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特集

飲食戦国時代を勝ち抜く業態開発! 森智範氏&下遠野亘氏&大林芳彰氏、繁盛店ヒットメーカー対談 前編

株式会社M&Co. 代表取締 森 智範氏、株式会社スパイスワークスホールディングス 代表取締役 下遠野 亘氏、株式会社Big Belly 代表取締役 大林 芳彰氏。繁盛店を連発するヒットメーカー3名による対談レポート。創業の経緯や、業態開発、プロデュースの事例を交えた繁盛店の秘訣などを語ってもらった。

※本記事は、1月24日、フードスタジアムは「焼肉ビジネスフェア2019」内にて、「飲食戦国時代を勝ち抜く業態開発~繁盛店づくりの秘訣をヒットメーカーが語る!~」のレポートです


【ゲスト講師】
(写真左から)
M&Co. 代表取締役 森 智範氏

スパイスワークスホールディングス 代表取締役 下遠野 亘氏

Big Belly 代表取締役 大林 芳彰氏

【司会】

フードスタジアム 代表取締役 大山 正 氏

大山 正(以下、大山):弊社が開催する「フースタ繁盛ゼミ」ですが、今回は「焼肉ビジネスフェア2019」内での開催となりました。数々の繁盛店を生み出してきた3名をゲストにお招きし、パネルディスカッションでその秘訣を余すことなく伺います。よろしくお願いします。

早速ですが、独立前後何をやっていたかも含め自己紹介をお願いします。

森 智範氏(以下、森):今日は福岡から参りました!元々は“フレンチの鉄人”として知られる石鍋裕氏の「クイーンアリス」で、ソムリエ、マネージャーとして務め、その後何店舗かコンサルや飲食店での経験を経て31歳で独立しました。 2002年に福岡市今泉の「パロマグリル」(閉店)、2009年に「博多炉端 魚男(フィッシュマン)」をオープンさせました。どちらも繁盛店に成長し、他にも色々な店をやっていたら、プロデュースの依頼が増え、現在はプロデューサー業も多数こなしています。

下遠野 亘氏(以下、下遠野):私は渋谷にある青山製図専門学校出身。入学の動機は「渋谷で遊びたかったから」だったのですが、やってみたら楽しく、将来は図面を描いたり、飲食店をやれたらいいなと思っていました。この業界に入ったのは、もともと図面を描いていたのですが、だんだんそれが上手くいかなくなってしまって……もしかしたら飲食店で働いたほうが簡単なんじゃないか?と思いついたから。実際にやってみたら肌に合っていたので、結果5年ほどい複数の店でキッチンに立ちました。その後、いくつかの仕事を経験して、「大人の隠れ家 窯焼き料理・肉料理・旨酒 shigotouma 仕事馬」をオープンして独立しました。現在は、飲食店の設計やりながら飲食店を経営。「東京大塚のれん街」などのトータルプロデュース含め色々とやっています。

大林芳彰氏(以下、大林):私は元々住宅メーカーの営業でした。26歳の時にグローバルダイニング(東京都港区、代表:長谷川 耕造氏)の「モンスーンカフェ」に感動して転職し、13年働きました。2011年にオリエンタルビストロ「アガリコ」の1号店で独立して、今は「和ガリコ」や「アガリコ餃子楼」なども展開。他あらゆるジャンルの飲食店プロデュースを行っています。

創業店は「駅から外れた繁華街で尖った業態」が共通点

大山:では次に、創業店の業態開発の秘話をお教えください。

(森氏の創業店「パロマグリル」)

:独立1店舗目のガストロバル「パロマグリル」は、“高級フレンチを1/3の値段で食べられる”をテーマに、今でいう「俺のフレンチ」のような店でした。あれ、実はお手本がファミレスの「ロイヤルホスト」なんですよ。私はフレンチ出身なので、フレンチレストランで独立したかった。でも福岡では需要が少なくて。「ロイヤルホスト」みたいに、色々な用途で使えるフレンチがあったら面白いかなと組み合わせてみたのが始まりです。カフェっぽさも意識していたのですが、ちょうど当時のカフェブームの追い風もあり、繁盛しました。

大山:「博多のカフェのムーブメントを変えた」と言われていますね。「パロマグリル 」があった福岡市今泉という場所は、当時ラブホテル街だったんですよね?

:かなりいかがわしい場所で、当時この場所で店をやると言ったらほとんどの人に止められました。でも、そんなに反対されると、やってやるという気持ちが湧いてきて。みんながやらないことって意外と成功したりすることもあると思って、飛び込んでみました。

大山:当時、周辺に飲食店などはなかったんですか?

:何もありませんでした。ひったくりと空き巣が多い地域で、危ない場所だった。だから、絶対失敗するって言われていたんです。

大山:そのような場所で開業した理由は?

:勘ですね。なんかイメージが見えたというか、本当に勘以外の何物でもないですね。

大山:「パロマグリル」はどんなメニューを出していましたか?

(「パロマグリル」の人気メニューだったサラダ)

:一番の目玉はサラダです。スタッフがお客様の目の前で、回転する60㎝くらいの大きな台に盛り付けを行います。自分ではそう思っていなかったんですけど、当時、飲食業界の人からは特殊なことをやっていると思われていたみたいですね。目新しい料理や盛り付けは取り入れるようにしていました。

(福岡の大人気居酒屋「博多炉端 魚男」)

次の業態「博多炉端 魚男」のほうは炉端焼なんですが、「パロマグリル」同様、器にもこだわっています。最近、東京では階段状になっている刺身の器をよく見ると思うんですけど、「博多炉端 魚男」の「名物!お刺身階段盛りあわせ」が、その元祖と言われています。

(「魚男」名物の刺身は、ユニークな階段状の板に盛り付ける)

大山:どういった発想でこの器を作ったんですか?

:シカゴのあるお店で同じ形状の器を見かけて、作りました。元々はガラス製でした。これを刺し盛りの器に使えないかと、無理やり大工さんに作ってもらったんです。

大山:かなり斬新な作りだと思うのですが、周りの反応はどうでしたか?

:最初は、色々言われました。だいたい反対されることが多いんです。

(まるでケーキのような仕立ての「和牛カルビの肉じゃが」)

次に開業した「博多炉端 魚男(フィッシュマン)」という店名も、今でこそいいと言ってもらえますが、創業時はなかなか受け入れてもらえなかったです。こちらではケーキのような形に盛り付けした「和牛カルビの肉じゃが」を提供しています。和牛肉じゃがという味は変えずに、フランス料理の手法を使ってスタイルを変えてあるんです。今でこそ珍しくありませんが、こういった発想を居酒屋に取り入れるのは早かった方かと。

(ベリーダンサーによるパフォーマンスも名物)

大山:私は昨日、予約して「博多炉端 魚男」に伺ったのですが、エンターテイメント性に圧倒されました。もう変態の域ですね。いきなり音楽が流れて、ベリーダンサーが登場。そのあとはバルーンアート。料理長が目の前でだし巻き卵を作るパフォーマンスもありました。

 

(左:バルーンアートの様子、右:目の前で料理長が作る出汁巻き玉子)

:フードやドリンクには定番メニューに変わった要素を加えることが多いです。シャーベットになっているレモンサワーは、まず食べてもらって、後からお客さん自身にソーダで割ってもらう参加型。あとはエスプーマで冷奴を泡にしたり、冷やしトマトを液体窒素で-196℃にしたり、そんなことばかりやっています。

大山:もうオープンされて長いと思うのですが、現在の「博多炉端 魚男」の月商はどれくらいですか?

:店舗面積が26坪で平均月商が1500万円ですね。今月でちょうど10年ですけど、12月以外は、売り上げはずっと変わらず同じくらいです。

大山:21時の予約で伺ったのですが、テーブル席は満席で女性客も多かったですね。

:男女の比率は6:4か7:3くらいで女性が多いですね。最近は海外からのお客様も随分増えました。

大山:女性や海外のお客様の心を掴むには、見て楽しむ、体験を提供するというのは非常に重要ですよね。次は大林さん、いかがですか?

(大林氏の創業店「オリエンタルビストロ アガリコ」)

大林:私の創業店は2011年にオープンした池袋の「オリエンタルビストロ アガリコ」です。店のある駅の西口方面は飲兵衛も多く、あまり治安が良くないところで、そこからさらに歩いた場所にあります。この物件はずっと狙っていたところで、もともと酒屋が営業していた場所。飲食店にはしない物件だったんですが、ちょうど角地で2面が取れる場所で逃したくなかったんです。4、5回通って、直接交渉して店を出せることになりました。家賃も安くて、他の契約希望者も出ず、スムーズに契約できました。

大山:大林さんの店も森さんの創業店と同様に繁華街ですね?

大林:そうですね。夜が元気なエリアで、ウチの店も夜5時から翌7時まで営業しています。店舗面積17坪に対して、月商はいい時で1400万円くらいです。業態としては、アジアンレストラン「モンスーンカフェ」をさらにショートポーションにして、皿数を多く食べてもらうようなイメージで作りました。

オーナーが現場を離れ、あえてスタッフに任せたことで売上アップ!?

(「オリエンタルビストロ アガリコ」は連日多くのお客でにぎわう)

大山:もう独立されるときにはアジア料理でいこうと決められていたのですか?

大林:もともと13年間「モンスーンカフェ」にいたので、そこはブレずに開業しようと。タイに料理を勉強しに行った経験もあり、タイ料理にずっと関わっていきたいという想いもありました。

大山:2011年の独立というと震災の年ですよね?以前、開業時期に重なり苦労したと伺った記憶があります。

大林:2011年の3月12日に物件を契約する予定だったのですが、その前日に震災がありました。本当は震災前に契約する予定だったのに、事情があってずれてしまって。震災後は、すぐに不動産屋から連絡が来て、心配されて早めに契約してくれと言われて、契約だけはしました。最終的に6月にオープンさせたのですが、途中、諦めてタイ旅行に行ったりしましたね。

オープン前は、リサーチのために毎日夜中に周辺を歩いていたんですが、本当に道も真っ暗で誰も通らず、すごく不安でした。この周辺は今でこそ飲食店が増えましたが、当時は何もなかったので。

オープン当初の月商は500万円ほどでした。半年経ったあたりで、僕ともう1人メインスタッフが現場を抜けなきゃいけない状態になり、これもすごく不安でした。もしかしたら売り上げが下がってしまうかもしれない……と。でも、抜けた次の月には月商が300万円ほどアップ。これ以上売り上げは上がらないだろうと思っていたら、逆だったという笑い話です。原因は、自分では満足していたオペレーションにありました。誰かに任せるのを怖がってはいけないと勉強になりましたね。

大山:そのあとに新しく作った業態が、北千住の「アガリコ餃子楼」ですね?

(北千住が1号店の「アガリコ餃子楼」)

大林:はい。実は「アガリコ餃子楼」は僕の弟のために作った業態で、それが当たりました。彼は料理全くできない。飲食店経験も半年くらいでのスタートです。現在は、4坪家賃10万円で、月商はあんまり言いたくないんですが…‥‥350万~400万円前後です。

大山:北千住も繁華街ですが、困ったお客様はいないんですか?

大林:アガリコ業態は家賃が安く済むこともあり、基本的に夜が栄えるエリアに出店しています。最初は店内での喧嘩も多かったですね。僕が店から徒歩30秒くらいのところに住んでいて、問題が起きたら止めにいくという形で半年くらい戦って、排除しました。今は一切なくなりましたが。

ブームを避ける”あまのじゃく”な性格が生んだ大ヒット業態

(下遠野氏の創業店「仕事馬」)

下遠野:最初に開業したのは水道橋にある「仕事馬」です。もうオープンして14年になります。例に漏れず、少し外れた場所で探して決めた物件です。東京だと坪2万くらいのところで……とか、創業店の物件を決める条件ってみんなそうなんですよね。駅から離れた場所でやっていくためには、森さんと大林さん同様、尖った業態、尖った素材で勝負を仕掛けました。

大山:以前、下遠野さんに「なぜ馬肉を選んだか」お聞きしたら、その時ブームだった「ジンギスカン」がやりたくなかったから、と仰っていましたね?

(「仕事馬」は馬肉料理がウリ)

下遠野:元来、あまのじゃくなところがあります。羊好きだったんですけれども、羊の肉は「ブーム」になり、言葉が定着してしまった。一般に認知されている業態は1店舗目にやらないと決めていたんです。しかも、この店は設計デザインの仕事としてモデルケースの意味合いも含んでいたので、絶対に流行ってもらわないと困るんですよね。ブームには乗らずに、きちんと自分の色を出すと考えた結果、馬肉にたどり着きました。

(恵比寿横丁内の「肉寿司」)

大山:下遠野さんといえば、皆さんご存知の「肉寿司」の生みの親ですが、このコンセプトはどういった発想で?

下遠野:「肉寿司」は2017年7月に株式譲渡しました。今、50店舗弱くらいになっています。単純に「寿司」という看板を見ていたら、「肉」と付けたくなって、恵比寿横丁でやってみたのが最初です。馬肉のみの提供だからといって、「馬肉寿司」にするとあまりにも尖りすぎているので、敢えて「馬肉」と書きませんでした。馬肉のメーカーや生産者から、馬肉が売れなくなっていると相談を受けること数年、シンプルに肉寿司でいいんだと気づいて作った業態です。

今ではInsutagramでハッシュタグ検索すると#肉寿司は19万件もあります。大手飲食チェーンの業態なども手がけている中で、ダントツの数です。この辺りはネーミングやSNSの拡散といった面でもヒントになるのではないでしょうか。

「肉寿司」の1店舗目は恵比寿横丁で、もう少しで開業から10年になります。最初は3坪だったのですが、現在増床して6坪。調子のいい時の月商は約1500万円あります。株式譲渡した今でもメニュー管理は担当しています。

(「肉寿司」は下遠野氏の代名詞的業態だ)

大山:下遠野さんは、ワタミやスシローの業態開発も手がけられているんですよね?

下遠野:はい。僕の会社は少し変わっていて、譲渡した業態や大手飲食チェーンのプロデュースの場合でも、業態を作った後、必ずランニングも見るんです。その後のフォローまでないと、どうしても業績が落ちていってしまうんですね。

 

中編に続く~

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