「イートグッド」は文字通り、「いいものを食べよう!」だが、もっと深く「食を通じていいことをやろう!」という考え方。「いいこと」とは生産者の皆さんと食材の大事さを共有し、それを飲食店を通じてお客様に真面目に美味しく、楽しく提供しようということ。当たり前のことだが、それをハイレベルでやっていこう。できるだけオーガニックなものを提供する、化学調味料を使わないこと、あるいは「ファームtoテーブル」や「イートローカル(地産地消、地産都消)」は当然のこと。敢えてそれを打ち出さなくても、お客さんに伝わるようなスタンス。いま流行りの言葉でいえば「ノームコア」的に取り込んでいく。かつてオーガニックやマクロビが流行った“健康ブーム”とは違う。当時は「ヘルシー=美味しくない」というイメージが定着し、ブームで終わってしまった。しかし、いまは生産者の努力と技術の進歩と飲食店のミッション、クオリティの力によって、格段と食材と料理のレベルが上がり、「ヘルシー=美味しい」に変わってきた。
以前のコラムにも書いたが、「イートグッド」という言葉は、オーガニックカフェの「麹町カフェ」や自家製パン工房「ファクトリー」、チリビーンズ専門店「チリパーラーナイン」を経営しているエピエリ(松浦清一郎社長)が提唱した。「エピエリは今、EAT GOOD(良いを食べる)を考えはじめました。EAT GOODの良いとは、有機野菜だとか無添加だとか、そういったことではありません。畑からパントリーへ、パントリーからテーブルへ、テーブルからお客さんの口へ―、そのつながりの中にある、お互いへの愛情、思いやり、リスペクト、そしてありがとうの気持ちを大切につくられたもの。それを考え、あつかい、調理し、食べてもらう。いただく。それがエピエリの考えるEAT GOOD(良いを食べる)です」(同社ホームページより)。同社は3月に4店舗目となる「SUKE6 Diner(スケロクダイナー)」を浅草にオープンした。同店は、単に無農薬や有機野菜など、素材にこだわるだけでなく、ハムやベーコンなどの加工品から調味料にいたるまで、自分たちでつくれるものはすべて手作りする。例えば「フライパンにのったイングリッシュブレックファスト」パン付き(1200円)は、自家製のパン・ハム、野菜は松浦氏の住む三浦の契約農家から、松浦氏自身が毎朝運ぶものに加え、九州の契約農家や自社の山梨の農場で収穫されたものなど。その日の旬の素材を使用しているという。
三軒茶屋に3月、“居酒屋価格でオーガニック料理を提供”をコンセプトとする「SANCHA TEPPEN ORGANIC 85BAL(三茶のてっぺん オーガニック発酵バル)」がオープンした。同じ三軒茶屋に日本酒バル「富成喜笑店」も経営するツイテルカンパニーの舟木雅彦氏の店。ワインバルブームに乗って好調だった「ワイン食堂 テッペンバール」を思い切ってリニューアルした。ボウル一杯に盛り付けられるオーガニック野菜サラダやランチのみで提供されるグルテンフリーのパンケーキなどの人気メニューは早くもリピーターは多い。ワインもビオ、日本酒も純米縛りである。提供価格を居酒屋値段に抑え、“価格以上の価値感”を打ち出しているのも注目点だ。一切販促はせず、口コミのみで価値に共鳴してくれる客をじっくり獲得していく戦略。こうした「イートグッド」系の店がいろいろな街に増えてきている。「食の本来のあり方」が問われるいま、そうした流れは時代の必然だろう。エピエリの松浦氏は、こう言っている。「値段を払えば良いものは食べられるが、日常的に良いものを食べてもらいたい。地域の交流の拠点として、何世代も続くような使われ方をしてもらえたら嬉しい」。舟木氏もそんな店をじっくりと育てていきたいに違いない。
関連リンク | 2015年をリードする3つの発想軸 |
---|