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コラム

2010年“後半戦”の飲食トレンドを予測する!

2010年も7月に入って"後半戦"を迎えた。そこで、今年前半の飲食トレンドを振り返り、2010年後半の動向を予測してみたい。キーワードは、ズバリ「イノベーション」である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


まず、2010年“前半戦”を振り返ってみよう。以下は、昨年12月、このコラムで今年のトレンドを予測した原稿である。
①「均一低価格」店の選別が始まる
~「均一低価格」店が急増しており、中には「安かろう悪かろう」の店も出てきている。2010年は「均一低価格」でも料理やサービスがいいかげんな店は淘汰される。
②「○○酒場」が流行る
~同じ低価格でも、老舗系の「大衆酒場」や「古典酒場」といわれる伝統の店へ新しい客が流れている。そうした大衆酒場の空気感を取り入れた専門店が登場し、人気化している。「餃子酒場」「鉄板酒場」「串焼酒場」など「○○酒場」というコンテンツに注目。
③「魚系居酒屋」がピークアウトする
~数年前から始まった“浜焼き”“鮮魚居酒屋”などいわゆる「魚系居酒屋」が東京では一気にマーケットを席巻した。しかし、この市場に大手チェーンや他業態からの参入が相次いでいることから、そろそろブームがピークを迎えるだろう(ただ、地方都市では、これからまだ展開の可能性がある)。「魚串」「魚鉄板」など“進化系”には要注目。
④「一品入魂」の時代
~低価格路線に乗らないで集客するためには、「価格」ではなく「価値」が問われる。料理やサービスの「価値」を理解してくれるリピーター(上客)を増やすには、総合点ではなく、“記憶に残る一品”を提供することが求められる。また「個店」から「固有店」への志向もみられる。業態で選ぶのではなく「あの店に行きたい」という志向。「一品」の強さを見直す機会である。
⑤「B級グルメ」からヒットが生まれる
~B-1グランプリが火をつけた「B級グルメブーム」が続いている。これは単にグルメ界の動きだけではなく、低迷する地方経済や商店街活性化の起爆剤になっている。飲食店でも、「B級グルメ」をメニュー開発のアイテムに取り入れる動きも出てきている。ヒット商品はこのB級から生まれるケースが増えてくるだろう。

概ね、私が予測した流れは、当たらずとも遠からずといえるのではないか。②の「『○○酒場』が流行る」については、今年に入って実際にさまざまな新店がオープンしている。④の「一品入魂」についても、その店ならではの名物料理を打ち出すことで“高価値型”を追求する店も増えた。さて、それでは、今年前半の新しいトレンド及び後半の予測をまとめておこう。

①“居抜きブーム”の定着と“横丁の活性化”が進む
~“居抜き物件”を活用した低投資・早期回収型ビジネスモデルが主流に。「業態から食材の時代へ」のトレンドもその流れに拍車をかけている。スケルトンから内装しても業態寿命が短くなっており、回収する前に業態が陳腐化し苦境に陥る飲食店が多い。「ちゃんこダイニング若」などはその典型。今後、“居抜きブームは”フロアごと、ビルまるごと再生するリノベーションブームを生む。
②「ネオ・大衆酒場」時代が来る!
~新しいマーケットとして「ネオ・大衆酒場」ともいうべき業態が増える。“単一食材特化型”専門店が増える一方で、これからは、“新しい総合居酒屋”の時代が来る。そのために長く支持されている「古典酒場」「大衆酒場」のMDから“温故知新”の発想で学ぶべし!
③「地域ブランド」の東京進出がさらに増える!
~「地方食材」「郷土料理」はさらに進化する。B-1グランプリが火をつけた「B級グルメブーム」も続くだろう。これは単にグルメ界の動きだけではなく、「地域ブランド」として、低迷する地方経済や商店街活性化の起爆剤になっている。飲食店でも、こうした「地域ブランド」をメニュー開発のアイテムに取り入れる動きがさらに増えそうだ。また「地方からの東京初進出」のビジネスチャンスは拡大する。
④「ニューエンタメ系」「ニューテーマレストラン系」の台頭
~不況が続き、顧客が節約に飽きてきた。また、ベタコテ系や食材追求型の業態に対しても飽和感が出てきた。そうした中で、“楽しむ、遊ぶための空間”としての飲食店の役割に再び注目が集まってきた。それは“ポスト・カラオケ”“ポスト・キャバクラ”“ポスト横丁”的なニーズに応える店だ。“女子会”増加などでグループ客の新しい志向性にも注目。「昭和歌謡曲バー」や「セクシー居酒屋」、そして「歴史テーマの店」や究極の郷土テーマの「阿波おどり」など。焼酎を無料で提供する「居酒屋革命」なども、集客重視の点では一種のエンタメ系居酒屋といえる。
⑤“ニューチェーン”の台頭と既存大手チェーンの復活
~ロードサイドでは、居抜き出店で攻勢をかけるベンチャーと既存大手による“逆襲”が始まった。また、「すた丼」など牛丼マーケットの隙間をぬって、豚丼チェーンが台頭。とんかつやうどん業態でもニューチェーンが増えてきた。ダイヤモンドダイニングなど「多業態戦略」を打ち出してきたベンチャー企業も子会社でチェーン志向を強める動きが。新しい単一業態のチェーン化、ヒット業態のライセンス型展開を行う中小外食が増えるだろう。大手が低価格を武器にした安旨型の“ポスト均一業態”のチェーン居酒屋で“逆襲”を開始。
⑥“脱ベタコテ”の動きが広がる
~顧客はここ数年の“ベタコテ”ブームに飽き始めてきた。“第二次カフェブーム”がじわじわと来ているし、ハイボールやホッピー、第三の生ビールではなく、ワインを軸とした“ポスト・ベタコテ”の店が増えている。一時のスペインバルブームは沈静化したが、それに代わって“ビストロ酒場”がネオ・バール時代の主流に踊り出てきた。
⑦増える海外進出
~市場の縮小が続く日本のマーケットから海外に飛び出す外食企業が増えている。とくにアジアマーケットへの進出の動きが強くなるだろう。中国、香港、韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアなど。これらアジアの経済成長が続く国では、富裕層だけでなく一般庶民も日本食に対するニーズが高まっている。これまでの「寿司」「ラーメン」から、「居酒屋」「とんかつ」「うどん」「カレー」などの業態に注目。

いま強い飲食店に共通するのは、顧客志向に迎合する“マーケットイン型”ではなく、店側が得意分野を特化し、それを強烈に打ち出すことによって顧客を振り向かせる“プロダクトイン型”であること。これはプロダクトアウトとは異なる。イノベーションによって、その店の唯一性(オリジナリティ)を顧客に印象づける新しい手法である。

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