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今度は“従業員の受動喫煙”が規制対象に!!「職場における受動喫煙防止対策」が国会へ


「職場における受動喫煙防止対策」の改正案が国会へ提出!規制強化の懸念

昨年末、「東京都は当面の間、受動喫煙について条例化の意向はない」という朗報が舞い込んだ。このニュースに、都内で飲食店を営む経営者はもちろん、他県の飲食店関係者も含め、受動喫煙防止条例の流れがいっせいに広まるのではないと安堵した人は少なくないはず。そこへ、昨年の暮れ、厚生労働省が受動喫煙防止対策の大幅な強化を盛り込んだ労働安全衛生法の改正法案を国会へ提出したという。この不況下に今度は国による一律規制か。飲食店に及ぼす影響とは!?

“喫煙区域と非喫煙区域の仕切り”、”屋外排気設備の強化”、”空気の流れは・・・”などなど。ここ数年、神奈川県から始まり、兵庫県や千葉県でも、飲食店の喫煙環境を規制する「受動喫煙防止条例」に関する話題が盛んに取り沙汰されてきた。一方で、働いている人々の健康を守る”労働者の受動喫煙防止”という観点からの労働安全衛生法改正の議論が着々と進んでいることはご存知だろうか? すべての事業所(職場)に対策を義務付ける内容となっている。もちろん、”職場”とは飲食店も含まれており、店の運営に大きく関わる一大事だ。

もちろん、労働者にとっての職場環境は重要なテーマであり、受動喫煙防止についても取り組むべき問題ではある。ただし、”労働者の受動喫煙防止”とくくられているが、よく考えて欲しい。一般的な企業であれば社内を禁煙もしくは喫煙室を設けるなどの対応策も考えられるが、これがお客様を抱える飲食店だとしたら・・・。タバコを吸う客がいる中で、いかに従業員の受動喫煙防止対策の義務化を遂行するというのだろうか。今回の改正法案には特例が設けられ、飲食店は”当分の間、受動喫煙の程度を低減させるため一定の濃度又は換気の基準を守ることを義務づける”とはされているようだ。”当分の間”は配慮されるものの、果たしてその期間は!? 飲食店にとって難題且つ現実離れした規制が今度は国により制定されようとしている。しかも、同改正案についてはいつの間にか閣議決定までされ、既に昨年の臨時国会に提出されているという。現在は継続審議の扱いとなっており、今後、今年の通常国会で可決・成立すれば、最速では今年中にも事業者の義務として施行されることとなる。

さらに難事なのが改正法案の内容である。例えば「受動喫煙の防止」について、「対象となる作業場」は「屋内作業場その他の厚生労働省令で定める作業場」から始まり、「喫煙室の要件」も「厚生労働省令で定める基準に合致するもの」、「喫煙室外の措置」まで「喫煙を禁止することその他厚生労働省令で定める措置を講じなければならない」とある。また、特例部分でも、「特例として『当分の間、低減措置を講ずる』事業」に「厚生労働省令で定めるものを行う事業者」とあり、「低減措置の要件」でも「労働者の受動喫煙程度を低減させるための措置として厚生労働省令で定める措置」と、つまりはほぼすべてにおいて決める権限は厚生労働省が持つ、ということだ。はっきりいって、店内は関係者にとって”我が家”同然。タバコを吸う客も、吸わない客も大切である。そこに、”労働者の健康を”と、現場を知らない他人が土足で入り込んでくるのはいかがなものだろうか。

従業員の健康を守るという大義名分のためとはいえ、法律で認められている”喫煙”という行為に対し、国で一律に規制を設けるというのはお門違い。”努力義務”として啓発するならまだしも”義務”として制定するのは一方的すぎないか。

しかも、法案改正という大事を決めるに当たって当事者である飲食店関係者らの声がどれほど汲まれているのだろうか。例えば、神奈川県を始め、現状すでに”自主努力”として分煙装置の設置などコストをかけて取り組んでいる事業者らは規制に達しない場合、条件に従って、さらに追加投資を行なわなければならないのか。また、「当分の間」と記されているものの、コストをかけて対応したところで、どこかのタイミングで再投資もしくは無駄に終わる可能性もあり得るだろう。

実際、”労働者の健康を守るため”と言うが、現状でも、店内環境の改善を常日頃図り、客とともに従業員の健康を守ろうと努力している事業者は多い。また、この不況下で余剰資金などあるところの方が少なく、かといって選択肢を禁煙のみに狭めれば、逆に、さらなる客の外食離れが進み、店を維持することすら厳しい状況に追いやられることは明白。

以上を踏まえ、国会で審議するのであれば、より多くの人々の意見に耳を傾け、当事者となる飲食店事業者らの現状及び法案改正によって被る負担を深く理解した上で議論することが必要であり、具体的内容の提示もないまま改正法案を成立させようとする現状の動きはあまりにも拙速と言えはしないだろうか。

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