阿佐ヶ谷に2016年5月2日にオープンした日本酒専門店「sake&coffee SUGAR(サケ&コーヒー シュガー)」(佐藤健一氏)。SUGARはそのまま店主の「佐藤」氏に由来する同店は、燗酒をおもとした日本酒と中華料理を軸にするエスニックテイストとの新しい出会いが楽しめると話題になっている。現在は夜のみ営業する日本酒専門店であるが、近い将来、昼間に珈琲を提供することを目指している。
上質な日本酒を提供する日本酒専門店は増えているが、こと燗酒においては、まだまだその魅力を知る機会を逃していることが多い。そこには過去の苦い体験から悪い印象を持つ人が少なくないからだ。だからこそ「美味しいお燗酒を飲んでもらえる場を作りたかったのです」と佐藤氏は出店の意義を話す。日本酒、特に燗酒の美味しさを啓蒙し続ける吉祥寺の銘店「にほん酒や」の出身でもある同氏らしい姿勢だ。青森出身の佐藤氏は、以前は全く異なるIT系の企業で働いていたが、違う世界を求め転職したという。食べる事飲む事が好きだったことから飲食の世界へと進みスキルアップするなかで、同郷で友人でもあった「にほん酒や」のオーナー高谷氏に誘われ「にほん酒や」へ。そこで、日本酒、特に燗酒の奥深い魅力を知り、エスニック料理とのマッチングを学んだという。それが現在の店の原点となり「中華は自分が好きということもありますが、『日本酒だから和食』ではなく、燗酒を引き立てるために、いろいろとやってもいいのではと思い、今の店の形にしました」と話す。「にほん酒や」の時代には共に働く仲間との間では常に「料理と日本酒の合わせかた」が話題であり、スパイスの使い方などを情報交換し、経験と知識を重ね蓄えてきたのだ。
同店で味わえる日本酒は基本、常温・燗酒に向くタイプを軸にしながらも、冷酒で飲む方が美味しいタイプまで約20銘柄を定番としている。冷酒向きでは火入加水「酉与右衛門」(亀の尾60%2014・800円/備前雄町70%2012・700円/山田錦70%2015・750円)。生原酒「花巴」(山廃四段仕込み700円/水もと・吟のさと27BY700円/花つどい900円)。一方、常温・燗酒向きには火入加水「いづみ橋」(海老名耕地27BY700円)、「十旭日」(生酛70%五百万石26BY750円)。生原酒火入原酒「秋鹿」(山田錦70%27BY800円)などに加えて熟成酒まで、数は多くはないがその時節の造りや、米違い、スペック違いなどを揃え、厚みをもたせている。同じ銘柄であっても温度帯による味の違いや料理による相性の違いが楽しめる。ほかに珍しい中国酒、梅酒も置くが、おすすめはすり下ろしたレモンそのままといった「すりおろしレモンサワー」(600円)だ。
フードメニューは定番的な料理に旬の素材を取り込んだものから構成されている。「ほたるいかとウド、分葱の腐乳を使った酢味噌和え」(680円)。「羊肉水餃子」(700円)、「豚バラ肉と梅菜の煮込み長芋マッシュ添え」(820円)、「牛ハチノスと牛すじの麻辣煮込み」(780円)などアジアンテイストが並ぶ。〆のものにはインドの長米であるパステマライス使用の「キーマーカレー」(800円)や、佐藤さんの妻、麻衣子氏の勤め先である「喫茶店仕込みのナポリタン」(860円)と個性的な一品が揃う。佐藤氏は日本酒と料理の合わせについて「酸っぱい料理には酸味のあるタイプ。油分の多い料理には火入れ加水したタイプでさっぱりと合わせるのがコツ」と教えてくれた。
同店は駅の南口にある飲食街の喧噪からは離れた住宅地へと向かう、かわばた通りのビルの2階に店を構えている。カウンターやテーブル、床など木の素材が存在感を見せるなかに壁、天井のブルーグレーが映えるモダンシックな空間は、和食屋であり洋食屋のようでもあり、またカフェのようにも感じられ、様々な表情を見せる。学生時代からそのまま、ネルドリップという丁寧な珈琲を出す吉祥寺の老舗の喫茶店で今も働き、将来は昼間に珈琲とスイーツを提供する予定という妻の麻衣子氏。二人の穏やかな人柄がそのままといった印象の店である。
店舗データ
店名 | sake&coffee SUGAR |
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住所 | 東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-34-9フォレストワン2F |
アクセス | JR阿佐ヶ谷駅南口より徒歩3分 |
電話 | 03-6279-9451 |
営業時間 | 18:00〜24:00 |
定休日 | 水曜 |
坪数客数 | 11坪・17席(カウンター7席テーブル10席) |
客単価 | 5000円 |
オープン日 | 2016年5月2日 |