インタビュー

自らの手で未来を創る”企業家”へー。
独自の哲学と経営理論を貫くグロブリッジ代表 大塚 誠氏インタビュー


好調な海外店舗、その秘策と事業ビジョン

fujiyama1—海外にも出店されていますが、初出店の地にオーストラリアを選ばれたのはどうしてですか。

大塚 うちのメンバーを行かせるのに、政治的不安とか治安悪い国は選択肢から排除しました。東南アジアなどもリサーチはかけましたが、はじめてのことなので、結論どこでやってもあんまり変わらないなと思ったんです。他社みんなが行くから、うちも行く、というのはやめようと考えています。たまたま僕の家族がオーストラリアに住んでいたこともあって、土地勘があったんです土地勘あるところはじめてみようか、くらいの感じですね。

—今オーストラリアは2店舗ですね。

大塚 厳密に言うと、2店舗と移動型店舗もやっています。フードトラックというより、屋台に近い感じの店舗です。それは4エリアくらいに出しています。

—この2店舗はどういった業態ですか。

大塚 フードコート内に出店した和食です。業績はすごくいいですね。リピーターが多く、ずっと伸びています。メニューは、カレー、牛丼、ラーメン、うどん、照り焼き丼など、ハレ系というよりは日常の和食ですね。

—単価と売上はどれくらいですか。

大塚 単価は10ドル〜11ドルくらいです。今豪ドルが90円切っているくらい(取材当時)なので、900円くらい。売上は、45000ドルと40000ドル弱、420〜430万くらいですね。

—もう一カ国はカンボジアですよね。こちらの業態は。

大塚 路面の和風居酒屋ですね。メニュー数は300ほどあります。ここのメインターゲットは、日本人半分、欧米人3割、現地人2割。焼鳥、唐揚げなど、日本より料理はおいしいかもしれません。スタッフは、日本人を社長で一人置いて、基本は現地採用です。カンボジアでも2店舗出しています。

—こっちは単価と売上は。

大塚 単価は昼夜やっているんですけど、7ドルくらいですね。なので、800〜900円ほど。そこで売上は2200~3000ドル。250~260万円ほどですね。

—カンボジアも業績は上々ですね。苦戦しているお店が多い印象ですが。

大塚 そうですね。僕らと同時期に始めたお店だと、僕らしか残ってないんじゃないですか。

—カンボジア、オーストラリア以外にも今後海外出店の予定はありますか。

大塚 そうですね。ニューヨークかサンフランシスコか、ロサンゼルスあたりを考えています。

—設立当初から海外出店は考えていたんですか。

大塚 もちろんです。

—“世界一”という目標を掲げていらっしゃいますね。

大塚 そうですね。「食」の分野は、国を問わずできるビジネスです。SCMという考え方からしても、世界で通用すると思っています。それを世界に試しに行っています。圧勝ですけど。(笑)

 

大塚氏の生き方論。「自らの手で未来をつくる企業家たれ」

—「食」という大きなテーマで世界一を目指す。その志を抱いたのは、ベンチャー・リンクにいらしたときですか。

大塚 ベースはもっと早い時期だと思います。きっかけはたくさんありました。本当の友達いないなとか、人に裏切られたり、自分の人生に自信が持てなかったり、目標なかったり。挫折していた時期が長かったんですね。
僕はすごくわがままな性格なんです。ガキ大将で、友達は多いと思っていたんですよ。でも、高校の同窓会も一回も呼ばれてないし。(笑)あんなに僕の周りに人がいたのに、僕がいないのに楽しいのか、ぐらいショックなんですよね。(笑)
自分て何なんだろう、なんで生まれてきたんだろう、何をするためにいるの、と考えるようになったんです。
学校を卒業して新卒で建設資材の会社に入社したんです。そこに4年ほどいました。その頃は毎日酒を飲んでいて、楽しいんですけど、ふと我に返ると30歳40歳になった自分が見えちゃうんです。会社にいる先輩を見てると、未来の自分が見えた気がして。自分には選択肢がほとんどなく、「俺ってこうなっていくんだろうな」って。若い時はガキ大将とかやって、でかいこと言ってたのに、いざ現実にぶつかると選択肢がない。人生ってこういうもんなんだって諦めかけていたんです。でも、転職して環境変えたらどうかなるかなと思って、ベンチャー・リンクに入社しました。

それで、ベンチャーリンクですごい衝撃を受けました。かっこいい人たちに会ったというか。こういう30代、40代になったらかっこいいなと思えましたね。もしかしたら選択肢があるかもと思って、努力をしはじめたんですよね。やっぱり未来に対する選択肢がなかったんですよね。どうしたらいいかわらかなかったんですよね。ベンチャー・リンクに入って、目標を決めて努力したらいろんなことが実現するようになりました。入社当時は、3年で独立すると決めていたんですが、入ってみたら自分の成長や仕事が本当に楽しい。気づいたら12年もいて、ベンチャー・リンクの社長になろうと思っていたんです。でも、業績が悪くなって、自分の部門がなくなったので、どうしようかと。それで仕事を通じて、自分の力で未来を創れるような人間を育てたい、人生の選択肢を持たしてやりたいと思って、会社を設立したんです。

—自分の手で未来をつくる人材を輩出するというのが会社設立の目的ですね。

大塚 そうですね。前職で働いているときは、酒を飲んでても愚痴しか言わなかったんですよ。「つまんねぇな」とか、上司の悪口とか。(笑)でも、ベンチャー・リンクでは、周りの人が愚痴を言わせてくれないんですよ。飲み会がすごく前向きで、全然面白くない。(笑)愚痴を言うと、「えっ、それ言ってどうなるの?」「いや、なんもないけど」てなっちゃうんです。(笑)
次第に僕も愚痴を言わなくなって、そうすると、次につながり出して、有意義に時間を使えるようになってきたんですよね。僕たちはそういう生き方を志向する人間をひとくくりで「企業家」って呼んでいます。企業家たちと一緒にいると心地がいいんですよね。いろんな問題を解決できるし、いろんな人を幸せにできると思えてきます。みんなが企業家になれば、世の中もっと平和になって、もっと挑戦できて、世の中の問題なんて企業家が集まれば、ほとんど解決するんじゃないかと思ってますよ。くだらないじゃないですか。小さなことで人生の10年15年無駄にするなんて。もっと明るく人生過ごした方が有意義じゃないですか。
だから、僕は企業家を育成するために、自分の頭で考えさせて、たくさんの成功体験を積ませる。挑戦して成功体験を積ませると、3年後、たくさん選択肢を持った人生になるんですよ。

—独立された方もいらっしゃるんですか。

大塚 そうですね。独立制度はありませんが、独立したメンバーは6〜7人いますね。この間、台湾の子もカフェを出しましたよ。「日子選食nichi nichi」(リーズシェンスー ニチニチ)というお店です。「毎日選んで食べよう」という意味です。台湾で採用して、うちで4年くらい修行していました。台湾で一番人気の食パンを、国内外から集めてきた最高級のバターやジャムを選んで、好きなトースターで焼いて食べる。そんな業態です。今後はもっと独立支援の仕組みをしっかり整えていきたいですね。

ー独立志向が強い社員が多いんですか。

大塚 意外にそうでもないんです。「独立していいよ」と後押しされても躊躇しませんか?頭で思っていても、相当覚悟しないとできないですよ。

—伸びている会社は、代表が社員から好かれていますよね。社員が会社を離れていかないという特徴がありますね。

大塚 みんな僕のこと大好きだと思うんですけど、そうあってほしいなんて思っていません。僕と仕事することが、自分の選択肢の中で最善だと思うならそれはそれでいいんですよ。だけど、好きだからいるっていうのは、本当にそれは最善なのか、という疑問が生じますよね。もっとチャレンジしろよ!と言いたくなります。居心地がいいのは僕あまり好きじゃないんです。依存してしまうじゃないですか。「きっと導いてくれる、自分の5年後10年後もちゃんと考えてくれてる」とか思っちゃうんですよね。もちろん考えていますけど、依存はするなよ、と。うちの最大のES(従業員満足)は企業家に育てることだと思っています。

—自立した生き方をする人を育てるためには、これからも事業を拡大していくという路線は変わらずですね。

大塚 海外も含めてそうですね。最近はグラミン銀行のムハマド・ユヌスさんが考案した「マイクロクレジット」という事業にとても関心を持っています。彼がバングラデシュではじめた事業なんですが、発展途上国の女性が、家族や子どもを抱え、働きに出るのも難しい、学歴があるわけでもない。与えられた仕事をやるしかない、という状況になってしまいがちです。それを利用して搾取する人たちがいて、永久に貧困から抜け出せない。その悪循環を断ち切るために、グラミン銀行がお金を貸して、借金を返させて、ちゃんとした職場で働けるようにしてあげる。もちろん貸したお金は返してもらいます。そうやって貧困層からの脱却をサポートしてあげるというのが、グラミン銀行です。僕らは、このコンセプトに影響を受けて、カンボジアで新規事業をはじめました。十分な資金がなくても飲食店オーナーとして開業できるようにサポートしています。ただ、カンボジア人はお金を持ってオーナーになるということを途轍もなく嫌がるんですよ。詐取されてきた歴史の中で、とにかくリスクを取りたくない意識が強いんですね。もう少し時代が変わってくれば、そういった意識も変わってくるだろうと思います。

本気で“世界一”を目指す意味

—今後も「食」というテーマを変えずに、飲食店のほか物販や流通にも事業領域を広げていくお考えですか。

大塚 その可能性もありますね

—最後に、今後の会社としてのミッションはなんですか。

大塚 会社のミッション、そうですね。僕らは、人間を育てたいと思っています。育てたいというよりは、自立した生き方をみんなにしてもらいたい。ただそれだけです。そのためには、人生には志が必要です。志という以上、そのテーマは大きい方がいいなと思います。目指すは世界一。それを目指す大きなテーマは何だろう、と考えるとそれが「食」だったんです。もっと大きなテーマがあれば挑戦したいですね。

seminar_title■大塚誠氏 プロフィール
1971年3月11日栃木県生まれ。大学卒業後、建設資材の会社に入社。2年間勤務した後、ベンチャー・リンクに転職。そこで“企業家”たちと出会い、「自分の手で未来を切り拓く」というグロブリッジ哲学の基礎が形成される。12年間、飲食店の業績改善指導を担当後、2008年独立。“食”で世界一になることを目標に掲げ、現在74店舗を国内外で展開する。

(取材=望月 みかこ)

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