ドライエイジング(乾燥熟成)と言われる技法で熟成した肉を“熟成肉”と呼び、日本でも数年前から話題となっている。赤身の肉が主流のオーストラリアやアメリカで、肉をより美味しく食べるために生まれ、広がっている技法だ。風力、湿度、温度を調整する専用の熟成庫のなかで、酵母菌をつけた肉を4~6週間ほど時間をかけ熟成させる。肉は麹、酵母が発酵し熟成が進むに従い、菌が活発化することで肉のたんぱく質をアミノ酸に変え、柔らかく旨味が凝縮するという。熟成中、肉は余分な水分を外へ出し、保湿のために必要な水分を内にとどめるため、ジューシーになるという。しかし、乾燥熟成後は当初の重量から40%減となる。乾燥熟成で20%、トリミングで20%カットと、歩留まりは非常に悪い。最近は国内でも熟成肉販売専門店がオープンしているが、確かなノウハウが確立されていないこともあり、自店での熟成製造は難しく、多くの飲食店では外から仕入れ、コスト高が欠点となっている。
そんな、数々の問題点を独自にクリアし、国内最大規模の熟成庫を店内に作ってしまったのが「Tsui-teru!」だ。店の入り口に設えた幅3メートル、高さ2.3メートルの大きな熟成庫には、熟成中の牛、豚、鹿肉が塊のまま、時間経過毎に並べられている。そのダイナミックな光景には誰もが目を奪われ、熟成肉にシズル感を覚える。牛肉にアメリカンビーフを使うことで、通常100g・2000円以上はするという価格を100g・740円という破格値で提供することを可能にしている。
同店を仕掛けたカオズの代表である鈴木潤一氏は、「肉をコンセプトとして、ちゃんとした料理を提供する普段使いのビストロ業態を手がけたかった」と話す。そして「いろいろと模索するなかで、まだ、日本で認知されていない熟成肉に興味を持ちトライすることにしました」とその経緯を話してくれた。日本国内では実際に熟成肉を提供する飲食店、資料が少ない中、自ら精力的かつ大胆な行動力で熟成庫、熟成肉に取り組み、オープンに至った鈴木氏の熱意が店の様々な点から感じられる。
「ついてる」に由来する店名の「Tsui-teru!」はオープンまで半年あるかないかの時間で、物件取得から115席という大型店舗の店づくり、予想以上に仕上げた肉の“熟成”を、すべてやり遂げた。実は鈴木氏は7年前、大手ゼネコンから飲食業界へと転身し、中野に1号店となる「ぢどり屋」を立ち上げ、2年後に「B級酒場」、さらに「ハヤシ中野荘」と中野で人気の3店舗を運営している。中野をよく知る鈴木氏、次の店は「気取らずにワインを楽しんで、肉もたっぷりと食べて、3000円で済むようなビストロを考えていました」と「Tsui-teru!」オープンの経緯を語る。
料理のおすすめはなんといっても、自家製の熟成肉炭火焼ステーキ。牛肉が200g・1480円。ブランドのやまと豚の炭火ステーキも200g・1480円と身近な価格。じっくりと時間を掛け、肉の旨味を引き出したステーキはナッツのような独特の香りが際立ち、長い余韻が楽しめる。また、シェフ渾身の大山鶏を使った「ロティサリーチキン(1羽2480円・ハーフ1280円)」もおすすめ。まる1日以上ハーブの下味をしみ込ませて、外はパリパリ、中はジューシーに焼きあがった一品。さらに、「名物田舎風豚肉のパティ」(480円)は、断面の大きいボリューム感のあるオリジナルパティで、とにかく肉料理満載というメニューの豊富さが自慢だ。
ドリンクは樽生ワインが赤・白ともにグラス(400円)、カラフェ(1200円)、ボトル(2400円)。樽生スパークリングはグラス(480円)、カラフェ(1400)と、気軽に楽しめるワインスタイルを提供している。ワインは他にもグラス(480円~)、ボトルは(2400円~)を用意し、産地も多岐に渡り多様なタイプを揃えている。そんな中には、今注目の良質な日本産ワインも置く。というのも、今後はワインを含め、国産の食材やワインへこだわって行きたいと考える鈴木氏の意向があるからだ。「国産の牛でリーズナブルに提供出来る熟成肉に挑戦したい」と考える鈴木氏の熟成肉への思いは深い。(※記載価格は全て税抜き。)
店舗データ
店名 | 肉食系ビストロ&ワイン酒場 Tsui-teru!(ツイテル) |
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住所 | 東京都中野区中野5-36-5 AKビル2F |
アクセス | JR中央・総武線、地下鉄東西線中野駅より徒歩3分 |
電話 | 03-5345-7215 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 57坪・115席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | ガオス株式会社 |