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独自の概念“角打ちバル”を掲げ、日本酒の普及に尽力!新たな試みに挑む「鈴木酒販 小売部」に注目!

店頭には酒林を吊るし、側面には各酒蔵の懸垂幕を飾るなど日本酒が売り物の店をアピール。特に「獺祭」に強く、日本一売る酒販店でもある
日本酒だけでなく、本格焼酎、日本ワイン、クラフトビールを充実させ「国酒」として売り込む。焼酎は45ccを300円均一で販売
試飲コーナーは一般客の利用が多くなったこともあり、“角打ちバル”という新たな概念を創出
日本酒はワイングラスで提供。瓶が空き次第、銘柄を順次入れ替えていく
代表の鈴木利英氏 (右) と店長の猪股達哉氏 (左)

(取材=印束 義則)


酒屋が店内の一角を区切って立ち飲みコーナーを設け、缶詰や乾きものなどの簡単な肴とともに酒を販売する。そうした「角打ち」と呼ばれる業態は、手軽に安く一杯引っかけたい左党な客層を掴んで独自の“酒場文化”を形成してきた。ひと口に「角打ち」といっても中には独自の売り方を築く店もあり、例えば料理を充実させて大衆酒場と遜色ないほどに魅力を高めた店がある。そうした中、“角打ちバル”という独自の概念を掲げ、新しい角打ちのスタイルを打ち出しているのが東京・三ノ輪の「鈴木酒販 小売部」。創業半世紀を超える酒販店が2012年3月14日に新店舗を構えた際、店内の一角に飲食店などのプロを想定した有料試飲コーナーを設けたのがその始まり。だが、様々な酒が格安に楽しめるお値打ち感から次第に一般客の利用が多くなり、オープン3ヵ月後に“角打ちバル”の名称を採用。現在は一般客が8~9割、プロ客が1~2割の割合となっている。 同店を経営する鈴木酒販(東京都台東区、代表取締役社長:鈴木利英氏)は、1959年に山形屋酒店として現在地に開業。10年後、鈴木酒販に改組し、その後、物流センターを開設するなど着々と会社の規模を拡げ、現在売上の95%を業務用で占める。取り引き先の飲食店は実に1500店にも及び、以前から取り扱い商品の試飲をできないかとの声も多く上がっていた。そこで、かつての創業の地に開いたのが「鈴木酒販 小売部」であり、小売りと併せて試飲コーナーを設けることでアンテナショップとしての役割を狙ったのである。店舗規模は40坪で、販売商品は日本酒が定番のもの約200種に、季節商品が50~80種。ワイン約150種、焼酎約120種と揃える中、売上構成比は日本酒が全体の50%と圧倒的な数字を誇る。試飲コーナーはそうした充実した品揃えの一角にあり、5坪・8席の広さで立ち飲み用テーブルを備える。 “角打ちバル”と謳った試飲コーナーは、着席の場合はお通しが付いて席料が300円かかる。売り物の日本酒は常時10種ほど揃え、なくなり次第随時銘柄を入れ替えていく。グラスはワイングラスを使用し、1杯90ccの分量で価格は200円から450円位までの50円刻みに設定。原価率は50%かける。壁には「佐賀県天山酒造 七田 純米無濾過生 山田錦 90cc 250円」「山口県旭酒造 獺祭 純米大吟醸 温め酒 冷もおすすめ 90cc 300円」などと書かれたメニュー札がずらりと貼られ、さらには「『お燗酒』も承ります。」と書かれたPOPも。燗酒は“卓上酒燗器”を用いて供し、50℃の熱燗、45℃の上燗、40℃のぬる燗と好みのあんばいで楽しんでもらう。中には同じ銘柄の酒を温度を変えて味わう客もいて、普通の“角打ち”とはちょっと違った光景が展開される。つまみは「小田原産 いか うに和え」(200円)、「石狩直送 鮭とば ちっぷ」(300円)、「粕漬けクリームチーズの酒盗添え クラッカー付」(400円)、「高坂豚の粗挽きソーセージ」(500円)など20種近くを揃える。他に店内で販売している商品を自由に持ち込めるため、手なれた客は各種缶詰類などを購入し、さらに日本酒も飲み切りに手頃な300cc瓶を買って持ち込む。持ち込み料は一切かからないため、よりお得に利用することができる。 持ち込み料が無料なのは、もともと“試飲コーナー”として開いた性格ゆえのもの。そうした意味からすると本来の“角打ち”とは多少性質は異なるものの、従来の角打ちの店は小売りと角打ちを両方利用する客はそれほど多くはなかったが、同店ではそうした二つの利用動機を一つにつなげることも可能となる。例えば、飲食店などのプロの客が“角打ちバル”で試飲して商品を仕入れていくのに加え、一般客もここで“試飲”して色々な酒の味を覚えた後に商品を購入。それを持ち込んでお得に飲むだけでなく、持って帰って自宅で飲むといった“酒屋”としての客層もきちんと広げている。一般客の場合、女性の一人客が意外に多く、男性客は近所の人がふらりと足を運ぶのに対し、女性客は遠くからわざわざ足を運ぶ人がいるほど。三ノ輪という下町ゆえ、まわりには昭和の雰囲気を色濃く残した居酒屋が多数あり、こうした居酒屋巡りを趣味とした人たちが同店を待ち合わせ場所に指定して落ち合うといったケースもある。また、飲んでいる日本酒を写真に収める客がいれば、「一升瓶も一緒に撮りますか?」と声をかけて一升瓶を差し出し、おそらくネットにアップされ、閲覧される、その先の潜在客層も視野に入れていく。 角打ちのような試飲コーナー。試飲コーナーのような角打ち。その両方の性格を内包するのが、同店が掲げる“角打ちバル”という独自の概念。昨今、日本酒の普及に力を入れる意欲的な飲食店が増加傾向にあるが、同店のような酒販店側からの取り組みは、また違った意味において大変興味深いものがある。最近の日本酒熱の高まりを陰から支える酒販店の新たな試み。こうした地道な取り組みがあってこそ、日本酒文化は今日よりも明日。明日よりも明後日と、日々深みを増していくのである。

店舗データ

店名 鈴木酒販 小売部
住所 東京都台東区根岸5-25-2

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アクセス 地下鉄三ノ輪駅、都電三ノ輪橋駅から徒歩1分
電話 03-3802-8752
営業時間 11:00~21:00(L.O.20:30)
定休日 水曜
坪数客数 5坪 (角打ちスペース)・8席
客単価 1200円
運営会社 株式会社 鈴木酒販
関連リンク 鈴木酒販 小売部
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※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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