今年の4月、このコラムで「『クラフトビール業態』が動き出した! 」という一文を書いた。「クラフトビール業態」が「ワイン業態」「日本酒業態」に続く“価値軸ビバレッジ”の強力アイテムとして見直されてきた。とくに最近、若手の飲食店経営者が「クラフトビール」の魅力に着目し、開業するケースが増えてきた。いまや「地ビール」というマニアックなイメージはなく、様々な表現ができるクリエイティブで洗練されたニューウエーブスタイルが「クラフトビール業態」だと指摘した。そんなニューウエーヴの旗手となった店の一つが2月にオープンした虎ノ門の「クラフトビアマーケット」だった。カウンターバックの壁面に取り付けた「タップ」と呼ばれるミニサーバーが30個も並び、まさにクラフトビールらしいこだわりとライブ感、そしてオシャレ感を醸し出す店。料理もビストロ系で、ワインバルならぬ「ビアバル」という新しい業態コンセプトを打ち出した。「クラフトビアマーケット」は虎ノ門と新橋の中間あたりの隠れ家立地にポツンと佇む。しかし、18時あたりから予約の客が続々と押し寄せ、19坪の小さな店はたちまちパンパンとなる。まだ31歳のオーナーの田中徹さんはワイン系のバルをビジネス街立地で展開する企業出身。「ワインバルでやってきたことをクラフトビールでやっている感覚です。ターゲットもサラリーマンや外国人ビジネスマンです」と語る。19坪で月商800万を売る。同店がヒットした理由は、「高い」「マニアック」というイメージを一新し、30種類のビールをグラス480円、パイント780円均一で提供したこと。敢えて薄利多売を目指し、ランチ営業で利益をカバーするという戦略で成功した。2号店を来年3月にオープンする予定だが、立地に選んだのはランチ難民エリアの神保町。クラフトビールの価格は、これまでグラスで700~800円、パイントでは1,000円を超える店がほとんどだった。田中さんは、そんなマーケットに風穴を開けたのだ。「クラフトビアマーケット」のもう一つの強みは、タップサーバー機器が優れていること。クラフトビールは種類ごとの温度管理や毎日のパイプ洗浄が命綱になるが、田中さんが導入したのはブリュワリーエンジニアの堀輝也さんの機器。デザイン性も優れ、管理や洗浄もしやすいという。その堀さんの最新作を導入した専門店が渋谷に登場した。12月18日に文化村の裏手にオープンした「Goodbeer Faucets(グッドビア・ファウセッツ)」である。壁掛け型のタップではなく、Uの字型のカウンターに囲まれたアイランド型の40タップのサーバーは、ビジュアル的にも圧巻。床下にパイプを通すことによって実現した。オープニングレセプションには、クラフトビール業界のキーマンが集合した。同店も均一ではないが、自社ブランドの「ニード」はグラス500円、パイント780円で提供。他ブランドのものはグラス650円から。全種類ピッチャーも3000円からで、まさに“がぶ飲みクラフトビール”のスタイルを提案している。ブルワー関係者も多く顔を揃えていたが、ベアードビールのベアード・ブライアンさんは、「クラフトビールはこれから革命的に伸びますよ。我々生産者も協力していきます」と熱く語っていた。2012年は、“Craftbeer Revolution!”の元年になるかも知れない。■「『クラフトビール業態』が動き出した! 」記事⇒ http://food-stadium.com/blog/2011/blog1366.html■「クラフトビアマーケット」記事⇒ http://food-stadium.com/headline/001357.html■2012年1月30(月)「第2回フードスタジアム経営戦略セミナー『クラフトビール大研究』」開催!⇒ http://food-stadium.jp/service/next-q/
コラム
2011.12.22
2012年は「クラフトビール革命元年」!
ワインブームの影に隠れてあまり目立たないが、「クラフトビール」の業態も進化しながら成長し、大きな盛り上がりを見せ始めている。2012年は一気に専門店が増えそうな予感だ。
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。