成されそうだ。3月14日にオープンした 「アトレヴィ五反田」がちょっとイケテないだけに、「remy」独走という感なきにしもあらず、である。一方、秋葉原では、4月17日に「AKIBA TOLIM(アキバ トリム)」、4月24日に「chomp chomp AKIHABARA(チョ ムチョム秋葉原)」がほぼ同時オープン。「アキバ トリム」は阪急電鉄がつくばエクスプレス「秋葉原」駅に繋がる出入り口を含む用地に、駅施設と一体型のターミナルビルを建てたもの。「TOLIM」のOL はオフィスレディを指し、やはり「remy」同様女性ターゲットだ。 6階までが商業施設で、その上階からお洒落なデザインホテル風の「レム秋葉原」が開業。6階に入った「響」はホテルフロントと繋がる。23日19時 に「響」を訪ねたら107席が満席だった。5階の飲食フロアはゼネラルフード事業スタジオの石川幸千代さんがFC支援をしている沖縄「いちゃりば えん」が目新しいぐらいで、ほかはお馴染み「焼肉トラジ」「築地すし好」、ジローレストランシステムのイタリアン「ベッシェドーロ」、なぜか5階にハブの 「82 ALE HOUSE」が入っている。ちょっと苦しいラインナップだ。それに比べると、「チョムチョム秋葉原」はインパクトが大きい。ビルの外装がハデだし、ワンフ ロア120坪、地下1階から9階まで飲食店一色。2階には話題の「KICHIRI」、7階には「がんこ」、8階にはバル「バルakiba」と和食とお酒 「薩州 濵田屋伝兵衛」が入った。いずれも“大阪銘柄”である。8階は贔屓屋の流れをくむ大台フードプロジェクトという会社が運営。赤坂Lip同様、“関西パワー 爆裂”といった感じだ。 それにしても、「アキバ トリム」「チョムチョム秋葉原」の登場で秋葉原駅前にざっと3,000席の飲食店が一気に増えたことになる。業界筋の中には「完全にオーバーストアです よ!」とシビアに見る向きもあるが、「つくばエクスプレス」という交通拠点、“オタク”やアジアからの旅行客がたむろする電気街と区分けされた“大人のエ リア”を形成する可能性があり、「東の恵比寿・渋谷」といったイメージも生まれてくる。むしろ、上野エリアを凌駕する街の成長性を秘めている、と言えるの ではないか。総武線・錦糸町も大きく生まれ変わっている。新東京タワーも誕生するし、これから“秋葉原・錦糸町・押上エリア”という広域経済圏が誕生する 可能性も否定できないのではないか。

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