旬な店が集結した「atre恵比寿 西館」や、恵比寿ガーデンプレイス内に誕生したスタンド横丁「BRICK END」など、新店の話題に事欠かない街・恵比寿。大々的にPRを仕掛ける店や商業施設を横目に、この11月1日、ひっそりと暖簾を掲げた“住所非公開”の店がある。「ボデガス ガパ」や「居酒屋 佐藤」など、恵比寿で10店舗を展開するイーデザイン(東京渋谷区、代表取締役社長 佐藤充氏)がオープンさせた「今市(いまいち)」。もともと居酒屋として営業していた築50年ほどの建物を、外観そのままに2階建ての落ち着いた大衆割烹に生まれ変わらせた。
露出を控えるスタンスには2つの狙いがある、と佐藤氏は話す。「弊社の常連さんの中には、ありがたいことに1日4~5軒回ってくださる方もいる。そういう方々への新たな選択肢として、ふらっと来ていただいてもちゃんと席を確保できる状態の店がいいなと思っていて。もちろん、たまたま前を通りがかったという方も大歓迎。表向きは閉鎖的に営業するけれど、気軽に使ってほしい気持ちもある。こんな極端なことをやって、もしかしたら1年くらい赤字になるかもしれないけど、ニーズはある」。
また広告を打ったり、口コミサイトに掲載したりしないことで、社員教育の面でも大きな機会を得られるのだという。「メディアの評価が先行して流行るということは、誰がやってもいいということ。それでは個人の実力がつかないし、料理の発展性もなく、彼らが将来的に困ってしまう。会社としては『社員に活躍の場を提供する』ことを理念としているので、現場は大変だろうが、口コミサイトなどのツールに頼らず、権利権限を与えて責任を持ってもらっている」。
品書には「鰯のコンフィ 梅肉添え」(890円)や「白カビチーズと黒豆煮」(690円)、「モッツァレラチーズと無花果の白和え」(890円)、「イカ肝ソーズ焼きそば」(1000円)など、和食の基本に鮮度の高い感性を重ね、よりブラッシュアップした自由度の高いメニューが並ぶ。食材はすべて国産を使用する。「料理人の成長=店の成長」と話す佐藤氏。「発展性」をテーマに、ニンニクや酢、スパイスなど和食で敬遠されがちな手法も臆せず取り入れるという。料理を盛り立てる酒の柱に据えるのは、日本ワインだ。井筒ワイン(長野)や熊本ワイン(熊本)、10Rワイナリー(北海道)など全国のワイナリーから、20超ものバラエティ豊かな銘柄を随時仕入れる。大衆割烹でありながらあえて日本ワインを打ち出す意味について、佐藤氏は「恵比寿はお客さんと価値観を共有しやすい街だと思う。うちの店が狙う層は、日本ワインの良さや価値が分かる方」と話す。価格はグラス600円、ボトル4200円から。
来年には、これまで主戦場としてきた恵比寿を飛び出し、ベトナム・ホーチミンで海外初出店を果たす同社。今後の展開については「今年、最低賃金が25円上がり、弊社でいえば人件費は150万円アップする。単純に考えれば利益が150万円減るということ。それが分かっているのに普通の店を普通にやっていたら減益は避けられない。うちはリスクヘッジのことだけを考えている。つまり、東京のリスクを福岡や海外で補うということ。従業員を守るために会社を存続させ、今後、権利収入を掴んでいくためにもある程度のスケールまで展開していく」と話す。今宵も恵比寿のどこかでひっそりと暖簾を掲げる「今市」、あなたは見つけられるだろうか。
店舗データ
店名 | 今市(いまいち) |
---|---|
住所 | 非公開 |
アクセス | 非公開 |
電話 | 非公開 |
営業時間 | 17:00~ |
定休日 | 日・祝 |
坪数客数 | 15坪・30席 |
客単価 | 5000円 |
運営会社 | 株式会社イーデザイン |
関連リンク | イーデザイン(HP) |