ブームから成熟の時を経て、定着へ。そうした業態の一つに“オイスターバー”がある。決して一過性のブームに終わることなく、少しずつ少しずつ人々の食生活の中にそっと溶け込み、いまや外食の選択肢の一つとしてしっかりと根づいてきている。2010年、東京・恵比寿にオープンした「FISH HOUSE OYSTER BAR」もそうした店の一つ。この度、開業から約2年の2012年2月4日に念願の2号店として「FISH HOUSE OYSTER BAR 恵比寿東口店」をオープンさせた。 同店を経営するのはカスケード(東京都渋谷区、代表取締役:松下敏宏氏)。駅の反対側にある1号店はこれまで通りオーナーシェフの松下敏宏氏が、そして2号店はマネージャーの林泰宇氏が1号店より移り、それぞれが先頭に立って店を切り盛りする。松下氏と林氏は前職のオイスターバーで一緒に働いていた間柄で、松下氏の独立後、声をかけられた林氏が同店に合流。2年で2店舗と、恵比寿の地にオイスターバーの存在を着実に刻み込んでいる。 1号店はスケルトンの状態から作った20坪・30席の店舗なのに対し、2号店は元フランス料理店を最小限の手直しで用いた約10坪・15席の居抜き店舗である。松下氏は将来的に店舗を増やしたい意向はあったものの、まだ具体的な計画として捉えていなかったが、今回物件の話を持ちかけられてタイミングが合致したことから開業を決意。1号店が日によっては満席で入れないお客が出ることもあり、そうしたお客の受け皿的店舗の役割も果たす。 メニューは一部扱わないものもあるが、基本は1号店と同じ内容で構成。扱う生牡蠣の種類は1日7~10種で、“Today’s Oyster”としてメニュー表や黒板で告知する。例えば、オーストラリアの「キャビアオイスター」、アメリカの「至極」「イーグルロック」(各1P 480円、6P 2850円)。熊本の「天草」、兵庫の「相生」「室津」、三重の「浦村」、福岡の「みるくがき」、長崎の「九十九島」(各1P 380円、6P 2250円)、熊本の「天草2年がき」(1P 540円、6P 3200円)など。また、「オイスター盛り合わせプレート BIG(6種×1P)」(1人前2600円)、「オイスター盛り合わせプレート SMALL(4種×1P)」(1人前1700円)などの盛り合わせも用意。国産のものは産直で、海外産は輸入業者から仕入れ、年間を通して旨みの増したシーズンのものを供する。上記以外に、国産は女川、浜市、新潟、的矢、小浜、丹後、宮津、隠岐、福浦、宇和島、臼杵、五島列島、熊本、延岡など。海外産はアイルランド、ニュージーランド、カナダなど、他各地の牡蠣を取り揃える。 生牡蠣以外にも「完熟トマトのソースを乗せた焼き牡蠣」(840円)、「牡蠣のラクレットチーズ焼き」(940円)、「雲丹クリーム焼き」(1260円)など7種の“焼き牡蠣(2P)”。「旨味を凝縮させた牡蠣の燻製」(2P 980円)、「牡蠣と季節野菜のキッシュ」(840円)、「牡蠣のガーリックオイル煮(オイスターアヒージョ)自家製フォカッチャと一緒に」(1260円)、「牡蠣とベーコン、ホウレン草のスパゲッティーニ」(1580円)など、各種牡蠣料理を揃え、牡蠣の味わいを存分に楽しませ、生牡蠣が苦手なお客にも対応する。 牡蠣料理以外には「ニューイングランド風クラムチャウダー」(half 740円、full 980円)、「つぶ貝のタイハーブバターオーブン焼き エスカルゴ仕立て」(1580円)など6種の“シーフード料理”。さらには直接仕入れに出向き、味に絶対の自信を持つ鎌倉野菜を使った「鎌倉季節野菜のガーデングリーンサラダ」(half 740円、full 1050円)、「鎌倉より色々季節野菜の温野菜 バーニャカウダ仕立て」(half 980円、full 1580円)なども提供。特に鎌倉野菜は松下氏が味に惚れ込んで導入したもので、同店の名物の一つとして位置づけている。 客はまず生牡蠣と白ワインで舌鼓を打ち、続いて焼き牡蠣、牡蠣料理、鎌倉野菜の料理などへと移るケースが多い。アルコールも各種スパークリングワインや白ワインはもちろん、“牡蠣に合う飲み物”として「ミモザ(オレンジジュースとシャンパンのカクテル)」「ブラックベルベット(シャンパンと黒ビールのカクテル)」(各800円)などのカクテル。“強烈な香り際立つアイラモルトの王者をロックまたはソーダ割りで”と勧める「ラフロイグ」(980円)。そして、おなじみの「ドライシェリー」(750円)などを提案。 「オイスターバーというとどこか畏まった雰囲気の店が多く、もっと気どらずに利用できる店をつくりたい」との思いで「FISH HOUSE OYSTER BAR」を開業した松下氏。1号店は地中海の食堂風雰囲気に、居抜きの2号店はビストロ風の雰囲気と、ともに肩肘張らずに楽しめる空間を創出している。「駅ビル以外これといった商業施設もなく、それでいて飲食店だけで街が活性化している」との理由から出店場所は恵比寿を選択。1号店の物件探しに1年を要したという事実からも、そのこだわりが強く垣間見える。 冬がシーズンという牡蠣の性格上、季節で売上げに大きな差が出てしまうのもオイスターバーの特徴。1号店の場合、冬と夏の売上では実に2倍もの開きが出てしまう。それでも「牡蠣業態はハイリスク・ハイリターンだが、重要は確実にある」というのが同店の考えで、オイスターバーの可能性を確信。2号店の目標月商は300万円を掲げる。“ブームから定着へ”、オイスターバー業態の未来をより一層切り開く上においても、同店の取り組みに大いに期待が寄せられるところだ。
店舗データ
店名 | FISH HOUSE OYSTER BAR 恵比寿東口店 |
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住所 | 東京都渋谷区恵比寿1-23-16 |
アクセス | JR恵比寿駅より徒歩3分、地下鉄恵比寿駅より徒歩4分 |
電話 | 03-6408-5393 |
営業時間 | 平日17:00〜L.O.23:00、土曜・祝日15:00〜L.O.23:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 9.89坪・15席 |
客単価 | 6000〜7000円 |
運営会社 | カスケード |