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特集

飲食戦国時代を勝ち抜く業態開発! 森智範氏&下遠野亘氏&大林芳彰氏、繁盛店ヒットメーカー対談 中編

株式会社M&Co. 代表取締 森 智範氏、株式会社スパイスワークスホールディングス 代表取締役 下遠野 亘氏、株式会社Big Belly 代表取締役 大林 芳彰氏。繁盛店を連発するヒットメーカー3名による対談レポート。創業の経緯や、業態開発、プロデュースの事例を交えた繁盛店の秘訣などを語ってもらった。

※本記事は、1月24日、フードスタジアムは「焼肉ビジネスフェア2019」内にて、「飲食戦国時代を勝ち抜く業態開発~繁盛店づくりの秘訣をヒットメーカーが語る!~」のレポートです


【ゲスト講師】
(写真左から)
M&Co. 代表取締役 森 智範氏

スパイスワークスホールディングス 代表取締役 下遠野 亘氏

Big Belly 代表取締役 大林 芳彰氏

【司会】

フードスタジアム 代表取締役 大山 正 氏

■前編はこちら

 

実績で紐解く、ヒットする業態はどこから生まれるのか

大山:それでは次、業態開発のこれまでの実績の話をお願いします。

(浜松町の「tHe Good MoR~Ning」)

:昨年から浜松町で「tHe Good MoR~Ning(ザ グッドモ~ニン)」という店をやっています。福岡でミシュランのビブグルマンにも選ばれた、福岡県飯塚市の焼肉店「Mr.青木」とコラボし、居酒屋化。これをフランチャイズにしました。フランチャイズでは、料理人がいないという悩みを持つ加盟希望者が多いので、メーカーと一緒に料理キットを作っています。普通の業者に頼んだら絶対断られるハイクオリティな料理キットを、自社で作っています。プロデュースさせてもらうと、最初はいいのですが、レシピをお渡しして時間が経つとどんどんズレていってしまう。自社のキットで、この問題も解消されました。

コラボしている「Mr.青木」は月に約4000万円売れるホルモンが有名な焼肉店なんですが、そこの3代目が、毎朝、鮮度のいい肉を持ってきてくれます。ここではその肉と卸の肉を使っています。

(「tHe Good MoR~Ning」では森氏らしいユニークなメニューが目白押し)

大山:さらに、昨年9月、新橋にオープンした「蕎麦屋にぷらっと」は、福岡市薬院のミシュランビブグルマンの名店「赤問茶屋 あ三五(あさご)」とコラボして作った業態ですね。「あ三五」は普通に入ると1万円近くになる高級店では?

(新橋の「蕎麦屋にぷらっと」)

:夜は蕎麦会席を出していますね。更科蕎麦が名物なんです。「蕎麦はつゆ」というこだわりがある店なので、つゆはしっかり教えてもらって、アドバイスもらいながら、名物料理も含めて手がけました。

大山:新橋のニュー新橋ビルの3階ということですが、内装は変えたんですか?

:少しだけですね。もともとNBM(東京都港区、代表:岩本 教宏氏)の運営で、居酒屋だったんですが老朽化もあったのでカウンターだけ増設させました。

大山:(画像参照)こちらのカラフルでポップなお店は?

:「Big Umbrell(ビッグアンブレラ)」です。電力会社の依頼を受け、福岡の「ベイサイドプレイス博多」でオープンさせました。私は子供が4人おりまして、子供のお祝いができる飲食店ってほとんどないなと思ったのがきっかけですね。内装もポイントなんですが、コンセプトは定食屋なんですね。デパートの上の大食堂みたいなイメージで作りつつ、スタッフの半分は劇団員でアリスの格好などコスプレをして、キャラクターを演じてもらいました。もともとライブレストランみたいなところで、音響なんかも贅沢に使ってお祝い事をするということもやっていました。和食も洋食もポップなお皿で運んでましたね。そういうのを求められたので。

次、新宿の炉端焼鳥「お江戸あやとり」は、焼鳥「とりとん」などを運営するファイブグループ(東京都 武蔵野市、代表:坂本憲史氏)から依頼を受けてオープン。同社が肉を扱うのが上手だったことと、外国人をターゲットにしてほしいという要望を合わせて「劇場型炉端焼鳥」をコンセプトに作りました。

(新宿の炉端焼鳥「お江戸あやとり」)

大山:歌舞伎町のビルの6階にあるのですが、エレベーターの中からキラキラしていて世界観がすごいんですよね?

:そうですね。店内では焼き場が回転して、大きなしゃもじのような「掘返べら」に乗せてお客さまに料理を提供します。やはり外国人のお客様が多いですね。

(巨大しゃもじに料理を乗せてお客までサーブする)

業態の構成要素は、素材・文化・調理法の3つ!

下遠野:私の持論で、業態を構成する要素というのは3つしかなく、「素材、文化、調理法だ」というのはよくいっている話なんですけど、我々の基本の素材はお肉です。

例えば当社の「ロッキーカナイ」は、素材でいうと“お肉”、文化は“居酒屋”です。「総合居酒屋の皮を被った専門居酒屋」というテーマでやっていて、メニュー構成は総合居酒屋なんですが、刺身は全部お肉のお刺身。ポテトフライやお新香も、肉に関するエトセトラが絡んでいたり、鶏節が上にかかっていたり、そういう変換をしています。総合居酒屋だと思ったら、入ってみるとお肉屋さんだな、という具合です。うまく時代を反映した業態なのかなと思っていて、今は直営店で3店舗、高円寺、有楽町、田町でやっています。月商は、有楽町が25坪で800万円前後、田町は35坪で1300万円売。高円寺はみんなにやめとけって言われたんですけど、35坪で1100万くらいあります。サワー系のドリンクをメガジョッキで出しているのと、焼酎五号瓶の「ロッキーボトル」を1499円で出しているのがウリ。ボトルを入れると、シロップと炭酸が無料。昔は、焼酎は素材が悪くて梅のシロップを入れて飲んでいたというストーリーを元に、レモンとかライムとか色んなシロップをオンテーブルして、ご自分で調整して飲んでくださいっていう提案です。このシステム、1499円でアホみたいにベロベロになれるので(笑)、ご支持いただいていますね。客単価は2400円前後です。

(高円寺、有楽町、田町で展開する「ロッキーカナイ」)

大山:「カナイ」というのはどこからきているんですか?

下遠野:カナイはうちの取締役で金井という人間がいまして。仲間として好きなこともあり、彼を見ていたら業態を作りたくなってしまったんです。もう彼のイメージにぴったりに作りました。偶像など、イメージを置いておくと業態って作りやすいんですよ!

これは僕が業態を作るときの手法の一つなんですけれど、会社って社長の色やその場を仕切っている人の色が出るので、その人の偶像を作って業態を作るんです。ワタミから依頼を受けた時もこの手法を用いました。

皆さんの中で、もし、カフェを経営していて、新たに居酒屋がやりたくなった方がいたら、まず自分の社員や仲間で、誰か1人をイメージした業態を作ってみてください。そうすればブレない業態ができると思います。選ぶのはなるべく上の人がいいですね。自分とは全く違う偶像を作ったり、本当にいる人間のイメージで、こいつがもしも居酒屋をやったらという風に考えてみたり。ストーリーを作ってみると、筋が通った面白い業態ができると思います。

こいつが居酒屋だったらロッキー山脈行っちゃうな~とか、そんなノリで「ロッキーカナイ」ができています。お客さんには設定を説明しないとわからないのに、勝手に各国の置物とかも置きます。必ずブレない筋を通す、ストーリーを明確にするというのが大事ですね。

(うなぎ串がウリの「う福」)

下遠野うなぎ串屋の「う福」は別会社で運営しています。素材が「うなぎ」で業態は「串焼き」。僕は業態を作るときに新しいリソースを探るというのも大事にしていて。今回も海外の工場から特別に白焼きで日本に持ってこられる経路が取れたので、自分のリソースとして組み立てました。とはいえ、うな串は3、4年前からやりたくて、経路を探してはいたんです。うなぎの串って、飲み屋街でも有名店は何店舗かあるのに、なかなか広まっていかないなっていうのは感じていて。自分でもうなぎの串を食べることが多いので、チャレンジしたかったんです。現在は5店舗展開していて、代々木が30坪で平均月商が800万円ほどです。

大山:「う福」はうなぎ串以外のメニューもあるんですよね?

下遠野:店のテーマが「滋養強壮」で、焼き鳥、スッポン、スタミナ料理もあります。馬肉メーカーも経営しているので、もちろん馬肉も置いています。

(スパイスワークスの人気業態「焼肉寿司」)

大山:スパイスワークスの人気業態の「焼肉寿司」は、「肉寿司」と繋がりがあるんですか?

下遠野:「焼肉寿司」は「肉寿司」を株式譲渡する前に、今までのベースを生かして業態が作りたくて。「肉寿司」の業態を掘り起こしたら、本来は商標があるのでダメなんですが、焼肉屋さんが我々を真似していることがわかったんです。それなら逆に僕らは寿司から焼肉に、という発想でアプローチをかけました。肉を焼いて、焦げという調味料が加われば肉寿司はどう変化するんだろうという実験です。正直、現状は鳴かず飛ばず。最近一軒潰しました。

ただ最近は、いつも300万しか売れなかった店が800万まで伸び、肉寿司と同じ経路が辿れそうな予感がしています。「肉寿司」も7年前に急に爆発的な人気が出て、3年で27店舗まで駆け上がりました。新しく尖ったものをやる時って非常に時間がかかるんですよね。次の「肉割烹」はシンガポールでやっています。見にきてください。

(あきんどスシローの新業態「杉玉」もスパイスワークスがプロデュースしている)

大山:「杉玉」はあきんどスシロー(大阪府 吹田市、代表:水留 浩一氏)のプロデュース案件ですね。

下遠野:はい。「スシロー」って仕入れがすごいんですよ。特にマグロがすごい。ほとんど切り身でくるんですが、冷凍でもドリップがほぼ出ないんです。もう、これをどう活かしていくかだけをメインで考えました。「スシロー」はロードサイドを中心に出店しているので「杉玉」は駅前出店で進めました。立地選定もやらせてもらい、駅前ならお酒飲みやすいね、来店のハードルを下げたいね、という風に話をつなげて「鮨・酒・肴」のコンセプトを編み上げていきました。

業態を続けていくのって、タッグの組み方がすごく重要。僕らは基本10店舗展開、3年までは一緒にやりましょう、という話をしていて、それ以降は再契約させてもらう形にしています。自分自身に飽きがこないようにというのもあるし、線引きをはっきりさせたいというのもあります。プロデュースするからには、お金と人だけくださいというのも困るし、ある程度の自由も必要です。

皆さんも何かプロデュースとなった場合は、責任を持って自由な状態でやるのがいいかもしれませんね。中途半端に口出しされると少しずつおかしくなってボタンのかけ違いが生まれる。直している暇があったら、自分自身が手がけている業態をちゃんとやった方が儲かる!となってしまいますからね。

大山:下遠野さんといえば、最近だと「のれん街」も手がけられていますよね。

(上:「東京大塚のれん街」、下:「歌舞伎町レッドのれん街」)

下遠野:恵比寿横丁のシリーズで16個ほど手がけて、今、残っているのが10個くらいですね。「のれん街」でシリーズ化しているのは、「ほぼ新宿のれん街」、「歌舞伎町レッドのれん街」、「東京大塚のれん街」、「姫路のれん街」の4つ。横丁の中でも「歌舞伎町レッドのれん街」は新橋ビルにある飲食店街のような、ビル中にある横丁です。このタイプは店同士の横のつながりが生まれやすいんですけれど、それ以外の横丁は店舗型横丁と言って、深いつながりはほとんど生まれないです。ただ、何店舗かで集まって横丁を作ることによって、話題性だとか街の復興とか色んな意味が出てきて、注目も集まります。地方などでやられる際には1店舗でやらずに3店舗以上集めてやると、PRにもなります。

アガリコは韓国にも3店舗展開

(大林氏プロデュースの「パクチーファン」)

大林:パクチーの専門店をやりたいなと思ってプロデュースした新橋の「パクチーファン」は現在5年目。大衆酒場にあるメニューほぼ全てにパクチーを入れた業態です。まだブームになる前、パクチーと激辛を掛け合わせた尖がった業態「パクチーファン」を作りました。激辛火鍋をパクチーのソースで食べるのが目玉で、今でも元気に営業しています。

池袋の「アロハアミーゴ」は、ハワイアンレストラン「アロハテーブル」を運営するZETTON,INC(アメリカ ホノルル、代表:稲本健一氏)の新業態ということでお手伝いしました。僕は今、池袋で8店舗を経営しているので、稲本社長に「この物件やってほしい」と依頼を受けて。じゃあ業態を考えましょうということで、たまたまメキシコのテキーラ屋さんに行って、メキシコ料理やりたいなと思ったんです。

「アロハテーブル」は早朝と昼が強い業態で、夜があまり強くないということだった。テキーラをフックにしたメキシコ料理とハワイアンレストランを合わせることにした。わかりやすく「アロハアミーゴ」という店名を稲本社長が付けてくれました。スタートは厳しそうでしたが、オープンからもう3年経ち、月商800万円を売り上げていて好調ですね。

アガリコは「アガリコ韓国」として韓国にも展開しています。きっかけは偶然なのですが、僕は居酒屋協会に参加させてもらっていて、飲食店やメーカーの代表として8人で韓国に交流で行ったんですね。その時に知り合った通訳さんが日本に遊びにきて、池袋の本店にも来てくれたんですよ。それで、これはソウルで売れるっていうんですよ。もう、その話から4ヶ月後にはオープンさせていました。1店舗目が梨泰院、次に江南。来月は明洞もう1店舗増やします。

(「アガリコ韓国」は3店舗を展開する)

大山:韓国ではレストランを1つ作るのにすごくお金と聞きました。

大林:普通はそうですね。権利金というのが難しく、500万、1000万かかるので大変です。

今回、韓国のアガリコは「クッスンダン」というマッコリが有名な焼酎メーカーが運営をしているので、そこまでではないですね。一方、店舗の工事代金はめちゃくちゃ安いです。30坪でスケルトンから仕上げて600万、2週間で終わります。今年で4年目、噂を聞きつけてソウルで出店しないかという話も来ています。

大山:お話を聞いていると、森さんと下遠野さんは割とプロデュースの中でも、ストーリーづくりやメニュー作りなど、しっかり入って作り込むという感じですね。大林さんは作って、場所にあった業態を作るようなイメージです。

下遠野:私は相手の何が得意かを探って、そこを生かす、ないところを僕らが補うことが多いですね。

後編に続く~

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