鹿児島芋焼酎が火を付けた本格焼酎の大ブームから15~20年経っている。2003年にピークを迎えたそのブームは波が大きかっただけに反動も大きかった。街に溢れていた焼酎専門店や焼酎バーはほとんど姿を消した。もともと芋、麦、米、黒糖を原料とした本格焼酎は南九州、奄美列島の地酒だったが、ブームで全国に広がり、そしてまた“九州地酒”へとそのポジションは戻ってしまったかのようである。もちろん、大手の「黒霧島」の霧島酒造や「富乃宝山」の西酒造、「いいちこ」の三和酒類などはシェアを広げ、海外でも広く飲まれるメジャー酒になっている。
しかし、ここにきて市場に変化の兆しが出てきた。こうしたいわば「ファクトリー系」のメジャー焼酎に対して、手づくりスタイルの小さな焼酎蔵や大手でも手づくりで少量生産する「クラフト系」の造り手の焼酎に光が当てられるようになってきた。私はこれを「クラフト焼酎」と名付けている。2010年に「クラフトビール」の波が起こり、2011年の震災を機に小さな日本酒蔵を支援する「クラフトサケ(地酒純米酒)」トレンドが始まった。いまやその「クラフトビール」「クラフトサケ」は飲食店マーケットを席巻している。クラフト系の流れから、その次に来るのは「クラフト焼酎」だと私は予測している。
クラフト系ドリンクの流れから「クラフト焼酎」が来るのは必然だと見ているが、もう一つの流れとして、“ポスト「レモンサワー」ブーム”がある。レモンサワーブームは大衆酒場、ネオ大衆酒場トレンドに乗って大きな波となった。そのレモンサワーは「キンミヤ」を代表とする甲類焼酎のソーダ割りである。そこに生レモンが主役として割り込んできた。生レモンを大胆に使い、インスタ映えを狙った提供法なども登場している。この甲類サワーに対し、私がずっと注目してきたのは「乙類サワー」「乙類ハイボール」である。つまり、本格焼酎のソーダ割りだ。この飲み方はまだ焼酎業界では異端的である。やはりロック、水割り、お湯割りがスタンダード。しかし、これまでの飲み方では市場は広がらないし、女性や若者などへ訴求できない。