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6月1日、フュゼ中村志郎氏の4店舗目となる「乾杯食堂 くあるた」が大崎にオープン。全店舗造作をスタッフによるDIYでこなす、セルフビルド型レストランに注目

看板から外壁、ドアに至るまで全てスタッフのDIYによる外観は、素朴な温かみを感じさせる
壁には珪藻土が使われ、ゆったりとテーブル席が配置されている。奥の部屋は個室対応が可能
手前左「元祖!アンチョビポテト」、右「マグロと長ネギの味噌オリーブ和え」(734円)
「ゴルゴンゾーラと田楽みその里芋餅」。里芋餅は、千葉県香取郡出身の店長のお袋の味だという
左:店長の大木拓也氏。右:フュゼ代表の中村志郎氏

(取材=中村 結)


6月1日、大崎駅西口から徒歩7分の百反通り沿いに「乾杯食堂 くあるた」がオープンする。経営は二子玉川で19年目を迎える老舗レストランバー「VANILLA BEANS(バニラビーンズ)」をはじめ、目黒の「sibafu(シバフ)」などを手がけるフュゼ(東京都世田谷区、代表 中村志郎氏)。系列4店舗目となる同店では、従来の無国籍スタイルの創作料理に加え、車麩やらっきょうといった日本食材を多く取り入れ、和風カジュアルを意識したメニューを構成。また、これまでの2店舗同様、内装・外装と水道や配管といった設備の一部に至るまで、約8割を自前で賄っており、同店ではさらにトイレスペースの便器まで自分たちで設置したという徹底ぶりだ。フュゼでは、新店舗開業における初期投資費用を軽減すると同時に、スタッフの店への愛着を高め、モチベーションアップやコミュニケーション力の向上に寄与するなど、社員教育的な要素を兼ねたこの手法を「DIO(Do it ourselves)によるセルフビルド型飲食」と銘打ち、ひいては投資金額の負担をなるべくお客に転嫁しない飲食店づくりを目指している。

オーナーの中村志郎氏は、父親の転勤で幼少期の数年間をヨーロッパで過ごした経験を持つ人物。大手重工業に就職した後、25歳で学生時代の友人と共に「VANILLA BEANS」を立ち上げた。数年後、創業メンバーの脱退に伴い組織の代表となってからは、同店を24坪・39席で平均月商560万前後を維持する地元の人気店に成長させている。社員の独立志向に伴い、続いて2012年にオープンした目黒の「sibafu」は、平均坪月商20万をマーク。「4店舗やっておいて何なんですが、うちにはコンセプトといえるものは特にないんです」と中村氏は笑う。「なぜなら、友達を家に呼んで“楽しかった、また来るよ”と普通に言ってもらえる人間なら、業態を尖らせなくても、飲食店1店舗は必ずできるはずと僕は思うから。そういった意味では、当たり前に居心地がよくて、酒も食事も美味しくて、“この街、なんかいい店ないの?”と聞かれた時に、パッと名前が浮かんでもらえるような店であり続けたい。それが僕たちの目指す姿です」と語る。

「くあるた」では、系列店の人気メニューである「元祖!アンチョビポテト」(572円)や「ベトナム風生春巻き」(626円)「メキシカン唐揚げ」(626円)などの無国籍創作料理に加え、店長大木拓也氏のソウルフードだという“里芋餅”をアレンジした「ゴルゴンゾーラと田楽みその里芋餅」(626円)や「大葉明太のだし巻き卵」(734円)といった和の要素を強めたおつまみが充実。既存店同様、パンやピザ生地、ドレッシングや調味料に至るまで、できる限りを自家製にこだわり、“外食と自宅ご飯の中間”といえるようなホッとする味わいに仕上げている。アルコールには「遠野麦酒」のペールエールや、「九十九里オーシャンビール・こしひかりライスエール」の瓶ビールなどのクラフト系、「醸し人九平次」や「月の井」などの日本酒に加え、ビオワインなどを赤白12種類用意。17坪30席とゆったりめに配置したテーブルで、和洋折衷いずれのシーンにも対応した食事の提供を目指す。店長の大木氏は「ちょっと一杯飲むだけでも構わないので、その日の気分に合わせた料理とお酒で、お客様の貴重な時間をうちで楽しく過ごしてもらえたら」と語る。

今回の開業費は、店舗取得費用や設備、備品等全て込みで総額約700万円程だという。前店舗開業の際、方針を理解してくれた業者に引き続いて発注が可能だったことで、作業展開はよりスムーズだったと語るオーナー中村氏。DIYによる自前工事にこだわる理由について、「基本的には予算の都合が一番の理由です。また、僕が子供の頃、経済的に貧しかった東欧で人々が何でも手作りしているのを見て育った経験も大きいと思います。ですが、うちでは店作りも飲食業の一環だと捉えているんです。例えスタッフが“店を作るのって大変”と頭で思っていても、いざやってみると実感はもっとリアルに大変。それを感じて飲食への想いを強めてもらいたいし、僕自身も、スタッフとみっちり数ヶ月付き合うことで、コツコツマイペースに仕事を進めるタイプなのか、取り敢えずガーッと進めて後から微調整するタイプなのか、人間性がよく見えてくるんです。もちろん時間も人件費もかかるので、この手法は現状坪家賃2万以下の物件でしか成り立たないモデルですが、基本はなんでも自分たちでやる、DIO(Do it ourselves)によるセルフビルド型飲食として、今後も続けていきたいと思っています。いつかは表参道や銀座にも自前で店を作ってやろうと思ってますよ」と笑みを交えながらも真剣な眼差しで語る。今年3月には西麻布のミュージックバー「Aubade(オーバード)」の経営を統合。次は同店の内部の改装に着手する予定だ。シンプルながら、スタッフの成長と、自社・お客への負担軽減を両立できる新しい飲食店経営スタイルとして、同店の今後に期待したい。

店舗データ

店名 乾杯食堂 くあるた
住所 東京都品川区大崎2-7-14 舘野マンション1F

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アクセス JR大崎駅から徒歩7分
電話 03-6420-0724
営業時間 17:00〜23:00
定休日
坪数客数 17坪・30席
客単価 3500円
運営会社 有限会社フュゼ
関連リンク 乾杯食堂くあるた(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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