コラム再開にあたって、私のマーケットを見る視点、角度を改めて書いておきたい。まずは「三つの眼」である。俯瞰する「鳥の眼」、店やオーナー、メニュを解剖する「虫の眼」、そして時代の流れの先を読む「魚の眼」である。そして「トレンド」の意味をしっかり押さえる。トレンドは時代の変化、人々の空気を映す鏡。それを無視して、いまの消費者を満足させる店はつくれない。トレンドとブームは違う。トレンドは時代のニースの変化。ブームは一過性の現象だ。ブームを追いかけてはならない。トレンドには“波”と“軸”がある。時代のニーズが背景にあるのが“軸トレンド”、一過性の流行に終わるのが“波トレンド”だ。変化の時代に勝つには、この“軸トレンド”を押さえ、それをMDにうまく取り入れていくことだ。
コロナ禍の3年間は、そのトレンドさえ読めない不透明な期間だった。最も自由で、人々を歓喜させる飲食マーケットは規制に縛られ、身動きできない時間を浪費してきてしまった。このロスは大きいが、そのなかで生まれた新しい“軸トレンド”もある。セルフレジやモバイルオーダーなどのDXテクノロジー導入が当たり前になり、デリバリーや通販、冷凍食品ビジネスなどへの業種拡大チャンスも広がった。また、アルコール業態から食事特化型業態に新規進出や業態転換をする動きも出てきた。そんな中で、私が“これは強い!”と感じたのは「二つのTTF」です。自社、自店の強みを「徹底的(TT)に深堀り(F)する」こと、そして業態、メニューは「徹底的に振り切る(F)」ことです。この二つのTTF、福岡や札幌の繁盛店でみかけました。最近、出てきた大阪の「ぺろん」(ぺペロンチーノ専門店)もそうでしょう。
再開コラム一本目ラストで、「強い店の三つの原則S・N・P」を挙げておきます。
1、なぜ、その店が存在しているのかが明確。「物語」がある(story)。
2、なぜ、その店にお客様が来てくれるのかが明確。予約が3年先までいっぱいとか、圧倒的なリピーター、ファンが存在する。「必然性」がある(necessity)。
3、なぜ、その店は潰れないかが明確。マーケットの一過性の“波トレンド”や立地条件などにあまり左右されない強靭さ、「永続性」がある(permanence)。
「物語」「必然性」「永続性」。“S・N・P”だ。これが強さの秘訣だと思います。コロナ禍が明け、この三つの原則がない店は市場から淘汰されています。そしてこの原則に沿った強い店はさらに強く、出店意欲も旺盛です。私は新しく商業施設リーシングの仕事を始めましたが、いま若い世代の3~5店舗のスタートアップ、アーリーステージ前期世代が商業施設出店に意欲的です。とくに“ネオ渋谷系”。彼らは月坪70~80万を平気で叩き出します(月坪30万が繁盛店のバー)。半端ないです。世代交代の波が起きています。次回のコラムでは彼らをフィーチャーします。