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フースタM&A×インクグロウ特別連載【vol.3】あの会社はいくらで売れたのか?――誰もが気になるM&Aの「価格」、飲食企業の価値はこう決まる

中小企業を中心に事業継承、M&Aのコンサルティング事業を展開するインクグロウ。ビッグネームから小さな個人店まで、飲食店の案件も数多く手掛けている。飲食店経営において、自社の価値を確認しM&Aを検討してみるのもオーナーとして一つの選択肢ではないだろうか。同社で数多くの飲食M&Aを手掛けてきた中原 陸氏が、いまの飲食M&A市場の最前線を語る。


中原 陸氏・プロフィール
事業戦略部 部長、事業承継・M&Aシニアエキスパート。千葉県出身、慶応義塾大学卒。2006年上場経営コンサルティング会社入社。経営コンサルタントとして中小企業向けのコンサルティングに従事。2011年当社のMEBO後、2013年よりM&A部門の主力メンバーとして事業化を実現。大企業から中堅・中小企業、および投資ファンドまで多くの支援実績を有し、特に飲食業界のM&Aにおいて数多くの成約実績を有する。2019年より現職。

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話題のM&Aのお手伝いすると、「あの会社はいくらで譲渡されたの?」という、「価格」の質問をよく受けます。M&Aは守秘に始まって守秘に終わると言われるぐらいに秘密事項だらけですので、それが公開情報でない限り私から価格をお伝えすることはありませんが(上場企業がリリースする際に金額を開示することもあります)、それが多くの経営者にとって強い関心事項であるのは間違いないと思います。あそこがいくらで売れたなら自分のところはいくらぐらいか、という思いを巡らせる方もいらっしゃると思います。私自身もM&Aのニュースを見ると、やはり価格が気になります。譲渡する側の経営者にとって、M&Aで大事なことは「誰にどのような条件で譲渡するのか」だと思いますので、今回はまず条件面についてご紹介します。

飲食企業の殆どは優良資産を持たない独特な業界

会社を評価する方法は実はたくさんあります。例えば株式の相続をするときは、税金を安くしたいので評価は低い方が良いでしょうし、M&Aのように第三者に譲渡するときは高いほうが良いと考えます。評価方法によって高く算出されるものもあれば、低く算出されるものもあるのです。この時点で、企業評価というのは極めて曖昧なものであり、正解が存在しないことをまずは大前提として承知していただきたいと思います。

では、自社がいくらで売れるかといえば、正解はないのですが、「相場」は存在します。その相場の考え方をご紹介します。

「清算価値」という言葉があります。土地も機械もすべての資産を売却して現金化し、借入等の負債を全て清算して、最後に残るお金のことです。まずはこれを企業の一つの価値として評価します(≒時価純資産)。一方で、企業には無形資産といわれる、帳簿には載っていないものの人材やブランド等の有価値の資産があります。無形資産の評価を「のれん」と言います。M&Aにおける飲食企業の評価は、「清算価値」に「のれん」を加えた方法がよく用いられています。

では、まず飲食企業の清算価値から考えてみます。多くの企業は店舗を借りていますので、土地・建物というような価値のある資産を持ちません。店舗の造作は撤退時に壊してしまうので、評価が難しく、機械設備などは二束三文で買い取ってもらうぐらいの金額にしかなりません。預け入れている敷金や保証金は撤退時の費用を考えると満額評価は難しい可能性があります。そう考えていくと、飲食企業は価値のある優良資産を殆ど持たない独特な業界であることがわかります。それなのに何故売却価格がつくのか。それは、「のれん」が高く評価されているから、ということになります。

のれんの評価に用いられる最も一般的な指標が「EBITDA」(イービッター、イービットディーエー、エビターなど人によって読み方が全然違います……)です。「減価償却前の営業利益」という捉え方で概ね問題ありません。決算書に記載されている「営業利益」の金額に「減価償却費」を足すことで算出が可能です。これは、対象となっている事業が1年間でどれだけのお金を税引き前に残すことができるか、という指標で、買収企業が投資回収を検討するための目安となります。のれんは、EBITDAの3倍、というように検討します。飲食業界の相場は3倍です

高値のついた企業というのは、倍率が高かった可能性が高いです(もしくは多額の現預金を貯めていたかですが、あまり見ない例です)。この倍率は、対象企業の希少価値に依るところが大きく、具体的には規模が大きくチェーンとしてのブランドが確立されていたり、地域NO.1店だったり、ミシュランなどの明確な指標があったりすると倍率は高くなりやすく5倍から相手次第では7倍というような超高値も可能性が出てきます。但し、これはあくまで稀な事例で、3倍程度でお考えいただくのが現実的です。

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