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飲食店でタバコが吸えなくなる? 神奈川県の飲食店オーナーに聞く! 罰則が始まり、その後の状況とは!?

2010年、神奈川県で受動喫煙防止条例が制定され、同年4月より施行。その後、兵庫県、千葉県と、他県でも同様の条例制定が検討されている不測の事態に、果たして飲食店はどのように向き合っていけばよいのか。そのひとつの参考とすべく、今年に入り、客席の広さが100平米超の店舗においては罰則金もスタートした神奈川県で、20年以上に渡り、アメリカンレストラン&バー「Troubadour」(たまプラーザ)、「BUBBLE OVER」(市ケ尾)の2軒を営むオーナーの鮫嶋勝昭さんに、同条例について話を聞いた。


-鮫嶋さんの店は、市ケ尾とたまプラーザで20年以上も続いているそうですね。長年通い続ける常連のほか、若者層やファミリーからも人気が高いとか。どのようなお店なのでしょうか?

僕らの店は、「いつもアメリカにいるような」というのがコンセプトです。外から見た感じでは分からないけど、入った瞬間に、アメリカから帰国した人は、「あ、こんなとこで飯食ってたな」とか。アメリカに行ったことがない人も、アメリカでは、こんなサービスが受けられ、こんな雰囲気の中で、こんなメニューが食べられるのか、とか。

-そもそも、アメリカンスタイルの店を出されたきっかけは?

もともと、僕自身、中学生くらいからアメリカが好きだったんです。広い大陸な感じが性に合っていたんですね。それから、僕はサーフィンをやっているんですが、波乗りの帰りに寄りたいのがアメリカンスタイルの店なんです。そんな店があったら、ごはんを食べて気持ちよく帰れる。当時、地元(あざみ野)にアメリカンスタイルのダイニングバーが1軒だけあって、箱は小さいんだけど、テラスがあって、ハーレーが置いてあって。本当にアメリカが好きそうな人がやっているっていう感じがかっこよかった。その頃から、地元で飲食業ができたらっていうのがおぼろげながらありました。

27才で初めてアメリカへ行った時にカルチャーショックを受けた。もともとアメリカの勉強はしていたんですが、行ったら、そのまんまで凄くかっこよかった。その時、ロスで一番旨いといわれているハンバーガー屋に連れてってもらったら、これが、まためちゃめちゃおいしくて。「トミーズバーガー」といって、今は7店舗くらいに増えましたが、当時は、1軒しかなかったんです。その1号店が最高なんです。チリバーガーが有名なんだけど、なにが凄いかって、イートインができない。駐車場はだだっ広いのに建物は小さくて。ダッシュで買いにいき、駐車場で立って食べる。なんだこれ、かっこいいなと(笑)。それからですね、本気で店をやりたいと思い出したのは。

-今の店は、どんな料理やサービスを提供しているんですか?

Troubadour 店舗外観

もともと僕は料理人じゃないので、自分が食べたいものを出しています。アメリカ人てなにがかっこいいかって、ディスプレイなんです。だから見た目は真似し、味は多少変えてます。本当のアメリカンベーシックって、そんなに旨いものじゃないから(笑)。でも、ハンバーガーはアメリカが断然旨いと思っています。

それから、サービスもアメリカのスタイルです。僕は、チップ制じゃないのが日本の飲食店の一番厳しいところだと思います。人件費が高いので、いい人材を雇うとすべて店の持ち出しになる。アメリカは、店が支払う固定給が低い替わりに、お客から貰えるチップは倍以上でしょ。仕事ができるサーバー(サービスマン)は余分に席を持てて、その分チップが増える。だから、皆、もの凄い勉強するし、サービスにも磨きがかかる。素晴らしいなと思いました。それに、アメリカのサーバーは、しつこくなく応対が上手い。とても親切ですし。ステーキハウスに行ったりして、違うタイプも食べてみたいなとサーバーに聞くと、皆、他店の情報を気軽に教えてくれます。あと凄いのは、僕なんか旅行で1~2週間行くんですが、着いた日の夜、ディナーに行ったとする。最後の晩に再び行くと、彼らは、まず顔は覚えているし、なにを飲んだかっていうのも、だいたい覚えているんです。それがプロフェッショナルなんだよね。

僕らの店もそんな風にしたくて、さすがにチップ制は無理ですが、社員には必ずアメリカへ行ける機会を作るようにしてあげたい。口で説明するより体感させた方が早い。ベーシックなアメリカ料理を見てもらい、なんでこんな料理があるのかということを知ってもらいたい。おいしくなくても関係ない。実際、行ったら、皆、感動してくれるに違いありません。

 

-社員は何名くらいいるんですか?

スタッフ...店内で

社員は11名。バイトも含めると33名かな。2店舗にしては多いですが、いいサービスをしたいので。人数が多ければいいわけじゃないけど、ある程度は必要。それに、やる気のある人は社員にしてあげたいと思っているので。できるだけプロフェッショナルを育てたいんです。それなら、社員にして安定させ、一緒にセールスを上げていこうと。そうしないとダメだと思うんですよね。

-これからの店の在り方としては?

今までと変わらず、リアルタイムのアメリカの情報を発信し続けられればいいなと。なにが流行っているとか、ビールの人気銘柄とか。音楽とか、サーフィンとか。僕はカリフォルニアが好きで、海沿いのサーファーたちのライフスタイルも発信したいと思っています。

 

-今回の本題である受動喫煙の話ですが、そんな風に丁寧に店作りをされてきたところに、突然、条例が施行された訳ですよね。実際、条例のことは事前にご存知でしたか?

飲食店組合に入っているので、年に1回開かれる講習会で規制ができるという話は聞いていました。100平米など細かい話は知らなかったですけど。

-その時、実感はありましたか?

いえ、ヘー、そうなんだという感じですね。今でもピンときてないですよ。神奈川県下の飲食店は、どこもそうでしょう。取組みとしては、飲食組合から配られた分煙のステッカーを入口に貼っています。店に来たお客さんには、喫煙、禁煙の席の希望を聞いていますが、それは条例以前からです。吸わない人も、吸う人も、尊重する。それが飲食店の基本でしょう。実際、まったくたばこの煙が駄目な方にも来店いただいています。

-実際、チェックしに来るんですか?

普通に来るようで、うちも先日、行政の人間がチェックしに来たそうです。僕はいなかったのですが。でも、1杯のコーヒーが400円程度、売上にして経費とトントンという店がざらの中で数百万円かけて改装なんて絶対無理。やるなら新店のみ。既存店は全額保証すべきでしょう。突然決めて、はい、罰則なんて酷い話です。うちの店は、たまプラーザの方はフロア分煙にしています。市ケ尾は1フロアなのでテラスを喫煙にしています。これまで通りの店内分煙をするには大改修しなければならない。だいたい規制の入り方がおかしい。100平米超がダメで100平米以下は努力義務って、なんの基準ですか。これが業態で分けると言われても納得いくものじゃない。

日本は、なんでも御上で決めようとする。隣で食事を始める人がいたり、子供がいたら吸うのを控えたり、互いに協力して弱者に対して努力しているわけだし、自己責任でいいじゃないですか。お客も、お店も、相思相愛で付き合うと大きな問題は起きないんです。互いに気持ちよく過ごせるようにしたいという思いがありますから。もし子連れの親が店に来て、その場でタバコを吸っていたら、その親に注意すべき。それは条例で管理することではなくマナーの問題です。

タバコは嗜みだったでしょう。スタイルとして憧れて、20才になって吸い始めたり。かっこよくないと思えば吸わないし。店としても、雰囲気的にタバコを吸っているクールなおじさんが集まってくるっていうこともありえる。今まで店を一緒に育ててくれたお客にノーを言うなんてできるわけがない。

条例のことを聞いた時、僕が思ったのは、スモーキングの店を作ればいいということ。そうすれば喫煙者は思う存分、ゆっくり心を癒せるわけでしょ。飲食店って本来そういうところだと思っているので。もちろん、この店が好きだといえばノンスモーキングの人もオッケー。実際、非喫煙者で、周りで吸われても構わないという人は多いです。本来、お客が店を選び、店がお客を選んでいるわけで、行政が決める必要はない。

-こういった状況下で、他県の飲食店にアドバイスするとしたら?

神奈川の時は急過ぎて、声を上げる機会がなかった。周知だってしっかりなされていたとは思えません。パブリックコメントを取ったと言われても、我々に伝わるように周知を図らなければ意味がないでしょう。事実、現状、神奈川県の飲食店は相当困っているし悩んでいます。他県へのアドバイスをといわれたら、条例が制定される前に、行政には、当事者に伝わるようにきちんと説明の機会を設けて欲しいし、周知を図るべきだし、個店は個店で、我々のような目に遭わないよう厳しい条例が決まる前に皆で声を上げるべき。まとまった意見でないと聞き入れてもらえないでしょうから。

とにかく、これまでだって、自分たちの店を大切にし、お客を大事にしているところは、当たり前のようにその店に合った分煙対策に取り組んできたんです。実際、それで問題なく何十年も店が続いてきている。そこを、もっと尊重して欲しいと思います。

 

【協力店舗】

  • Troubadour(トルバドール)
  • BUBBLE OVER(バブルオーバー)

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