コラム

さあ、街に出て「ビール」を飲もう!

「3.11」から10日以上が過ぎ、いま我々は福島原発事故による放射能汚染の不安や恐怖と戦っている。そんな中で、俄かに「ビール」が注目されている。ビールに放射線防御効果があるという情報がツイッター上で流れたのがきっかけである。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


そのデータとは、独立行政法人放射線医学総合研究所が2005年に公表した「ビール成分に放射線防護効果を確認 放医研・東京理科大の研究チームがヒトの血液細胞とマウス実験で実証」というタイトルのリリース。それによると、「放射線医学総合研究所 (佐々木 康人 理事長) 粒子線治療生物研究グループは東京理科大学薬学部放射線生命科学の研究チームと共同で、ビール成分が放射線を防護する効果があることをヒトの血液細胞やマウスを用いた実験で明らかにした。アルコール飲料に放射線を防護する効果があることはすでに報告していたが、ビールに溶けこんでいる麦芽の甘味成分などに放射線により生じる染色体異常を最大で34%も減少させる効果があることをつきとめたのは初めて」という。アルコール飲料そのものに放射線障害を低減する効果があることはすでに実証済み。それに加え、ビールに溶け込んでいる成分にも防御効果があるこがわかったのだ。この情報は、あっという間にツイッターやブログで広まった。しばらくは放射能汚染のリスクと向き合わなければ生活できない我々にとっては、苦し紛れではあるが、朗報に違いない。アルコール摂取、とりわけビールが放射能から身を守るとあって、にわかにビール業態への注目度が上がってきた。ワイン業態、日本酒専門業態に加え、これからはビール業態を中心とする「ビールマーケット」が動き出すかもしれない。「3.11」の前からも、実はビール業態のニューオープンは増えていた。注目したいのは、やはり若い世代が仕掛ける新しいビールスタイル。「クラフトビール」と呼ばれる地ビールや小規模ブルワリーの樽生ビールを提供する新しい「クラフトビア業態」はじわじわと広がっていた。西新橋一丁目に2月24日にオープンした「CRAFT BEER MARKET」。国産を中心に外国産も含め30種類のクラフトビールが楽しめる。バーカウンターバックの壁面に取り付けた25のタップは圧巻。ポーションはグラスとパイントと二種類で、それぞれ480円、780円とリーズナブルな均一価格。2月11日に大塚にオープンしたのが「麦酒庵」。日本酒の名店と名高い四谷「酒徒庵」の姉妹店で、クラフトビールと国産カキを提供する業態だ。クラフトビールは10種類。国産限定となる。樽生だけに、日々変わるビールだが、「南信州のアップルホップ」「いわて蔵の自然発酵ビール」などのヴィンテージビールまで揃え、それぞれの個性が楽しめる。ポーションはヴィンテージビールを除き、230mlと490mlの2ポーションとなり、価格はそれぞれ500~600円、950~1100円。ビールのほかのドリンクは「アザーズ」と一括りされるが、日本酒が150種類もあり、ビールと交互に楽しむ客も少なくない。料理は生カキを中心に、おばんざい、干物といったベーシックな和風惣菜が多い。昨年11月、六本木にオープンした「Ant’n Beer」では国産の22種類の樽生クラフトビールが楽しめる。サイズはS、R、Lとなり735円、945円、1260円の三種類。博石館の天然蜂蜜酵母自然麦酒、横浜ビールのチョコレートスタウト、鳥の海のシャンパンビール林檎など珍しいタイプもある。同じビルにあるアイリッシュパブ「アボットチョイス」の姉妹店となる。昨年10月にオープンした「目黒リパブリック」は和食業態からのリニューアル。オリジナルの「目黒ラガー」をはじめギネス、ヒューガールデン、箕面W-IPAなど国産、外国産など10種類の樽生クラフトビールが味わえる。さらにビンビールは200種類も揃える。ユニークなのは冷蔵庫にタップを取り付け、直出しスタイルをとっていることだ。ほかにも1月15日四谷荒木町にオープンしたのは「地ビールバー まる麦」。6坪のマイクロ店舗でありながら、国産、各地からの5種類のクラフトビールを提供する店主のこだわりを明確にした店だ。そんなクラフトビア業態のなかでも突出するのは、店主のビール好きが乗じ、自らビールを創り提供するのが2月24日オープンした高円寺の「高円寺麦酒工房」。自社ブルワリーで造るクラフトビールを店で味わう「ブルワリーパブ業態」だ。極小店舗だが、ブルワリー直出しが楽しめる。今のところはペールエール一番絞りとレッドエールの2種類。ポーションはそれぞれSとMの2タイプ。ペールエールは590円と650円。レッドエールは350円と390円と価格もリーズナブルだ。クラフトビアパブのほかにも池袋にオープンしたばかりの「beer pub CAMDEN」や高円寺にオープンした「The cluracar」は新世代のアイリッシュパブ。「The cluracar」は100年前のアイリッシュパブをイメージしたアンティークな内装がポイントだ。また、八丁堀に2月21にオープンしたワイン厨房「tamaya」の2号店、「beer&wine厨房tamaya」。ワインバルでもビールを気兼ねなく飲める業態だ。巨大ビアホールも銀座に誕生した。東北関東大震災の3日前の3月9日に銀座六丁目にオープンした「銀座ビアホール スコール」である。地下1~2階の300坪180席という超大箱。経営は、銀座を中心に豚しゃぶ、水炊き、もつ鍋、韓国料理など5業態11店舗を展開しているフードバンク(岡田英雄社長)。主にサントリー系の生ビールを提供するが、好みの三種類のビールを利き酒できるセット(850円)や、グループ客向けに用意した客席でタップからビールを注ぐことができる特殊なピッチャーを置くなど、随所に新しさを打ち出している。外食不振のいま、放射能対策にもなるビール。さあ、こんなときだからこそ街に出て、ビールを飲もう!

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