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5坪のキッチンで7業態が営業、月商500万円。いま話題のゴーストレストランのトップランナー、「ゴーストキッチンズ」代表・吉見悠紀氏インタビュー

昨今の飲食業界を賑わすキーワードのひとつ、ゴーストレストラン。その名の通り“実態を持たないレストラン”として実店舗を持たずにフードデリバリーサービスを利用して商品を販売する営業形態のことだ。そんなゴーストレストランが年々増加する中、雑居ビル2階のわずか5坪のキッチンで7業態を運営し、月商500万円を売り上げているのが「ゴーストキッチンズ」だ。運営会社のゴーストレストラン研究所(東京都目黒区)の代表、吉見悠紀氏に話を聞いた。



吉見悠紀氏
ゴーストレストラン研究所 代表取締役。広告代理店を退社後、AKINDOを設立。日本企業のアジア進出促進を目指し、マレーシアを中心に食材の輸出やPRイベントを行う。その後、社名をeat worksに変更し、有名シェフのマネジメント、食のPRを担当。2019年1月から1キッチン複数業態型のゴーストレストラン、「ゴーストキッチンズ」を運営するゴーストレストラン研究所を設立。

ゴーストキッチンズ

大繁盛ゴーストレストランがメディア初登場!

―昨今、さまざまなゴーストレストランが相次いで登場していますが、そんな中「わずか5坪で月商500万円を売っているすごい店がある!」という情報を聞きつけてインタビューをお願いしました。

ありがとうございます。「ゴーストキッチンズ」は2019年1月に立ち上げたのですが、会社の存在自体については大きなPRはせず、水面下で運営してきました。というのも、実績がない状態でいきなり露出しても、「ぽっと出の会社が何かやっているぞ」くらいにと思われるのは嫌だなぁと思って……。ですが、1年ほど運営を続けくる中で、徐々に手ごたえを感じ始めたので、そろそろ露出しようかと考えていたタイミングに、ちょうどこの取材の話をいただいたんです。

―ありがとうございます!文字通り“ゴースト”として表に出ずに活躍していたところ、フードスタジアムでメディア初登場を飾っていただき嬉しく思います。まずは、吉見さんがゴーストレストラン事業を始めたきっかけを教えてください。

私はもともと広告代理店に勤務していましたが、その後は飲食店向けの食材の輸出やシェフのマネジメントなど、飲食に関係する事業で起業しました。そんな中で、これから飲食業界ではゴーストレストランを含めテック分野の波がくるだろうと考えたんです。ゴーストレストランは海外ではすでにメジャーなものとして浸透していて、大きな投資額も動いている。立ち上げた2019年1月当時の日本では、Uber Eatsや出前館などのフードデリバリーサービスは今ほどの知名度はありませんでしたが、ご存じの通り、この1年で大きく浸透しマーケットは拡大。読みは間違っていなかったな、と思いました。

従来の飲食店にできない“スピード感”が成長のカギ

―立ち上げから1年、どのように「ゴーストキッチンズ」を展開してきたのでしょうか。

とにかく事業を成長させるために重視したのは“スピード感”でした。1月に立ち上げ、2月には実際に商品の販売を開始。そこからマーケットの反応を見て臨機応変に変化させていくという方針で進めました。「石橋を叩いて渡る」暇はなく、「走りながら作っていく」という感じでした。

最初はカレー業態から始めました。目黒区の住宅街にある雑居ビル2階の5坪ほどのキッチンを間借りし、そこで作った商品をUber Eatsと出前館で販売するスタイルです。カレーは味も美味しく売上も上々でしたが、いかんせん仕込み量が多く、このまま売り続けていては現場が疲弊してしまう……と、仕込みを見直し簡易化しました。そうしたら売上は減少。そこで潔くカレーはやめて、次にサラダボウル業態を開始しました。こちらはカレーと比べてオペレーションは軽く、かつ売上も悪くないので継続しました。次に、サラダが健康的なアイテムなので、その逆にジャンクな食べ物を出そうということでガッツリ系のチキンオーバーライスも始めました。そこからスープに麻婆豆腐、サラダチキン弁当、スンドゥブにトムヤムクン……と増やしてゆき、現在は1つのキッチンで7業態を運営しています。

  
(サラダボウル、サラダチキン弁当、スンドゥブなど7業態を運営する)

―最初のカレーのように、反応を見てスパッと「ダメならやめる」ができるのがゴーストレストランの強みですね。従来の飲食店であれば、売上が奮わないからといって一度作った業態を簡単に変えるのは難しい。そうしたフットワークの軽さ、スピード感こそが肝なんですね。

ええ。業態作りでは、主に私がマーケティングを行い、「こんな業態や商品を作りたい」というのを料理人スタッフに伝えてかたちにしてもらいます。スピード重視なので、無茶ぶりのような短期間で商品を完成させてもらったこともありました(笑)。こうした無茶振りに答えてくれるスタッフが集まってくれたのもうまくいった要員のひとつで、大変感謝しています。

そして、カレー業態のように、マーケットの反応を見て臨機応変に対応する。ゴーストレストランであれば、通常の店舗型飲食店にはできないスピードで進化していくことができる。そこにビジネスとしての勝機があると思っています。

―店舗という縛りがないことが従来の飲食店にない強みですね。働き方改革や人口減少によるマーケットの縮小、原材料の価格高騰など多くの問題で行き詰まりかけた外食産業において、これまでにない手法を持ち込むことで新しい可能性が期待できそうです。吉見さんのマーケティングをもとに業態開発をしているとのことですが、業態作りではどのようなことを意識しているのでしょうか?

7業態がありますが、どれも“地域の台所”が一貫したコンセプト。住宅街立地やデリバリーサービスの性質上、同じ人に繰り返し使ってもらえるような商材がいい。“生活の中で高頻度で利用するもの”としてコンビニをベンチマークとしていますが、コンビニには出せない価値を出したいと思っています。できる範囲で無添加や無化調を意識し、手作りの美味しさを訴求しています。

また、これはどのゴーストレストランでもそうだと思いますが、配送しても美味しさを保てるもの、注文後なるべく早く完成できるものも基準のひとつですね。

とはいえまだまだ実験段階。先ほど述べたように、精査するよりも「とりあえずやってみよう」の精神で、いろいろなものをリリースしています。今は試行錯誤しながら、ノウハウや知見を蓄積していっているところです。


(「ゴーストキッチンズ」に設置されたタブレットには、ひっきりなしに注文の通知が入る)

販促はしない。配送手数料=広告料の考え

―ズバリ、月商500万円まで成長させた勝因は何でしょうか。

先ほど述べたスピード感だったり”地域の台所“というコンセプトだったりと色々あると思うのですが、実際のところここまで売上が伸びたのは、僕らの努力というよりも市場の拡大が大きいのではないかと捉えています。市場が広がるからそれに従って僕らの売上も伸びる。今は僕らの成長スピード以上に市場が成長している段階だと考えています。

販売開始した当初はすべて手探りだったので、販促等は全く行わずにスタートしました。にもかかわらず、Uber Eats上に掲載するだけで注文が入ったことに驚きました。売れたぞ!って(笑)。

そこから、少し経った頃に販促を行ったこともありました。人力でポスティングをしたり、Instagramアカウントを作って投稿したり。それなりの反応はあったのですが、かける労力に見合うほどの効果が得られずやめました。そもそも、フードデリバリーサービスに払う配送料がかかっているので、それを広告費と見なす考えに切り替え、業態作りだったり調理のオペレーションだったり、それ以外のところに注力することにしました。

今後もさらにフードデリバリーサービス分野は伸びると睨んでいます。今年には国内の大手企業や海外の有力デリバリーサービスも日本に進出するという話もある。そうすれば競争が促されて配送手数料もおのずと下がってくるはずですし、チャンスはますます広がるだろうと考えています。

―運営面の負担はいかがでしょうか。初期投資は?

目黒区の住宅街にあるビル2階の5坪のキッチンで調理を行っています。もともとあったキッチン施設を間借りしているので、投資はごくわずか。多少の設備を買い足したくらいで工事などは行っていません。一般的な飲食店に比べれば大幅に安価に開業できていると思います。

スタッフも営業中は2名、週末は3名を配置。仕込みを行えば注文後はスピーディに完成できる品を意識しています。やはり接客や現金の管理がないことは大きいですね。


(雑居ビル2階の5坪の間借りキッチンで運営している)

―今後の展望は。

僕らが目指すのは、飲食店の新しい仕組み作り。もちろん、おいしい料理を提供することも大切にしていますが、それはもはや当たり前になっている。東京は世界で一番ミシュランの星の数が多いことからも、今から料理の美味しさで勝負しようとするにはライバルが多すぎる。美食の追求という観点は、そういったレストランのシェフ達に任せて、そうではない、仕組みの部分でよりよいサービスとして進化させていきたい。新しい飲食店のかたちとしてひとつの指針となれればと思います。

今後はキッチンを移転させてパワーアップする予定。誰かとコラボして新しい事業形態にも挑戦してみたいですね。問い合わせもお待ちしています!

―これからも「ゴーストキッチンズ」の動向から目が離せませんね。本日はありがとうございました!


(吉見氏と「ゴーストキッチンズ」の皆さん)

ゴーストキッチンズ

(取材=大関 まなみ)

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