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二人の若手経営者が、阿佐ヶ谷の飲食マーケットを席巻中。「神鶏(しんけい)」が5月17日オープンし、「新潟×タパス バル和(カズ)」が5月20日オープン

スターロードの入口付近にある「神鶏」は古民家風の外観
周囲の景色に溶け込むように作られた「新潟×タパス バル和」
「新潟×タパス バル和」のメニューの一つ「オイルサーディンの雪国マイタケマリネのせ」(600円)
「LIFE WITH 日本 WINE」(2900円)など、ワインは新潟カーブドッチワイナリーとの直取引。日によってメニューも変わる
「神鶏」の 戸田博章氏(左)と「新潟×タパス バル和」の井上和哉氏(右)

(取材=三輪 大輔)


阿佐ヶ谷駅の北口を降りるとすぐに、個性的な店が軒を連ねるスターロード商店街に出合う。大衆酒場やレトロな食堂などが並んでおり、地元の人を中心に連日、大きな賑わいを見せている。5月中旬、その一角に若手飲食人が運営する店が2軒オープンした。それが、5月17日にオープンしたHi-STAND(ハイ・スタンド 東京都目黒区、代表取締役 戸田博章氏)が運営する「神鶏(しんけい)」と5月20日にオープンした「新潟×タパス バル和(バルカズ)」(店主 井上和哉氏)だ。「神鶏」の戸田氏も「新潟×タパス バル和」の井上氏も、これからの飲食業界を牽引していくと注目されている経営者である。

両店の特長について、「神鶏」の戸田氏は「地元で飲んでいる人に喜んでもらいたい。それが『神鶏』のコンセプトです。もともと私が杉並区出身ということもあり、地元を盛り上げる店を作りたいと考えてきました。鶏に特化して、普通のメニューを普通に美味しく提供する。当たり前のことをしっかりとやりながら、阿佐ヶ谷の飲食シーンを盛り上げていきたいですね」と話す。また「新潟×タパス バル和」の井上氏は「出身地の新潟に貢献しながら、使い勝手の良い店を通して、阿佐ヶ谷の人に必要とされたい。こうしたコンセプトに基づいて、新潟とタパスとバルを掛け合わせたスタイルが生まれました。お客様の求めるニーズを追求して、温かみのある店にしてくつもりです」と語る。

現在、阿佐ヶ谷の飲食シーンを牽引している両氏だが、初めて出会った場所は荻窪で、今から2年ほど前の出来事である。当時、戸田氏は「神鶏」の荻窪店を経営しており、井上氏はティー・カンパニー(東京都国分寺市、代表取締役 月田賢氏)が運営する「オギクボバル」で店長をしていた。両店は荻窪駅の北口と南口で離れていたが、ともに地元で注目を集める店ということもあって、互いに刺激を与えあっていたそうだ。そして、荻窪で生まれた交流が結実して、今回、計らずも阿佐ヶ谷で、両氏が店をオープンすることになった。

そもそも戸田氏は、18歳の頃にバーデンダーとして、飲食業界にデビューをした。そこからバーを中心にキャリアを積んでいき、23歳で西麻布に自らの店をオープンして独立。しかし、「このまま一店舗だけで終わるつもりはない」という固い決意から、他の飲食ジャンルにも目を向けてみたという。その時、強い興味を惹かれる会社と出会う。そこが当時、ストーリー性のある店舗作りで急成長をしていたスパイスワークス(東京都台東区、代表取締役下遠野亘氏)である。戸田氏は「スパイスワークスと巡り合うまで、居酒屋業態には全く興味がありませんでした。だけど、下遠野さんが行う提案に魅せられて、考え方が変わります。自分もスパイスワークスで、一緒に働いてみたいと思うようになったんです」と話す。その下遠野氏に誘われたこともあり、戸田氏は26歳のときに転職をして、ポテンシャルを一気に開花させる。恵比寿横丁の「肉寿司」を爆発的な売上を叩き出す人気店に育てた後、八王子ロマン地下にオープンした「神鶏」のブランド立ち上げでも中心的な働きを担う。そして、飲食人として自信をつけた同氏は30歳の頃に独立をし、現在、中央線沿線で4店舗を展開する新進気鋭の若手経営者となった。

一方で井上氏は、18歳の頃、大学入学のため新潟から上京し、「彦べえ国分寺店」でアルバイトを始めた。同店は、国分寺市を中心に飲食店を展開するティー・カンパニーの店舗である。そこで大学在学中の4年間働きながら、客との距離が近い雰囲気や居酒屋の可能性に触れて、フードビジネスの魅力に惹きこまれていったという。大学卒業後、井上氏は大手百貨店に内定が決まっていた。しかし「飲食業界で力を発揮していきたい」という想いが強くなり、遂には内定を辞退。自らの飲食人としてのスキルを高めるため、そのままティー・カンパニーへ就職をした。そんな同氏が飛躍するキッカケをつかんだのは、2010年4月にオープンした「オギクボバル」である。「店では、イベントをやったり、ツアーや料理教室を開いたりしていました。地元との繋がりを大切にしながら人を集めていく。それを通して、飲食店が持つ可能性を実感しました。店長として働いた6年間が、飲食人としてのベースになっていますね」と同氏は話す。井上氏の尽力もあり、同店は荻窪でも一際存在感を放つ店へと成長していった。こうした経験を通して、自身のスキルを活かしながら、地元・新潟へ貢献したいという想いが膨らんでいく。そして2016年4月末で同社を退職し、「新潟×タパス バル和」をオープンさせて独立。井上氏は飲食経営者として、デビューを果たした。

「神鶏」のメニューは、博多水炊きと焼き鳥、半身揚げの3本柱で構成されている。「水炊き」(980円)は、本場博多で学び、職人が丁寧に味付けをした白油スープが特長だ。「鶏煮込みスープ」(380円)も用意されており、〆のちゃんぽん麺だけを楽しみたい方にも対応している。また、焼き鳥の中で注目なのが、「博多とりかわ」(99円)で、3日間もの時間をかけてじっくりと仕上げていく。「半身揚げ」(1280円)は、国産若鶏を使用しており、味付けは塩のみ。素揚げで、素材の旨さを引き出した逸品になっている。

「新潟×タパス バル和」のキラーコンテンツは、タパスだ。新潟県産の「きのこのマリネ」(300円)や「新潟郷土料理 のっぺいのいくらのせ」(300円)、越後味噌で味付けをした「真鱈の西京焼」(400円)など20種類ほどのメニューには、ほとんど新潟産の食材が使用されており、「タパス3種盛り」(600円)と「タパス5種盛り」(900円)でオーダーできる。この他にも、新潟県の魚沼市にある雪室でスノーエイジングされた肉を使用した「雪室熟成豚 炙りスモーク豚」(700円)や「スノーエイジングビーフUSA産 牛ハラミステーキ」(1200円)なども並ぶ。

今後の展開について、まず戸田氏は「自分には、ビジョンと呼べるものはありません」と言うと、次のように話を続けた。「これまで私は、地元の方との触れ合いを大切にしてきました。だからこそ、自分自身が楽しみながら、地域の人たちが、毎日、足を運んでくれるような店を作っていきたいですね。店は、まず出店するエリアで求められてはじめて、成り立つものだと考えています。あえて目標を上げるのなら、100店ではなく、100の町に店を展開していきたいです」。また井上氏は、「当初の目標通り、まずは新潟への貢献を実現していきたいです。そのために新潟で店を出すのも一つの手段かもしれません。地元の人に喜んでもらうため、取り組んでいきます。その他の具体的なビジョンは、一緒にやる仲間によって変わってくるでしょう。飲食店を通して人の輪を広げていきながら、わくわくするような展開を作っていけたらと考えています」と語る。「地元」というキーワードを軸に飲食経営を語る両氏。その先には、新しいフードビジネスの在り方が待っているだろう。今、阿佐ヶ谷から飲食の新時代が幕を上げようとしている。

店舗データ

店名 ①神鶏
②新潟×タパス バル和
住所 ①東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-1-7
②東京都杉並区阿佐谷北2-12-6 松寿ビル1F

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アクセス ①②JR阿佐ヶ谷駅から徒歩1分
電話 ①03-6886-4788
②03-3330-6090
営業時間 ①17:00~翌5:00
②17:30~翌2:00
定休日 ①②なし
坪数客数 ①17.5坪・45席
②10坪・23席
客単価 ①3500円
②2500円
運営会社 ①株式会社Hi-STAND(ハイ・スタンド)
関連リンク 新潟×タパス バル和(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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