2015年国税調査の速報値で、日本の人口が1920年の統計開始以来、初めて減少した。一方、2015年の世界人口は、国連の統計でおよそ73億5000万人となり、2050年には97億人を突破することが予想されている。地球は、100億人近い人類の食料を養うことができるのだろうか。現在、人口爆発の結果、引き起こされる可能性がある「食糧危機」に注目が集まっている。
日本も例外ではない。国内の食料自給率(カロリーベース)は、農林水産省の発表によると、1960年代から減少を続け、2014年には39%となった。多くの食料を輸入に頼っているため、国を挙げて自給率の向上を目指しているが、芳しい成果はまだ出ていない。もし、世界的な食糧獲得競争が起これば、その被害を最も受けるのが日本だろう。こうした中、食糧危機の打開策として、クローズアップされているのが昆虫食である。
まだ実験的な要素も大きい昆虫食であるが、宮下企画(東京都新宿区、代表取締役 宮下正徳氏)が展開する高田馬場の「獣肉酒家 米とサーカス」では、3月下旬まで「昆虫食フェア」を開催している。期間中は、和食などにアレンジされた昆虫を使ったメニューを提供していく。その狙いについて、同社でPRを担当している宮下慧氏は「昆虫には、肉と同様のタンパク質やミネラルが豊富に含まれていて、脂肪分については肉よりも良質だと言われています。また、小規模な土地で飼育ができるため、環境への負荷を抑えたまま供給体制を整えることも可能です。まさに昆虫は、21世紀の食糧危機を救う可能性を秘めているといえるでしょう。現在、世界で少なくとも20億人が、昆虫を食生活の一部に取り入れています。しかし、かつて日本でも、イナゴや蜂の子、カイコ、セミなどが日常的に食べられていました。アジア、アフリカ、南米などで1900種以上食べられている昆虫を、再び日本で広げる機会にしていきたいと考えています」と話す。
期間中に提供されるメニューは7種類である。ラインアップは、「6種の昆虫食べ比べセット」(1,200円)と「イナゴの佃煮」(470円)、「カイコの茶碗蒸し」(480円)、「スズメ蜂の子の甘露煮」(500円)、「サソリネギマ」(500円)、「アリ卵の出し巻き玉子」(700円)、「アリチャーハン」(900円)という内容だ。
まず「6種の昆虫食べ比べセット」には、イナゴ・バンブーワーム・コガネムシ・カイコ・サソリ・ゲンゴロウの6種類の昆虫が並ぶ。しっかりと炒められたイナゴは小海老と似た食感を楽しめ、バンブーワームはフライドポテトのようにスナック感覚で食べることができる。また、中国では4000年前から王族が食していたというサソリは、コリコリとした強い歯ごたえがあり、香ばしい味わいがクセになりそうだ。そして、ゲンゴロウは外骨格を噛み砕いた後、柔らかい身にぶつかると、淡い苦みが口全体に広がっていく。辛口の日本酒などとの相性が抜群に良いという。
次に、アラカルトのメニューであるが「カイコの茶碗蒸し」は、出汁の効いた茶碗蒸しの中に、数匹のカイコが丸ごと入っている。柔らかく蒸されたカイコは、甲殻類のような味わいで、豊かな風味を堪能できるだろう。「アリ卵の出し巻き玉子」は、白い小粒のアリの卵が食感に変化をもたらしており、まろやかな甘みが出し巻き玉子に奥深さを加えている。
そもそも同店では、オープン以来、エゾ鹿・猪・馬・熊などのジビエ料理を提供してきた。野生の鳥獣を丁寧に調理し、自然の素材に対する敬意を持っていたため、昆虫食に対する抵抗も少なかったという。それは来店する客も同様で、積極的に同店の提案する昆虫食を楽しんでいるそうだ。今後のビジョンについて、宮下氏は「当初、『昆虫食フェア』は3月6日までの開催を予定していました。しかし、大変好評を頂いたこともあり、3月末まで延長をする予定です。今後、さらにクオリエィを上げて、新たな昆虫食フェアを開始することも考えています。昆虫の新たな可能性を、当店から世の中に広げていければ最高ですね」と語る。4月から、同店では「深海魚フェア」を開催する予定だそうだ。人口爆発で食糧危機を迎えようとしている今、同店から新しい食の可能性が広がっていくかもしれない。
(取材=三輪 大輔)
店舗データ
店名 | 獣肉酒家 米とサーカス |
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住所 | 東京都新宿区高田馬場2-19-8 |
アクセス | 山手線・東西線・西武新宿線「高田馬場」駅から徒歩1分 |
電話 | 03-5155-9317 |
営業時間 | 17:00~翌5:00 |
定休日 | なし |
坪数客数 | 17坪 65席 |
客単価 | 3,000円 |
運営会社 | 株式会社宮下企画 |
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