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インタビュー

有限会社リヨンブルーアンテルナショナル 代表取締役 安生 浩氏


【interview】安生 浩氏(有限会社リヨンブルーアンテルナショナル代表取締役)
「Pont du Gard(ポンデュガール)」をはじめ、銀座エリアにワイン業態を5店舗手掛け、ワイン酒場ブームの先駆けとして業界に大きな影響を与えた安生浩氏が「外食アワード2011」を受賞。東京に新たなワインシーンを創造した安生氏、そのコンセプト誕生の背景に迫る!

今年で8回目を迎える「外食アワード2011」が先月発表され、有限会社リヨンブルーアンテルナショナルの安生浩氏が、外食事業者部門で見事受賞した。「Pont du Gard」(ポンデュガール)や「Gare de Lyon」(ガール・ド・リヨン)をはじめ、“Vin de Table=テーブルワイン”をコンセプトに、カジュアルワイン業態の展開で成功を収めている安生氏。業態開発のヒントは、パリの超人気ネオビストロにあったとか。1号店誕生の背景と、繁盛店で居続けるための秘訣などを伺った。

―まず、外食アワードを受賞された、ご感想をお聞かせください

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正直なところ、今回、電話で受賞したことを聞いたのですが、この受賞で「外食アワード」という表彰制度を初めて知りました。ですので、嬉しさというよりも「なぜ僕が?」という驚きの方が大きかったんです。でも、僕が受賞したことが、一緒に働くスタッフたちのモチベーションをさらに向上させるきっかけになったり、彼らが独立や別のステージに移る際に、何かプラスになるのであれば、それはとても嬉しく思います。

―では、ワイン酒場ブームの先駆けとして、“Vin de Table=テーブルワイン”コンセプトで、ワインをカジュアルに日常化させる業態、1号店「Pont du Gard」(ポンデュガール)開業までの経緯をお聞かせください

僕の実家は酒屋を営んでいますが、卒業後は旅行会社に就職しました。添乗員として海外をいろいろと周りましたが、5年務めた後に退職しました。その後は飲食店などでアルバイトもしながら、大好きだったサーフィンに明け暮れ、あっという間に5年が経ちました。リミットとして据えていた30歳を迎え、その後の身の振り方を考えるようになり、鉄板焼き屋で2年半ほど修行をし、33歳でフランスのリヨンへ留学することにしました。リヨンの地を選んだ理由は、パリよりもリヨンが良いと留学相談で勧められたからです(笑)
現地では、ホームステイをしながら学校へ通っていましたが、空いた時間などはワイン畑を訪ねたりして、向こうでの暮らしぶりは33歳の僕にはとても新鮮でした。しかし、3ヶ月が経つころ、父が病気になり日本へ帰国しましたが、他界してしまったのです。
夫婦仲良く営んでいた酒屋を母一人に任せるわけにいかず、当時、兄弟のなかで定職に就いていなかった僕が、母と2人で酒屋を続けることになりました。店を任されてから、経営が厳しい現実を把握し、打開策も考えるようになりましが、その時たまたま手にしたワイン雑誌に、僕は釘付けになってしまったんです。
留学時代に見たリヨンの景色が一気に蘇り、楽しかった当時の記憶が鮮明に思い出されました。それが、パリの「le verre vole」(ル・ヴェール・ヴォレ)の記事でした。コップに並々と注がれたワインを、とにかく楽しそうに飲む店の風景を見て「これだ!」と確信したんです。酒屋の僕には手元にお酒もあるし、知識もある。このスタイルを日本で実現できれば、酒屋としても、店としても成り立つのではと思い「ポンデュガール」をつくりました。

-では、その「ポンデュガール」が成功を収めた理由は、具体的にどこにあったとお考えですか? また、繁盛店で居続けるために大切なこととは、なんですか?

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ひと言でいえば、運が良かったんだと思います。物件を探しはじめて3日で見つかったし、近くに親しい友人もいたため、いろんな面で支えてもらいました。オープン直前までメニューも決まらず、料理のクオリティーも“良い”といえる状態ではないのに、それをちゃんと指摘してくださるお客様が多く、お客様に育ててもらった面も多々あります。
加えて、同じようなカジュアルなワイン業態が増えてきて、日本でのワイン消費量が増加したタイミングの良さから、メディアにもたくさん取り上げて頂きました。特に、2号店の売上げが落ち込んだとき、ライターの大谷浩己さんが記事を書いてくださったんです。この影響力は大きく、再生させるヒントを頂いたようでした。それに、当時はまだビオワインを打ち出すお店も少なかったですから、その点でも注目されたと思います。……やはり、運がよかったんです。
しかし、今はオープン当初とは社会の状況も随分変わりました。リーマンショック以降、景気は右肩下がりで、昨年は東日本大震災も起こりました。一方で、ソーシャルメディアなどの登場により、巷には情報があふれている時代。消費者は、より店を慎重に選んでいると思います。
そんななかで人々は今、価格の安さ以上に、飲食店にも“ふれあい”を求めていると感じます。安いだけの店は選ばれない、スタッフとお客様の距離感が重要でしょう。特に新規のお客様には、常連さんとスタッフが楽しく話す姿を見て、自分達も店に通い続けることで、あんな風に話ができるようになる、と“通う価値”を感じてもらうことが必要だと思います。だからといって、慣れ合いすぎてはいけません。このバランスが要ですが、うちの常連さんは、そうした“さじ加減”を理解してくださっています。そのお陰でよい関係性を保ち、長いお付き合いが出来ています。今は割合からして半々くらいなのですが、僕の理想は新規:常連=7:3、これなら愛され続ける店づくりが可能だと思うし、ここまで継続できている理由の1つだと思います。

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