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コラム

「外食アワード2009」選考後記

外食産業記者会の「外食アワード2009」、今年は、餃子の王将・大東氏ら7名が選出された。外食産業関連の専門紙誌で構成する外食産業記者会(加盟28社)の第6回目のイベント。来たる2月12日には表彰式が行なわれる。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「外食アワード」は、外食産業記者会が創立25周年記念事業として制定した表彰制度。「外食産業の発展と外食の食文化醸成に寄与する」ことを目的に、毎年、その年に活躍・話題になった人物を選出している。「外食アワード2009」の受賞者は以下の通りだ。【外食事業者】大東隆行氏(王将フードサービス代表取締役社長)、大倉忠司氏(鳥貴族代表取締役)、【中間流通・外食支援事業者】浜倉好宣氏(浜倉的商店製作所代表取締役)、【食材事業者】松沢幸一氏(キリンビール代表取締役社長)、相場康則氏(サントリー酒類代表取締役社長)、【特別賞】奥脇裕氏(ヤヨイ食品顧問)&三國清三氏(ソシエテミクニ代表取締役)。私も初めて選考委員をつとめさせていただいた。その選考後記を書いておこう。 「餃子の王将」を展開する大東氏は、多くの飲食企業が不振に苦しむ中、2009年3月期まで3期連続で過去最高の純利益を出し続け、2010年3月期も更新する見通しであるなど、好調を維持し続けている点や、従業員への権限委譲を原動力にした経営手法が注目された。リーマンショックを機に不況に突入した業界の中で、まさに“一人勝ち”の印象を植え付けた。ただ、「テレビを使ったプロモーション効果が大きかったのでは?」という声もあった。また、大倉氏は、低価格志向が強まる中、料理もドリンクもすべて「280円均一」の「鳥貴族」で大躍進。圧倒的な安さを誇るじゃんぼ焼鳥や生ビールなど、従来の値付けの常識を覆すサプライズ商品で衝撃を与え、急成長の焼鳥チェーンとして注目を集めた。300円を切る値付けで均一低価格を打ち出したまさに元祖である。立地は二等物件なのだが、そのCPの高さは定評がある。いまでは、一等地の大手居酒屋チェーン店も均一低価格を打ち出し、こぞって追随してきている。「鳥貴族」は出店戦略として「和民」をベンチマークしてきた。そのワタミも4月から「250円均一」を打ち出すというから、成り行きが注目される。 浜倉氏は、ヒット業態・浜焼き居酒屋の先駆けとなる「鱗」シリーズをはじめ、「恵比寿横丁」「神田ミートセンター」「品川魚貝センター」など、斜陽となった物件を、飲食をテーマに魅力的な「横丁」としてプロデュースし、地域・人材の再生をもたらした点が評価された。浜倉氏が火をつけた“浜焼き”“鮮魚居酒屋”スタイルも、やはり他の外食企業や飲食店が次々の模倣店を出してきた。浜倉氏も当初は「許せませんなぁ」と関西弁ながら怒りを隠さなかったが、まさに燎原の火のように広がってきたのを見て、「私のつくった業態を皆さんが広げてくれてありがたいこと」と諦めている。大倉さんや浜倉さんにとっては、「当てるために」やったわけではない。その時代、顧客やオーナー求めているコンテンツを提供したに過ぎない。彼らにとっては“先駆者”と賞賛されるのも面はゆいに違いない。コンテンツホルダーとはそういうものであり、そういうホルダーをこそ、我々ジャーナリズムは光を当て、守っていかなければならない。 2009年の外食産業の動向を現す「2009年外食キーワード」には、「浜焼き・刺身酒場」「ハイボール」「居抜き」「LED」「均一低価格料金」が選ばれた。私は、「B級グルメ」を推薦したが、入選できなかった。今年で5回目となる「B1グランプリ」の主催団体「B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」(通称「愛Bリーグ」)を「外食支援事業者」として推薦もしたのだが、「今日性がない」との総意で落選した。私としては、2009年の外食マーケットにおいて、「B級グルメ」トレンドは地域のマイナーコンテンツから全国レベルのマスコンテンツへと大ブレークしたと思うし、外食企業のMD戦略にも大きな影響を与えたと思う。また、低迷する地方経済を活性化するためのいわば“救世主”ともなった。「B1グランプリ2010」は初めて首都圏の厚木市で開催される。「外食アワード2010」は期待していいのかも知れない。

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