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インタビュー

【独占インタビュー】 “大胆かつ劇的に―”。新生DD ホールディングスの3大スターに直撃インタビュー!松村厚久氏×稲本健一氏×貞廣一鑑氏


世界を相手に”時代の波”を掴む

―確かに、アメリカなどと比べれば日本のレストランは65万軒と圧倒的に多い。
日本の外食産業は、今後もう一度大再編が起こってくると予想されます。
そうしたなかで、御社における稲本さんの存在というのはすごく大きいのではないでしょうか。例えば、これだけ海外に人脈を持っているのは、国内で稲本さんだけではないですか?

稲本:シェフ関係で言えばそうかもしれないですね。そこは時間をかけてやってきましたから。一日3回フルコースを食える頑丈な胃を持っているのも功を奏しました(笑)。
僕らは後追いするのが嫌なんです。ここにいる3人は特にそうなんですが、僕も貞廣さんも時代の波に乗るという意味ではサーファーというか、ウェーバーなので、これからどんな波が来るかというのは読めているつもりなんですよね。いつも、誰よりも先に立って動きたいし、時代を変える側にいたい。そんな時、松村と組むことで、彼が旗を振って好きにやらせてくれているという現実はすごく大きな事です。

松村:外食経営者の中でも、この人(稲本氏)は群を抜いて世界中で相当遊んでいるんですよ(笑)。いかにもビジネスライクにネクタイをして、「宜しくお願いします!」と頭を下げるようなスタイルじゃなくても、大きな仕事はできるんだという見本です。

―これから、どんな大きいウェーブが来るとお考えですか?

稲本:僕が社内で大きな役割を担っている「海外」という側面でいえば、いま、「飲食」以上に日本が世界を相手に攻められるコンテンツはないですね。
日本食のオリジナリティ、そして日本人の舌感とホスピタリティは、間違いなく世界を相手に打って出られるレベル。世界中の人が、日本人の作ったものが食べたくて、日本人がどんなクリエイティブをするのか知りたくて、ドキドキワクワクして待ってくれている。本当に計り知れない可能性を感じますね。
今、多くの日本人シェフがパリを主戦場に切磋琢磨しているのですが、アメリカでも、ダラスやヒューストンなどの都市で頑張っている日本人シェフがいます。今の日本の飲食業界は、まだまだそのような状況のキャッチアップが不十分ですね。

―これから、そういったシェフを束ねていくようなビジネスモデルを作るということですか?

稲本:あるいはそういう方向も考えられます。
従来の外食企業がやってきたのは、日本の食材を輸出するというビジネス。でも僕が今後やりたいのは、日本の技術とサービス力を世界に輸出するビジネスです。「築地直送」もいいけれど、今まで誰もやってこなかった「イートローカル」をテーマにした和食に挑戦したい。今冬ハワイのワイキキにオープンする日本食レストラン「地喰 ZIGU」 のコンセプトは、日本の食材に頼らず、” LOCAL=地のものを EAT=喰う”です。

―たしかにそれは今までどこもやってこなかったことですね。

松村:はい。ゼットンは名古屋に”DOMESTIC”をテーマにした「ドメ」という店を運営していますが、とても素晴らしい業態です。「ZIGU」は、いわばそれのアメリカ版ですね。

稲本:アメリカのハイエンドな人達が持っている”EAT LOCAL”というアンテナに対して、まずはハワイの「ZIGU」一号店でトライアルしようと。そこで形を作った後は、カリフォルニア、もしくはNY、あるいは内陸部からメインランドを一気に攻めていくかもしれません。

世界における今後の「飲食」

―なるほど。今後「売り上げ1000億」を実現した時、御社における「飲食」の位置は一体どんな様相になっているんでしょうか。

松村:それが見たいからやっているんですよ。この「売り上げ1000億」という目標は最短最速で一日も早く実現したい。気が付いたら、僕もイナケンも貞廣さんも年齢が50という大台に乗っており、時間がないわけです。これからはもっともっとスピードアップしていかなくてはいけない。

貞廣:僕は社内では子会社の社長という肩書ですので、お二人と立場が違います。ですので、これから僕の言うことには齟齬があるように思われる可能性もあるのでご容赦ください。
今「飲食の位置」とおっしゃいましたが、僕自身は、「飲食」という枠組み自体がもう終わっていると思います。

―そこまで言いますか(笑)。

貞廣:なぜなら、この少子高齢化の世の中、若い子達が「カッコいい」と思うものでないと、これからはもうダメなんですよ。そして、今の30歳くらいまでの若い世代が、「外食ベンチャー」や「飲食ベンチャー」の世界に憧れているとはとても思えない。そこには、”断絶”というくらいの決定的な壁があると思います。

僕らのようなディスコ出身の人間からすれば「カッコいい」を創りだすことに対する一定の価値観と自負があるわけです。しかし、今流行のブランド輸入ビジネスのように、大手の出版社やデベロッパーがそのビジネスと組んでしっかりバックアップし、オシャレでクリエイティブなようにアピールしたら、表面的には「カッコいい」ものに見えるし、若い子達が先導されてしまう。
僕らはその辺を突き崩し、変えていかないといけない。このボーダレスな世の中で従来通りのこじんまりした世界観の中にいては、「飲食」もしくは「外食」というジャンル自体がいずれなくなると思います。
業界を悪く言っているようですけれど、「飲食」は今こそイノベーションを起こすために皆が集まってやっていかないと、若い子達には見向きもされない仕事になってしまう。僕はそう危惧しています。

―なるほど。では、貞廣さんにとって「クリエイティブ」の定義とはいったい何でしょうか?

貞廣:僕は”クロッシングビジネス”と言っているんですけど、やはり残された領域は「社交場」ということになるでしょうね。今で分かりやすく言えば、「ACE HOTEL」(欧米各地に展開するデザインホテルグループ)。彼らのような今までにない仕掛けを産み出せる人達は、おそらく今後も誰もできなかったことをやってのけると思います。

実は今年、はじめて「よさこい祭り」に参加させてもらったんです。加えて言えば僕は「祭り」も大嫌いなので(笑)、最初はホントにビクビクしていたのですが、その際に地元の方々が一体感を持ってやっている様子を見て、「あ、これは街の社交場を作るっていうことなのだな」と気付きました。
このような仕掛けこそ、DD ホールディングスがこれからやらなくてはいけないことだと思います。

―ところで稲本さんにお伺いしたいんですが、今の若い子達、外食のベンチャー経営者に憧れていると思いますか?

稲本:これは個人的な意見ですが、僕は「ジンギスカン」とか「パンケーキ」のような爆発的なブームは今後もう起きないと公言していますし、経営者とか特定の誰かに憧れるっていう時代は金輪際もう来ないんだと思う。ただ、強い「個」や「キャラクター」をどれくらい持てるかという意味でいえば、ここにいる3人に憧れる若い奴らはそれなりにいると思いますけどね。

僕が注目している若い奴らの動きと言う意味では、例えば東京を一回も経由しないで地方からいきなりヨーロッパに打って出て、世界を渡り歩くような若いシェフたちの感度はものすごく高いし、こういう奴らの動物的な本能に対して、僕達はここで見ているだけじゃなくて、こちらから出向いていって彼らに共鳴してあげないといけないと思う。
それから、世界的な傾向としては、スペインの片田舎でやっていた小さなキッシュの個人店が、一気にデカい企業になってドーッと世界中に広がっていく、そういうビジネスの隆盛。これが今の時代のスタイルなので、その辺を我々としてはどう考えるべきか、もっと感じないといけないなと思いますね。少なくとも、僕らは時代に変化を強いられることは嫌で、自ら変わっていくということがすごく重要なわけですから。

―ありがとうございます。それでは、最後にお一人ずつ今後のビジョンを伺えますか。

松村: 今回、外食企業で初めてクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんに「DDホールディングス」のCI(Corporate Identity:企業文化や独自性を統一されたイメージやデザインで発信し社会と共有すること)を依頼し、非常に素晴らしい仕上がりとなりました。佐藤さんはユニクロや楽天など、超一流企業のCIを制作してきた世界的なアートディレクター/クリエイティブディレクターですが、今回、当社の社名変更に関わるCI制作を全てお願いしています。

そうしたこともあり、社内の士気は今非常に高まっています。かつてうちの役員から、「イノベーションを起こすには若者・よそ者・バカ者が必要だと言われていますが、これを当社に鑑みれば、若者=新卒社員、よそ者=中途社員、そして最も希少性の高いバカ者=外食業界一の歌舞伎者である松村社長がいる。ですから全く心配ありません」と言われたことがあります(笑)。
今回、会社の体制がさらにオープンになりましたので、各社が互いにぶつかり合い、ガリガリとやり合いながら、これまでとは違う新しい文化を醸成していけたらと思っています。売り上げ1000億達成から見える景色を一日も早くこの目で確かめたいですね。

貞廣:「大胆かつ劇的に」。こんなシンプルな言葉でメッセージを伝えられる松村さんは、本当にすごいリーダーだなと思います。
僕の今後のビジョンとしては、松村厚久という一人の人間と一緒に、世の中を動かすような「社交場」のプランを創ること。それが夢ですね。

稲本:いま、これだけのメンバーが揃い、我々はここからが勝負です。今後はさらに新たな顔ぶれが加わる可能性もあります。ただ、船頭が多い船というのはビジネス的にも一番よくない。”松村が「イエス」といったら「イエス」である”、それを徹底する船がいまここにあり、松村が圧倒的なリーダーとして存在しているということだけは皆さんにお伝えしておきたいですね。

―ありがとうございました。

→<<前編>>「オープンイノベーション企業」の意味

(構成/中村結 写真/竹原トモロヲ)

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