―クラフトビールの醸造を始めることになった経緯は?
中野氏:クラフトビール醸造の想いは、当社でずっと温めてきたのものでした。戦略というよりは、純粋にお客さまに美味しいビールを楽しんでいただきたい、という気持ちで始まっています。具体的に動き出したのは2017年の春ごろ。どういった形で醸造を行うのか、店のコンセプトにあわせた醸造設備の手配はどうするのかを1から進めてきました。1号店となる、醸造所併設の「オットットブルワリー 浜松町店」は、10月に店が完成しソフトオープンしたのですが、ビールの醸造免許が下りたのは2018年2月8日ですので、自社オリジナルビールはそこから本格的に作り始めました。ソフトオープンでは、全国各地の他社ブルワリーのクラフトビールや、その他のドリンク、フードメニューを提供。その間、店内の醸造スペースでは並行して試作を重ね、ついにオリジナルビールが3種類完成したことで、3月5日に晴れてグランドオープンを迎えたのです。
「オットットブルワリー 浜松町店」
―ビール醸造のノウハウはあったのでしょうか?
中野氏:当社は和業態をはじめ様々なコンセプトの業態を展開していますが、ビール醸造に関してノウハウはなく、イチからの状態で開始しました。醸造の実務に関しては、醸造経験の豊富な北山と永井の2名を採用しました。
(写真左から、北山氏と永井氏。2人が同社のビール醸造を担う)
―お二人のこれまでの経歴を教えてください。
北山氏:「常陸野ネストビール」で知られる木内酒造にて、クラフトビールの醸造に携わっていました。ビール以外にも、日本酒の蔵元でも醸造の経験があります。
永井氏:アサヒビール直営のビアホールで接客を経て醸造の道へ進み、十条の「十条すいけんブルワリー」でクラフトビールの醸造補助の仕事をしていました。
―今後、どのようなビールを作っていく予定でしょうか?
中野氏:目下、8種類のオリジナルビールの完成を目指しています。「オットットブルワリー」では、まずは8種類のマスコットキャラクターを作成し、キャラクター1体につき、それぞれイメージに合わせたクラフトビールを開発します。ビールを飲んで「オットット」と足元のおぼつかない様子のゾウをはじめとした可愛らしいキャラクターを、ビールごとに設定することで、お客さまにとって味とともに印象に残してもらうような仕掛けです。
―店名の「オットット」はそこからきているんですね(笑)。
中野氏:はい、そうです(笑)。
北山氏:現在はすでに3種類のビールが完成しているので、残り5種類も、ビールがさらに美味しくなる夏前をめざして試作を重ねているところです。ヴァイツェンからAPA(アメリカンペールエール)、IPA(インディアペールエール)などの定番から、フルーツの風味のビールなども作っていきたいですね。
(「オットットブルワリー」の8体のイメージキャラクター。各キャラクターに合わせて、8種類のビールを開発する)
―ビール醸造で大切にしていることは何でしょうか?
北村氏:なによりは衛生面です。ビールの8、9割は洗浄によって決まると言っても過言ではありません。ビールは比較的アルコール度数の低い飲み物ですので、酵母に雑菌が付いてしまうとすぐに味に影響が出てしまいます。パーツの洗浄などは徹底的に行うことで、品質を管理。そのうえで、今や数多く存在するクラフトビールのなかでも、「おもしろい」と思ってもらえるようなビールを作っていきたいですね。
(「オットットブルワリー 浜松町店」内の醸造スペース。約14坪の広さに300lタンクを6つ備える)
―醸造したビールはどのようなかたちで展開していくのでしょうか?
中野氏:まずは「オットットブルワリー」での提供がメインです。醸造スペースには300lタンクを6個備え、それを使って、ひと月に最大で計9タンク分、2700lのビールを仕込むことが可能ですので、今後他業態でも提供する事も決まり、イベントでの販売も計画しています。いつかは、クラフトビールの本場、アメリカ西海岸で同社のビールが飲まれるようになったら最高ですね。「オットットブルワリー」のマスコットキャラクターが描かれたトラックがハイウェイを走る……なんてシーンが夢です(笑)。
―「オットットブルワリー」はどのような立地で展開しますか?
中野氏:まずは浜松町と淡路町の2店舗をしっかりと確立させていきたい。もちろん淡路町でも、浜松町店で醸造した当社のクラフトビールを提供します。どちらもビジネス街ですが、クラフトビールが受け入れられやすい土地という点を念頭において場所は選定しました。「オットットブルワリー」は地域密着店を目指していますので、浜松町店では、「大門ビール」のような地域名を冠したビールを作って地元の名物とできたらいいですね。
―これからの「オットットブルワリー」の展開に期待しています。今日はありがとうございました!