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インタビュー

株式会社ラ・ブレア ダイニング 代表取締役 高橋知憲氏


―「アメリカでお店を作るまで」のお話を伺えますか。

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お店をつくるにあたって、初めは日本からアメリカへ行き、しばらく滞在する…という形でした。でもやはり退路を断つというか、「何か後押しがないと決心がつかない」と思い、英語はほとんど喋れませんでしたが、アメリカで2008年に「La Brea Dining California ,Inc」を設立し、家を借りました。「家を借りる」と家賃が発生しますよね。だから「早く店を作らなきゃ」と。当時、家族は日本から呼び寄せず、僕1人で単身赴任をしていました。

 ―外国であるアメリカでお店を作るのは大変だったと思います。一番ご苦労された点は?

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実はアメリカで会社を設立するのはそんなに大変じゃなかった。結構かんたんにつくることができるんですよ。でも、信用のない外国人にはいくら貯金残高があっても、「日本で店を経営している」と言ってもなかなか物件を貸してくれない。そこに一番苦労しましたね。物件を探し、歩いて申し込みに行っても何度も断られました。でも、何度も不動産屋に通ううち、担当者が信頼してくれるようになって。駆け引きもできるようになりました。そして、担当者が所有している物件を貸してくれることになったんです。3 rd St という、LAの中でも人気のエリアに物件を借りることができました。
アメリカでは、レストランでないスペースをレストランに用途変更するのは本当に大変で、お金も時間もかかります。結局、スケルトンから新規でレストランをオープンさせるまで物件契約してから一年半かかりました。それでも自分は3rd stにこだわりました。
LAでお酒を出す店をオープンするには、「Liquor License (酒を出す許可証」が必要になります。3rd stは「LAで一番リカーライセンスを取るのが時間がかかって難しい」と言われている場所だったんですよ。どうしても3rd stにこだわりたかったので、覚悟して出店しましたが、途中で「リカーライセンスが降りないかもしれない」とか、「まだ一年はかかるかもしれない」という状況になった時は本当にしんどかったです。
「リカーライセンス」を取得するには市の公聴会に出席し、役員や住民から成る公聴委員全員から承認を取らなくてはいけないんです。でも、なぜかどうしてもずっと反対する人が1名だけいて。その人を説得するのに1年2カ月かかりました。

―工事は順調だったんですか?

いえ(笑)工事はスタートしたものの、建物が「Historical Building(歴史的建造物)」だということが判明し、工事がストップ!結局、半年後に「仕方がないからもういいよ」と市から許可が出ました。アメリカでは手続きなどが日本のようにスムーズに進まず、時間がかかるんです。そうこうしている間に市のRegulation(規則)が変わって、半年かけて作ったトイレが「NG」になって作り直しになってしまいました。

 

―外国だと日本のように手続きなどがスムーズに進まないことも多く、大変だったでしょうね。ところで一軒目のお店、2010年にオープンした「Robata JINYA」はハリウッドのど真ん中にあるんですよね?ハリウッドスターも多く来店するとか。

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ええ。一軒目のお店にはかなりこだわりがありました。「現地のアメリカ人が評価してくれる店をハリウッドのど真ん中でやりたい」という想いがあって。世界に発信できるし、場所に強い思い入れがありました。やはりブランディングができないと意味がありませんから。ハリウッドスターやシンガーなどの著名人も来店します。パパラッチが写真を撮ろうと待ち構えていることもありますよ。
―「Robata JINYA」のコンセプトを教えて下さい。
内装はクールジャパン、料理は炉端焼きと寿司がコンセプトです。“これまでの日本レストランは「高い」というイメージがあったと思うんですが、うちは「カジュアルに行ける」のをコンセプトにしているんですよ。客単価は30ドルほど。客層が90%白人なので1時間ほどでどんどん回転します。

 

 

 

 

―「Robata JINYA」は オープンして数年で“Restaurant Award 2011 in LA”(ロサンジェルス地域を対象としたレストランの賞)で「Best New Hidden Gem」(隠れ家レストラン)に選ばれました。アメリカで成功した秘訣はどのような点だったと思われますか。

「アメリカ人仕様にすること」ですね、お店を出す前に工事や許認可の遅れで1年間はしっかりとLAの市場調査ができたので、アメリカ人に支持されてる店、好みの味などを研究しました。そこで気付いたのが、「日本のものをそのままアメリカに持って来て、美味しいでしょ」では駄目だということ。もちろん、「日本人が食べても美味しい」が基本ですが、アメリカ人の好みに合わせるアレンジは必要だと思いますね。

例えばロールすし、日本人はあれは寿司でないとかいろいろと言いますが、でもアメリカ人のほとんどの人はロール寿司が好きです。アメリカで寿司ブームと言っても、ロールすしと比べたら握りずしはまだまだ一部の人に好まれてるのが現実です。まずはアメリカ人の好きなロールすしを食べてもらい、店と信頼関係ができてから、日本の本物の本格的な寿司を紹介していけばいいと思いますよ。
サービスも研究しました。アメリカではとにかく「迅速なサービス」が大切です。「Robata JINYA」は55席ですが、ホールスタッフは7~8人ベタ付け。キッチンにも7~8人配置し、すぐにお客様に対応できるようにしています。

―スタッフの方はすべて日本人ですか?

日本からキッチン・ホールスタッフを9人連れて行っていますが、7割はアメリカ人やメキシコ人のスタッフです。スタッフとのコミュニケーションが難しいですね。それと、対業者とのコミュニケーションも課題です。

 

―今後の展開や目標をお聞かせ下さい。

5月には、ラーメンと炉端をメインにしたフランチャイズ店をNYにオープンします。ほかにはサンフランシスコ・シアトル・ラスベガス・ダラスにもオープンする予定です。7月にはジャカルタにも出店します。それと、今年中にLAで新業態のお店をオープンする予定です。
2019年6月までに全米で60店舗、アメリカのすべての都市に1店舗オープンしたいですね。世界では100店舗オープンするのが目標です。
(インタビュアー・松宮史佳)

 

 

高橋知憲氏プロフィール

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愛媛県出身。40年以上続く老舗「割烹むさし」を経営する両親のもとで育つ。大学進学後、上京。飲食業店でアルバイトを始め、「飲食業界で働くことの楽しさ」を知る。大学を卒業し、「会社というものを知りたい」と化粧品会社に1年限定で就職。その後、都内の割烹やレストランなどで料理人として修業。大学時代に行ったLAに魅せられ、「いつかアメリカに進出したい」という想いから2000年に有限会社(現在は株式会社)「LA Brea Dining」を設立。さまざまな苦難を乗り越え、2010年「Robata JINYA」をハリウッドのど真ん中にオープンし、夢を果たす。同店は“Restaurant Award 2011 in LA”で「Best New Hidden Gem」(隠れ家レストラン)を受賞。今後も海外での活躍が期待されるインターナショナルな経営者の1人。
LA Brea Dining : http://www.la-brea-dining.com/company/index.html

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