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【ヒットゴーストレストランを発掘!】13坪・地下の居抜き物件でデリバリー月商1100万円越え!恵比寿のゴーストレストラン「ヒーローズキッチン」ができるまで

恵比寿駅から広尾方面へ徒歩5分ほど、明治通り沿いの地下1階、13坪ほどの焼鳥店の居抜き物件で営業するゴーストレストラン「ヒーローズキッチン」。3つの事業者が共同運営し、売上はあわせて月商1100万円を突破し絶好調だ。


 
ヒーローズキッチン
2020年12月にオープン。13坪の店内(キッチン部分は5坪)には、テンプルボーイ(東京都港区、代表:渡邉真祐氏)と、シルバースプーン(東京都港区、代表:大山愛加氏)と、Getable(ゲッタブル、代表:亀井勇希氏)の3者が共同運営する。フードコーディネーターの大山氏が代表を務めるシルバースプーンでは、スンドゥブやうどん、フライドチキンなど8業態を運営し、亀井勇希氏が率いるGetable(ゲッタブル)は、サラダ、チキンステーキ、唐揚げの3業態を運営。渡邉真祐氏のテンプルボーイが全体管理を行う。2021年4月の売上は合計11業態で月商1100万円を突破。住所:東京都 渋谷区 広尾 1-15-6 ヒーロービルB1F ※緊急事態宣言中につき、店内営業は縮小中

バーの間借りでオープンするも、売上ゼロの日も…。試行錯誤し、日商7万円に成長

―「ヒーローズキッチン」は3者の共同運営ということですが、どのような経緯でオープンに至ったのでしょうか。


(写真左からテンプルボーイ代表の渡邉真祐氏、シルバースプーン代表の大山愛加氏、Getable代表の亀井勇希)
渡邉氏:2020年12月にオープンした「ヒーローズキッチン」は、Getableとシルバースプーンと共同で運営していますが、それ以前から、2者とも別の場所で独自にゴーストレストランを営業していました。今回、縁あってひとつの物件をシェアして営業することになったというわけです。Getableは、もともと亀井くん個人が六本木のバーの間借りで始めたゴーストレストランが出発点でした。

―亀井さんがゴーストレストランを始めたきっかけは?

亀井氏:僕はもともと麻布十番の惣菜店で働いていました。2016年10月頃から、その店がデリバリーでの販売を始めたことで、店に来る配達員の方と情報交換をするようになりました。彼らからデリバリーについて話を聞くうち、「自分でもデリバリーで商売をしてみたい」と思うように。同時に、フードスタジアムのゴーストレストラン研究所の記事(https://food-stadium.com/feature/27782/)にも影響を受けました。デリバリーの市場がどんどん拡大している状況に可能性を感じて、思い切ってゴーストレストランの運営にチャレンジすることにしました。

当初は、デリバリー需要の高い恵比寿周辺で自分で物件を借りようと考えていたのですが、折しもタイミングが2020年春の緊急事態宣言と重なり、銀行から新規創業の融資を得ることが難しい状況になってしまいました。融資の判断には時間がかかるとのことで、まずは六本木にある知り合いのバーを間借りしてスモールスタートすることにしました。

そして2020年の7月にオープン。賃料などを考えて1日6万~7万円を売れば何とか利益が出る計算でした。ところが、初日の売上はたった5000円、そして次の日に至ってはゼロ。世の中ではデリバリーが広まっているのに、商品を売るのがこんなに難しいなんて……と頭を抱えました。さらに、追い打ちのように融資をお願いしていた銀行から「融資は下りない」と連絡がきて、その日はもう絶望の中で帰宅しましたね。家に帰って子どもの顔を見たら、勝手に涙があふれてきて……(苦笑)。前職の惣菜店は8年勤め、妻と3人の子どもがいる身なのでそれなりの覚悟を持って挑んだのですが、うまくいかない自分にふがいなさを感じました。融資は下りないけれど、何とかお金をかき集めて自分で物件を借りるか、このまま間借りを続けるか悩みました。そして、選んだのは後者。地道に間借りバーで営業を続けました。繁盛しているデリバリー店のページを研究したり、人気店のオーナーから商品に対するアドバイスをもらったりと試行錯誤を繰り返しました。2か月が経った頃からようやく軌道に乗り始め、1日6万~7万円の売上を確保できるようになりました。

「店が売りたいもの」ではなく「ユーザーが欲しいもの」を売るのがデリバリー成功の秘訣

―軌道にのったポイントは何だったんでしょうか。

亀井氏:従来の飲食店では、「店が食べてほしいもの」を提供すれば、それで集客することができました。しかし、デリバリーではそれは通用しない。何より大切なのはユーザー目線。写真の見せ方、メニュー構成。デリバリーを利用するユーザーが何を食べたいと思うのか?ユーザーの立場に立って求められることを考え、商品に反映する。それに尽きますね。

―その後の展開は?

亀井氏:安定して1日6万~7万円を上げられるようになりましたが、間借りではストック場所に限りがあり、バーの営業が始まる18時までしか営業できないため、これ以上売上を伸ばすには限界がありました。事業としてさらに展開するには、もう自分で物件を借りるしかない。そんな折、テンプルボーイの渡邉社長と知り合ったことがきっかけで、「ヒーローズキッチン」に場所を移すことになりました。

朝しか使われないホテルの朝食会場に着目。昼・夜にゴーストレストランとして活用

―渡邉さんと大山さんはどんな縁でゴーストレストラン事業をやることになったのでしょうか。

渡邉氏:ことの発端は、2019年に運営委託を受けた赤坂のとあるホテルでした。「東京オーブン」など飲食店を運営するノウハウを生かしてホテルの宿泊客に朝食を提供していたのですが、そのホテルの朝食会場は、朝食で使われたらそれきり、昼や夜は稼働しない。赤坂という一等地で厨房設備も揃っているのにもったいな、と思っていました。何か有効活用できないかと考えていたところ、ゴーストレストランをやりたいと考えていてたシルバースプーンの大山さんに出会いました。そこで、大山さんと協同してそのホテルの朝食会場を使ってゴーストレストランを開始しました。それが2020年1月のことです。

―ゴーストレストランをやろうと考えたのは大山さんなんですね。何故やろうと思ったのでしょうか。

大山氏:私は学生時代、7年間にわたってアメリカにいたのですが、すでに当時のアメリカにはフードデリバリーがありました。これは日本でもいずれ広まると感じていたことと、私も亀井さん同様、フードスタジアムのゴーストレストラン研究所の記事(https://food-stadium.com/feature/27782/)を見て影響を受けたのもあります(笑)。もともと私はフードコーディネーターとして活動をしていたので、商品のレシピは考えられる。また、デリバリーの配達業務で月70万円を稼ぐ、いわゆる“スーパー配達員”の知人がいたので、彼の知見も借りればゴーストレストランをやれる!と思い、あとはその場所だけがあれば、というところだったんです。

―そこに、渡邉さんが持て余していたホテルの朝食会場がハマったというわけなんですね。デリバリーの商品づくりでは、どんな点を意識して商品開発をしましたか?

大山氏:自身がフードデリバリーのヘビーユーザーだったこともあり、ユーザー目線でデリバリーを利用する人が求めるものを主眼に商品開発しました。海外で生活していた経験を生かして異国風のエッセンスを交えてオリジナリティを出しながら、「ぱっと『食べたい!』と思える品」を用意しました。また、いずれアルバイトを雇って現場を回すことを視野に入れていたので、技術が必要な調理工程は入れず、「温めて盛り付けるだけ」の誰でもできるオペレーションも意識しました。

コロナ禍が思いもよらぬ追い風になり、FC加盟店は80拠点に

―実際に赤坂のホテルでゴーストレストランの営業を始めてみてからはいかがでしたか?

大山氏:2020年1月からスンドゥブやうどん業態で営業を開始し、売れ行きは好調でした。そして春には新型コロナによる緊急事態宣言が出ましたが、外出自粛が追い風いとなり売上はさらに伸びていきました。もともと、将来的にはここで作った業態をFC展開できたらいいな、と思っていたのですが、コロナ禍でデリバリー需要が伸びたことで想定以上に早く、多くのFC加盟店も決まっていきました。

コロナ禍は追い風になった一方、厨房を使っていたホテル自体は宿泊客が激減して撤退することに。緊急事態宣言中のために休業している、テンプルボーイが運営する神田の「東京オーブン」、恵比寿の割烹など、転々とキッチンを間借りしながら移転を続けていました。その時期に亀井さんとの出会いがあり、「安心して営業できる場所が欲しい!」と思い、3者で共同運営できるキッチンを探しました。デリバリー需要の高い恵比寿や中目黒、六本木などで探し、この場所が見つかったという流れです。

―こうして3者が「ヒーローズキッチン」で合流したというわけですね。

渡邉氏:物件自体は去年11月には契約が済み、居抜きでキッチン設備も整っていたのですぐに営業できる状態ではあったのですが、保健所の検査やUber Eatsの申請に想像以上に時間がかかり、実際に本格始動したのは12月からでした。デリバリー専門で複数業態を営業すること自体、まだ例が少なかったので保健所の方でも検討に時間がかかりました。正直どれくらい売上が出るのかもわからず手探りだったため、通常は業者にお願いするような大掛かりな機材の搬入も自分達で行い、苦労しましたね。

ですが、初月から2者で月商600万円を達成。シルバースプーンも「Getable」も、すでに人気デリバリー業態として実績があり、かつ以前の店舗からそう遠くない場所への移転だったため、既存のお客様をそのまま引き継げたのがよかったのだと思います。売上は順調に伸びていき、4月は月商1000万円を達成しました。業態のFC加盟店舗数は累計で80拠点に。全てがコロナ禍で通常営業の自粛をせざるを得なくなった飲食店で、売上の補完として役立つことができています。

2者を見ているとデリバリーのやり方も色々で、シルバースプーンの大山さんは様々な業態をどんどん作って投入して、よかったものを回していくスタイル。一方で「Getable」の亀井くんは、ひとつの業態をひたすらブラッシュアップしていくスタイルで対象的です。いずれにせよ、“ユーザー目線”が成功の共通点のように思います。

―今後の展望は?

大山氏:まだまだ手探りで進めている状態で、やれることは沢山あるのではないかと思っています。新たな拠点も見つかり、今後もゴーストレストラン事業を展開していく予定です。そこで「ヒーローズキッチン」では仲間を募集中です。「ヒーローズキッチン」とは、様々な個性を持った「ヒーロー」が集まって力を発揮する場所をという思いを込めて命名しました。これからゴーストレストランに挑戦したい人、新たな「ヒーロー」をお待ちしています!

(取材=大関 まなみ)

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